ようやくそれらしい雰囲気に、さて今年は!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
スペイン語で
「美しい島」という意味の
「イスラボニータ」。この馬名を聞き、真っ先に思い出すのがマドンナの名曲
“La Isla Bonita”だというのは、おっさんの証拠だろうか。ずいぶん記憶があやふやになっているので調べてみると、この曲が収録されていたのは1986年発売の
“True Blue”というアルバムだった。
しかし、島絡みの
“Isla”は3代母
“Lido Isle”から、祖母
“Isla Mujeres”、そして母
イスラコジーンという繋がりでわかりやすいとして。そこに
“Bonita”がくっつくとなれば、やはりマドンナの曲も無関係ではなさそうだよなあと、血統表をもう少し眺めてみれば。
父の父サンデーサイレンスの生年が、
“True Blue”発売年と同じ1986年。
社台サラブレッドクラブのホームページを見ても、馬名の意味くらいしか載っていないのだが、名付け親の方もこのあたりを意識されていたのだろうか。
さて、その
イスラボニータが優勝した
東京スポーツ杯2歳Sである。
今年で重賞昇格後18回目を迎えたこのレース。1800mという距離でもあり、創設時はマイルの
朝日杯よりも、もう少し長い距離へ向けた一戦という印象だった。
ただ、当初の代表的な優勝馬は、後に
高松宮記念を勝つ
キングヘイローや
アドマイヤマックス、そして
安田記念勝ち馬の
アドマイヤコジーンなどで、長いところといえば
中山大障害の
ゴッドスピード。
なにかが違うという印象のまま、そのうち翌年以降のG1馬がしばらく出なくなっていた。
しかしここにきて、
ナカヤマフェスタ(
宝塚記念)、
ローズキングダム(
ジャパンC)、そしてついに
日本ダービー馬・
ディープブリランテ。ようやく
それらしい雰囲気になってきた(なお、敗れた馬には二冠馬・
サニーブライアンや
メイショウサムソンがいた)。
そして今年が
イスラボニータ。父フジキセキに、母の父ゴジーンという血統を見ると、さて、これより長い距離はどうなのかと。
ただ、なにせフットワークの大きな馬。
新潟2歳Sを勝った
ハープスターの回転の速さと、②着のこの馬を比較すると好対照でわかりやすいが、
ごちゃごちゃせわしい競馬よりは、
ゆったり走って長い直線で末脚を引き出す競馬が向きそうなのは確かだ。距離が持てば
皐月賞よりは
ダービー、持たなければ
朝日杯FSよりは
NHKマイルCが見えてくる。
そんな走法もあってのことなのか。デビュー勝ちは
新馬戦開始早々の6月2日・東京芝1600m戦。そこから新潟外回りの
新潟2歳S(②着)、東京の
いちょうS(①着)と使って今回である。
その過程で、デビュー当初の
ゲートの悪さを克服し、前回が道中4~5番手。そして今回、スタートではやや重心が後ろ気味だったとはいえ
3番手を確保。同時に追われて
フラつく面も徐々に薄れ、今回は追い比べからぐいっとひと伸び、
しっかりした末脚を繰り出してきた。
今後へ向けての課題は
折り合い、ということになるだろうか。前走、そして今回も、道中で少しばかり行きたがるところを我慢させる場面が見られた。これが
2000m、2400mになっても、同じように我慢し続けられるかがカギになりそうだ。
また、中山など小回りコースは走りを見る限り不向きに思えるが、ゲートさえ互角に出ればスピードには乗っていけるため、前々でうまくさばければこなす可能性はあるだろう。
続く②着には、先日の
道営記念で今シーズンの開催に幕を下ろしたホッカイドウ競馬・
田部和則厩舎所属の
プレイアンドリアル(今後は
川崎・河津裕昭厩舎へ転厩予定とのこと)。
前走の
盛岡・ジュニアGPは芝1600mで1分39秒3だったが、今回は事実上大幅に時計を詰めて、
東京芝1800m2歳レコード・1分45秒9の②着である。
同じ
田部和則厩舎で、馬主の
岡田繁幸氏繋がりといえば
コスモバルク(当時の馬主は
岡田美佐子氏)。その
コスモバルクが
レコード勝ちを飾った東京芝1800m・
百日草特別は1分47秒9。
この馬より
プレイアンドリアルは2秒前にいる、と単純には言えないものの、いきなりの高速決着でこれだけの走りを見せ、最後は勝ち馬を差し返そうかという根性まで見せたのだから、
コスモバルク同様に
将来へ向けて楽しみが広がったのは確かだ。
そして③着は出遅れた
クラリティシチー。前走・
いちょうSは伸びあぐねるような態勢から、ゴール前でもうひと伸びしたあたりは目を引いた。今回も③着とはいえ、1番人気の
サトノアラジンを突き放し、上がりはメンバー中最速の33秒3。末脚は確かな馬だけに、まずは
ゲート難克服が最優先課題になりそうだ。