ダノンシャークは脱皮したけど脱皮してない!?
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
好スタートを決めた
ガルボ・
石橋脩騎手は、内の
シャイニープリンス・
北村宏司騎手の出方を窺う。その外から
リアルインパクト・
戸崎騎手も接近する。ハナに行く気がなさそうな
シャイニープリンス、
リアルインパクトに対し、
「それなら」という感じで先頭に立ったのは
ガルボだった。
出走馬のうち、過去に逃げたことがあるのは
ブリッツェン、
サンレイレーザー、
レッドアリオンだったが、3頭とも自身のキャリアの中で
「逃げ」を選択したケースはごくわずか。どの馬が逃げるのか、考えても答えは出なかったが、正解は
ガルボで、キャリア34戦目で初めて逃げる形になった。
いずれにしても、そんな確たる逃げ馬不在のメンバー構成だったから、スローペースで流れることは大方の予想通りだったはず。1000m通過は
59秒7。
毎日王冠(
60秒8)や
府中牝馬S(
63秒8)よりは重賞らしいペースだったとはいえ、それでもマイル重賞としては遅い。
今秋の東京芝重賞はスローペースばっかりなので、そろそろ締まったレースが観たいところ。来週の
天皇賞・秋では出走を予定している
トウケイヘイローにより大きな期待が集まるのではないでしょうか(気のせい?)。
それはさておき、そんなスローペースでも好位で立ち回る器用さを見せたのが1番人気に支持された
ダノンシャーク。12kg減(436kg)という馬体重を見た時に
一抹の不安を感じたが、その影響を感じさせない、追われてからしっかりと伸びる、いつもの
ダノンシャークがそこにいた。
好位の外目につけていた
ダノンシャーク。直線に入ると外目からジワジワと進出し、残り300m付近で
内田騎手のムチが入ってスパートを開始。
内田騎手はその直後に外をチラッと見て外の各馬の脚色を確認し、
「あとは内の馬を競り落とせば」といった感じで粘り込みを図る
リアルインパクトに馬体を寄せて行く。
残り200mを切ったところで
リアルインパクトを交わして先頭に立ち、そのまま押し切って
京都金杯に続く
重賞2勝目となった。58kgを背負いながら②着に粘ったG1馬
リアルインパクトの復活の走り、健闘も光ったが、今年に入ってこれで
芝1600m重賞で[2.1.2.0]の
ダノンシャークの充実ぶりが勝ったレースだろう。
ダノンシャークはこれまで
関東圏(東京&中山)で④⑤②⑤③②着と突き抜けた実績がなかったが、関東遠征で勝ち切ったあたりにも
目下の充実ぶりが窺い知れるし、5歳を迎えて
ひと皮剥けたということかもしれない。これなら、昨年は⑥着だった
マイルCSでも好勝負が期待できそうだが、ちょっと
気になる材料もある。
ダノンシャークの芝1600~1800m成績を見ると、1000m通過が
59秒0以上だと[6.4.0.1]で、そこに重賞2勝(
京都金杯、
富士S)も含まれていて、連外は出遅れた
11年ニュージーランドT(⑦着)だけ。その時も0秒3差と小差だった。一方、1000m通過が
58秒9以内だと[0.3.3.3]と高確率で好走しているものの勝ち切れていない。
ちなみに
マイルCSを振り返ると、1000m通過が59秒0以上だったのは
シンコウラブリイが制した93年(
59秒2)が最後で、その時は不良馬場だった。その後は良~稍重で行われていて、
19年連続で58秒9以内となっている。
ダノンシャークのG1制覇には、いわゆる
「G1の厳しい流れ」でパフォーマンスを上げられるかどうかに懸かっているのではないだろうか。
ダノンシャークにとって、ペース的には今回の
富士Sは
ホームであり、
マイルCSは
アウェイになるだろうから、本当に
ひと皮剥けたと判断するのは、
アウェイのペース(1000m通過58秒9以内)の芝1600~1800mで勝利してからでも遅くはないと思っている。
1000m通過が57秒0で直線で
不利も受けた今春の
安田記念が0秒1差の③着だったので、
「もう脱皮してました」という可能性も無きにしも非ずですけど(笑)。