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大味なレースぶりに、今後の楽しみが感じられた
文/編集部(M)、写真/米山邦雄


重賞競走はレース前に勝ち時計を推測することにしていて、今回のフェアリーS1分36秒0にした。フェアリーSの勝ち時計は、昨年が1分34秒7で、一昨年が1分35秒5。3~4年前は1分33秒7~1分34秒8で、今年はこれらよりも遅いだろうと推測したわけだ。

近4年よりも時計がかかると考えたのは、まず中山の芝が時計がかかっている点。これは昨秋以降の傾向で、エアレーションなどによって馬場の固さがほぐれた影響だろう。そして、今回は重賞といっても1勝馬によるメンバー構成で、その点も考慮した。

果たして、結果は……1分36秒3だった。想定よりもさらに遅かった。前半3Fが36秒1と遅く、それでいて上がりも35秒9とかかって、このような時計になった。

先週のジュニアCは13頭立てでのスローペースで、1分37秒3という勝ち時計だった。それに比べれば速かったが、この時計では今後のクラシック戦線で重要視されることは少ないと思われる。

ただ、勝ち馬・オメガハートロックに関しては、注意を払っておくべきではないかと思っている。2連勝を飾って底が割れていないこと、そして、デビュー戦の東京芝1600mでは33秒台の上がりを使っていて、異なる馬場でともに好走してきたことは高評価に値すると感じている。

オメガハートロックは、父ネオユニヴァース×母父エルコンドルパサー×母母父トニービンという配合で、どちらかと言えば1800m以上の方が合いそうな印象を受ける。

姉のオメガハートランド(父アグネスタキオン)がフェアリーSで④着(1番人気)に敗れ、中山芝1800mのフラワーCを制したので、姉よりもマイル適性が劣りそうに感じた妹はさらに評価を下げてしまったのだが、その見立ては間違っていたようだ。

道中で後方に位置したオメガハートロックは、4コーナーで外に膨れる感じになった。そこから直線に向くとニシノアカツキと一緒に伸び、その争いを制しながら、他馬をまとめて交わし去った。大味なレースぶりだったが、裏を返せばそれだけ適性が合っていた舞台とは思えず、広いコースやより長い距離に行けば、さらにパフォーマンスを上げるでのはないかと思う。

オメガハートロックの母オメガアイランドは、アイリッシュダンスの娘、つまりハーツクライの妹にあたる。ハーツクライ有馬記念を制したが、その産駒を見れば広いコースや中距離以上に適性があるのは一目瞭然で、オメガハートロックも同じ牝系であることは覚えておきたい。

3歳牝馬のG1は、阪神芝外1600m東京芝2400m京都芝2000mで行われ、いずれも今回の中山芝1600mよりも広いコースや長い距離のレースだ。今後に楽しみが広がる可能性も十分にあるだろう。

ちなみに、今回の勝ち時計(1分36秒3)は、近4年のフェアリーSよりも遅いことを前述したが、5年前(09年)に比べると0秒2だけ速い。09年は1分36秒5という勝ち時計だった。

09年のフェアリーSで④着以内に入った馬は、その後の中央競馬で勝ち鞍を挙げられなかった。ただ、優勝したのはジェルミナルで、同馬はその後に桜花賞③着オークス③着という好成績を残した。

たとえ遅い勝ち時計であっても、勝ち馬だけは別格と個人的に思っている。競馬には「②着に偶然はあっても、①着は必然」という言葉もあるもので、オメガハートロックも勝ち切ったことは評価したい。

ジェルミナル阪神JFで2番人気に推されながら⑥着に敗れ、そこから中3週でこのレースに出走して勝利し、賞金を加算して春のクラシックへ向かっていった。ここで賞金を加算できたことは、今後のローテーションを組む意味でも大きいはずだ。暖かくなってから、オメガハートロックがどれだけの上積みを得て登場してくるか、楽しみにして待つことにしよう。