少なくとも今の時代を代表する牝馬と表現していい
文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/森鷹史
この
「速攻インプレッション」は思ったことをビシッと書いてくれと言われているが、予想が的中したレースは非常に書きにくい。何を書いても自慢しているように聞こえてしまうからだ(自意識過剰かな?)。まあ、でも書いてしまおう。
メイショウマンボはズバリ
名牝である。
エリザベス女王杯は勝つべくして勝ったのだ。2番人気? 1番人気でも良かったのでは? あー、言えた。すっきりした。
オークスを勝った時点で
「この馬、まだまだ勝つな」という予感はした。残り250mで先頭に立ってからの引き離し方には迫力があった。
秋華賞もそうだ。ビシッと折り合い、ゴーサインを受けてのエンジンの噴き上がり方は半端じゃなかった。そして
女王杯。レースの運び方も、その勝ちっぷりも
完璧だった。
1000m通過が62秒7。重馬場を考慮しても、これは遅い。その流れの中、
メイショウマンボは7番手を追走した。位置取りが絶妙だった。前にいる6頭から多少間隔を取った7番手。これなら前の馬の動きが見やすいし、いつでも前や外に動ける。
向正面でこの位置にいた時点で
「いいぞ、幸四郎」と声を出してしまった。
武幸騎手も、どの位置が最適なのかがはっきりと分かっていたのだろう。馬への
絶対的信頼感から来る、心の余裕が感じられた。
勝負どころで外から上昇。手綱にはまだ手応えがあった。4コーナーでは外から。インから5、6頭分は外だっただろうか。ロスはあるが、ここからでも差せる、届くということ。そして
武幸騎手の計算は
正解だった。きっちりと差し切り、0秒2差完勝だ。
秋華賞、
エリザベス女王杯を連勝したのは07年
ダイワスカーレット以来だ。
スカーレットに並んだとまでは言わないが、
少なくとも今の時代を代表する牝馬と表現していい。
これだけの実績を残していながら、実は1番人気になったのは
新馬戦の1度きり。周囲に
「なぜ1番人気にならないの?」と聞いたら、血統が地味だからでしょうという答えが返ってきた。そうか、父スズカマンボ。
ただ、この父とて
天皇賞・春(05年)の勝ち馬であり、母系には
ダンスインザダークを筆頭としたダンシングキイ一族がいる。決して“地味”とひと言で片付けていい血統ではないはずだ。
惜しくも早世してしまったが、
オレハマッテルゼあたりも血統自体の潜在能力はありそうなのに、妙に地味に思われているケースがある。ブレイクの兆しを見せている
スクリーンヒーロー、
マツリダゴッホにも同じことが言えそうだ。こういうギャップの差を突き、不当に人気のない実力馬を買うことは、
馬券力向上につながるのかもしれない。
多少脱線した。
メイショウマンボは
牝馬ナンバーワンを決する一戦の覇者にふさわしい名牝であったと、あらためて記しておく。
②着
ラキシスもしっかり伸びた。良馬場でやりたかったというのが
陣営の正直な気持ちだったろう。手応え十分に、最後は追わないまま差し切った
鳴滝特別勝ちはダテではなかった。4頭出しの
角居厩舎の中では格落ちと思われたが、素晴らしい戦果。
こういった格上挑戦を、特に牝馬で積極的に仕掛けてくるのが
角居師で、その理由を聞いた時、
「強い相手と戦った経験は必ずその後に活きてくるから」と話していた。
初G1で今回の走りなら、来年は
角居厩舎を堂々と引っ張っていく存在となるだろう。ディープインパクト×母の父ストームキャット。
キズナ、
アユサンでおなじみの配合から、また1頭、
大物が出た。
③着
アロマティコも良馬場でやりたかったクチだろう。まだ
チャンスはあるはずだ。来年の
ヴィクトリアマイルあたりで悲願かなうか。1番人気
ヴィルシーナはまったく見せ場なく⑩着。パドックでは四肢の運びも力強く、毛ヅヤも素晴らしかった。あえて
敗因を探るとすれば、状態が良すぎたからこその負けか。馬もここが勝負どころと分かっていて、力が入ったのだろう。