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“メジロのDNA”が、春の淀でも花開くか
文/編集部(T)、写真/川井博


今回のレースの直線、勝ったサトノノブレスが②着アドマイヤフライトの追撃を封じてゴールした瞬間、「なるほど、DNAの勝利かもしれないなあ……」と感じた。

ピンと来なかった方は、サトノノブレスのプロフィールを見直していただきたい。自分のような30代以降の競馬ファンだと、「おっ」と思う方は多いのではないだろうか。

サトノノブレスの生産牧場は、今はその歴史を閉じたメジロ牧場。牝馬三冠馬メジロラモーヌをはじめ、メジロブライトメジロドーベルメジロパーマーなど、“メジロ”の冠を得た数々の名馬を産みだした名門牧場だ。

サトノノブレス父ディープインパクト母父トニービンで、半兄にヒカルオオゾラ(生産は社台C白老F、関屋記念②着など)をもち、メジロ牧場生産となってからの兄姉には2勝を挙げたメジロスプレンダーメジロガストンなどがいる。

ルーツが“社台”にあるのは確かだが、サトノノブレスの生産は紛れもなくメジロ牧場。時代の流れに逆らわずに現代の主力血統を取り入れた結果、最後の世代で大物を送り出す結果となった、と考えることもできるだろう。

ところで、“メジロ”の馬は、日経新春杯と非常に縁深い。

日経新春杯が京都芝2400mに固定されたのは95年以降で、それ以前は京都芝2200m、阪神芝2500m、84年は京都ダ2600mで開催されるなど、実にさまざまな条件で施行されてきている。

そんな中、“メジロ”の冠名馬は80年のメジロトランザム(阪神芝2400mで開催)、97年メジロランバダ、99年のメジロブライトと、勝ち馬を3頭送り出している。

さらに、②着、③着馬となると、グレード制導入後だけでも86年③着のメジロヘンリー、87年③着のメジロデュレン、94年②着のメジロパーマー、99年③着のメジロシャープ、00年③着のメジロサンドラとさらに多くの名前が並ぶ。

一方、京都芝2400mの重賞というのも、“メジロ”が得意としている条件だった。メジロラモーヌが牝馬三冠を達成したのは86年エリザベス女王杯メジロマックイーンは91、93年の京都大賞典を制し、特に結果的に引退レースとなった93年は、2分22秒7のレコードタイムを記録している。

今回のサトノノブレスは向正面に入るところで先頭に立ち、そのまま先頭を譲らずゴールした。個人的に、メジロマックイーンが一番強いレースをしたのは92年天皇賞・春だと思っているが、この時のメジロマックイーンは3角手前から僚馬メジロパーマーを交わして先頭に立って押し切っている。似たレースぶり……というのは、さすがにひいき目が過ぎるだろうか(笑)。

それはともかく、今回で初重賞制覇となったサトノノブレスにとって、次の目標となるのはやはり天皇賞・春だろうか。ご存じの通り、このレースも“メジロ”と縁深く、メジロムサシ(71年)、メジロマックイーン(91、92年)、メジロブライト(98年)が制している。

メジロマックイーンに続く天皇賞4代制覇の夢は破れ、メジロ牧場は惜しまれながらその名前を歴史に残すことになったが、その最終世代となるサトノノブレス天皇賞・春を制したとしたら……。ドラマでは片付けられない、“メジロのDNA”の偉大さを改めて感じられるのではないだろうか。サトノノブレス菊花賞②着馬。その資格は十分にあるはずだ。