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見た目以上のハイペースを逃げ切り、視界が大きく開けた
文/編集部(T)、写真/森鷹史


このレースに出走した18頭を見ると、前走が芝1200mだった馬はわずか5頭。一方で人気を見ると、1番人気が前走でりんどう賞(京都芝1400m)を制したエイシンオルドス、2番人気に同レースで④着のエルノルテが推されていた。

このレースは暮れの阪神JFはもちろん、来春の桜花賞を見据える馬が集まる性格を持つ。それだけに、ポイントとなるのは“距離”。長めの距離で実績を残している馬が集まる傾向があり、また人気もそういった馬が集めることが多い。

過去10年のファンタジーSで1番人気に推された馬のうち、前走が芝1200mだった馬は11年③着のファインチョイス1頭のみ。それ以外はすべて前走が芝1400~1600mだった。ファインチョイスは前走で函館2歳Sを勝っていたので、今回のメンバーで芝1200mの重賞勝ち馬がいなかったことを考えると、今年の人気傾向は例年の傾向通りではあったといえるだろう。

ところが、今年レースを制したのは前走が小倉2歳S(②着)だったベルカント。②着に前走がデイリー杯2歳S(⑥着)だったモズハツコイを挟み、③着にも前走が小倉芝1200mで未勝利勝ちを収めたアドマイヤビジンが入り、エイシンオルドスは④着、エルノルテは⑨着に敗れた。

では、今回はスプリンター向きのレースだったのか。以下に示した今回のレースラップを見ると、そうとは言い切れないのでは、と思えてくる。

12.3-10.9-11.1-11.5-11.3-12.0-12.0

前半600m通過は34秒3。これは過去10年のファンタジーSで、前半600mが34秒1だった11年(ちなみに、この年も前走が芝1200mだったアイムユアーズが勝っている)に次いで速いタイムとなる。

それに対して上がりが35秒3だから、明らかに前掛かりのペースだった。後方待機だったモズハツコイアドマイヤビジンが②着、③着に差し込んできたのは、ある意味必然だったのだろう。

道中は馬群が一団になっていたこともあり、自分は「ペースが遅いのか?」とも思っていたが、実際はそうではなかった。そんな中で逃げ切ったベルカントは、見た目以上に強いレースだったといえるのではないだろうか。前述のアイムユアーズが4角10番手からの差し切りだったことを考えると、さらに評価を上げられそうだ。

とはいえ、武豊騎手がレース後に「レース前は大変で。もう少し落ち着いてくれるといいのですが」と苦笑混じりに語ったように、暮れ、そして来春のG1に向けて、気性面の成長距離の克服は必須。未経験の急坂など、クリアするべきポイントはまだまだ多い。

それでも、可能性はあるはず。それを感じさせるポイントは今回の2~4ハロン目で、10.9-11.1-11.5と、それなりに抑えが利いていることがわかる。むしろ百戦錬磨の武豊騎手のこと、マークを緩めるために弱気なコメントを残したとさえ思えてくるが(笑)。

今回は牝馬限定戦だったが、この日までに6レース開催された牡牝混合の2歳芝重賞で牝馬は5勝を挙げていて、牝馬路線はかなりのハイレベルとなっている

そんな中、新潟2歳Sを衝撃的な差し切りで制したハープスター、ドロドロ馬場の札幌2歳Sを制したレッドリヴェールはぶっつけで阪神JFに向かうといわれている。そこにデイリー杯2歳Sで距離を克服したホウライアキコアルテミスSを差し切ったマーブルカテドラル、そして今回逃げ切ったベルカントが加われば……、さまざまな臨戦過程を経てきた有力馬たちは、まさに多士済々。どんな展開になるのか、考えただけでワクワクしてくる。

逃げて勝った馬が次走で距離延長されると、馬券的には軽視される傾向がある。しかし今回の内容なら、ベルカントが次走で阪神JFを逃げ切ったとしても、決して驚くことではないのではないだろうか