「復活戦」にふさわしい2年半ぶりの勝利となった
文/浅田知広、写真/森鷹史
読者のみなさんは今年、何日まで競馬を楽しまれる予定だろうか。大晦日まで目一杯か、それとも29日の
東京大賞典までか。地方競馬に手を出さない方であれば、今日の
阪神C、そして
ファイナルSあたりまで、という方もいるだろう。しかしこの
「サラブレmobile」をお読みになるくらいの競馬好きなら、
有馬記念までという方は少ないに違いない。
しかし、その
有馬記念の
オルフェーヴルが、力任せに今年の競馬に幕を下ろしたかのようなレースぶり。昨日で終わるつもりなど、これっぽっちもなかった
当方ですら、あの
強烈な走りを見て
「もう今年は終わりでいいか」などと、つい思ってしまったのだった。
もっとも、翌日に競馬があればそんな考えはどこへやら。翌日どころか当日の
高知ナイターに手を出していたが、ともあれ今年も、昨年に続き
有馬記念のあとに中央競馬がもう1日。敗者復活戦デーの
阪神Cである。
06年に創設され、今年で8回目を迎えた
阪神C。05年までこの時期には芝1200mの
CBC賞が行われていたが、芝1400mの
阪神Cに置き換わり、
マイルCS組が出走しやすくなったのが特徴だ。00年から05年まで
CBC賞6年間では、
前走マイルCS組は
10頭だけ。しかし、この
阪神Cには7年間で
40頭と、大幅に出走数を伸ばしているのだ。
ただ、その40頭の前走着順と今回の成績を見ると、
マイルCS⑤着以内馬は
阪神Cで
[1.0.1.4]、⑥~⑨着馬は
[1.1.0.5]、そして⑩着以下だった馬は
[1.4.2.20]。
敗者「復活」というには②~③着が多いが、
マイルCSで大敗を喫していようが、
巻き返すチャンスは大いにあるレースなっている。
しかし今年は、
マイルCS②着の
ダイワマッジョーレ、④着の
コパノリチャードと、上位馬が2頭出走。特に
ダイワマッジョーレは、
阪神C史上初となる
マイルCS連対馬の出走で、ここは単勝2.9倍で頭ひとつ抜けた1番人気に。そして2番人気には6.7倍で
コパノリチャードが続き、この2頭がファンの期待を集めつつスタートが切られた。
レースを先導したのは
マイルCS⑩着の
リアルインパクトで、ハナを切るのはキャリア初。2番手の外には
マイルCS⑭着(でも、
マイルCSの中では生涯最高着順)の
ガルボが続き、逃げも予想された
コパノリチャードは3番手の外で掛かり気味だった。
さらに、1番人気の
ダイワマッジョーレは少々の出遅れから押して好位には取りついたものの、前が詰まり、後退しては盛り返すという窮屈なレース運びで、なにやら
波乱の気配が漂う展開だった。
迎えた直線。こうした道中の
ロスが応えたのか、
ダイワマッジョーレも
コパノリチャードも伸びはひと息。そして、かわって差を詰めたのは、
マイルCS⑪着の
クラレント。前の
リアルインパクト、
ガルボも含め、直線の坂は
マイルCS組6頭のうち下位3頭による攻防で、もはや
「敗者復活戦」どころか
「大敗(たいはい)者復活戦」である。
そして勝利を手にしたのは。
「復活戦」にふさわしく、3頭の中ではもっとも勝利から遠ざかっていた
リアルインパクトだった。3歳の段階で古馬を撃破し、
G1・安田記念のタイトルを手中にした
リアルインパクト。その
安田記念は11年6月のことで、実に
2年半ぶりの勝利となった。
この
阪神Cでは、一昨年に1番人気に推されていたが、直線で窮屈になる場面もあって⑩着。以降は1600~1800mばかりに出走し、今回はそれ以来となる1400m戦だった。しかし、母
トキオリアリティーは
新馬戦以外の4連対を1200mで記録したスプリンターで、こうして走られてみると
「そういえば」という話ではある。
もちろん、自身がより短い距離で力を出せるとはかぎらないが、そうなっていく雰囲気も感じさせる今回の
復活劇だ。
マイル以上の実績馬が、実は後にスプリントG1を勝つんですよ、というのも、また過去にはあった話。気分良く流れに乗れさえすれば
高松宮記念で……という可能性もあるだろう。
そんな先々はともあれ、こうして馬は見事に復活を果たした今年の
阪神C。
みなさん、馬券のほうは
「敗者復活」となっただろうか(勝っていた人は増やせただろうか)。
当方、レース前から
マイルCS組の傾向には気づいており、
ガルボを本命にしたまでは良かったものの……。どうやら31日まで
フル参戦しか道は残されていないようである。