距離を短縮された関西馬が活躍する理由とは?
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
今年で6回目を迎えた
カペラSは、過去5回の勝ち馬がすべて
距離短縮の臨戦だった。いずれも
関西馬で、
5番人気以内に推されていたので、今年も優勝候補は限られると思っていた。
今回の1番人気馬・
スイートジュエリーは、前走も1200m戦(
藤森S)だったので非該当。5番人気の
マルカバッケンも前走が
北海道スプリントC(門別ダート1200m)だったので、該当しなかった。
該当したのは2~4番人気の
シルクフォーチュン、
セイクリムズン、
スリーボストンだったが、この3頭は
6~7歳で、年齢面がやや気になった(過去5回で6歳以上の馬は[1.1.2.28])。
優勝した
ノーザンリバーは5歳の
栗東・浅見厩舎の管理馬で、
距離短縮の臨戦だった。この馬は、「メインレースの考え方」で記した通り、他にも
カペラSの好走データを満たしていて、軸馬に相応しいと考えていた。
ところが、どういうことでしょう。前日売り時点から
ノーザンリバーの人気はあまり上がらず、最終的にはなんと
6番人気。アグネスタキオン産駒が中山ダート1200mの準OP以上で勝ち切れないデータ([1.3.4.35])を示したから、単勝が売れなかったんでしょうか!? いや、そんなことはないですよね。「メインレースの考え方」で記したデータがあんまり信用されてないってことですね。寂しいなー。
まあ、それでも、こうして快勝してくれたことで、
データの有効性が証明されましたね。今回活用したデータは来年も使えるし、
2014年もカペラSは簡単ですね(笑)。
それにしても、どうして
カペラSでは距離短縮馬がよく好走するのでしょう? 今年は勝利した
ノーザンリバーだけでなく、②着の
スノードラゴンも、③着の
シルクフォーチュンも、④着の
セイクリムズンも、⑤着の
スリーボストンも
距離を短縮された馬だった(距離短縮馬以外での最先着は⑦着の
ケビンドゥ)。
中山ダート1200mが
ハイペースになりやすいのは、ご存知の通り。スタートして下りになるため、先行馬が抑えるにも限界があるし、ましてや、
G3ともなれば下級条件を快速のスピードで勝ち上がってきた馬が集結しやすくなる。
急流になるのはいつものことだ。
それでいて、直線に
急坂が待ち構えているため、先行型は最後に苦しくなりやすい。踏ん張る力やスタミナを求められるため、
前走で1200mよりも長い距離を走ってきた馬が逆転しやすくなるわけだ。
関西馬が強いことは、ダート戦での層の厚さが関係しているのだと思うが、そればかりでなく、
栗東トレーニングセンターの坂路も影響しているのではないだろうか。
坂路は美浦トレーニングセンターにもあるが、負荷のかかる具合は
栗東の方が強い。中山の最後の急坂は、
栗東の坂路で鍛えられている馬に向く面があるのではないか。ちなみに、今回の
ノーザンリバーも坂路で追い切られてきている。
ノーザンリバーは最内枠で少し出負けをしたが、すぐに
先行馬の後ろのポジションを取れた。隣枠の
スリーボストンが先行型で、その隣の
トシキャンディもハナを奪いに行き、さらにその隣の
シルクフォーチュンが後方まで下げたために、周りに馬が存在せずに出負けしても楽に上がって行けたのだ。これは
ラッキーだったと思う。
内で砂を被っても問題ないのは、最内をすくった前走を見ても分かる通りで、今回も内をきれいに捌いてきた。着差は
クビ差だったが、
快勝と言える内容だった。
アグネスタキオン産駒は、今回の
ノーザンリバーの勝利でJRA重賞が
51勝目となったが、そのうち48勝は
芝だ。ダートでは、
09年プロキオンS・
ランザローテ、
11年ユニコーンS・
アイアムアクトレスに続いての3勝目である。
ランザローテは母の
トキオタヒーチがワイルドアゲインの産駒で、芝でもダートでも勝ち鞍のある馬だった。
アイアムアクトレスの母は
アイアムザウィナーで、同馬は母父がミスタープロスペクターで、ダートで3勝を挙げている。
これに対して
ノーザンリバーの母
ソニンクは競走歴がないが(不出走)、その父がマキャヴェリアンで
ミスプロの血を伝えているのだろう。
モンローブロンド、
ルミナスポイント、
ノットアローン、
ランフォルセ、
ノーザンリバーと活躍馬を送り続けている辺りは、さすが
全欧3歳牝馬王者(ソニックレディ)の娘といったところか。
ノーザンリバーは3歳時には
アーリントンC(阪神芝外1600m)を制していて、
芝でもマイル戦でも走れることは実証済み。
芝重賞で好走歴があって
ダート重賞を制した点では
JCダートの
ベルシャザールと同じだ。
ベルシャザールは、
父ミスプロ系(キングカメハメハ)×
母父サンデーサイレンス×
母母父ノーザンダンサー系という配合で、
ノーザンリバーは、
父サンデー系(アグネスタキオン)×
母父ミスプロ系(マキャヴェリアン)×
母母父ノーザンダンサー系という配合になる。似た配合のこの2頭は、もしかしたら来年の
フェブラリーSで激突することもあるのかもしれない。対決があれば、どちらがより切れる脚を使えるか、楽しみとなりそうだ。
昨年の勝ち馬で連覇を狙った
シルクフォーチュンは、今年は③着までだったが、走破時計は
1分10秒8で、昨年とまったく同じだった。上がり3F(35秒0)は昨年(35秒3)よりも速いほどで、今年も
力は出し切ったと言えるのではないか。
今回、
シルクフォーチュンの戦績を見て、改めて感心したことがある。毎度のように
メンバー中最速の上がりを計時しているばかりでなく、この馬、
地方競馬での出走歴が一度だけ(12年かしわ記念・⑥着)なんですよね。
もしかしたら、直線に
坂があった方が差し込みやすいのかもしれないが、これだけの馬なら
地方交流重賞に出てもバンバン活躍できて不思議はない。それでも
JRAの重賞に参戦し続け、芝のG1にも出走してメンバー中最速の上がり(33秒4)を計時したりして、頭の下がる走りを続けている。
今回も衰えはないことを証明する走りを見せたので、今後も無事にレースを迎えて、
怒涛の末脚を見せ続けてほしいものだ。