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今回はG2ウイナーとして貫禄勝ち、次走が試金石か
文/石田敏徳、写真/森鷹史


4歳馬VS有馬記念組という図式が描かれた今年のAJCC。単勝3.6倍という頭ひとつ抜けたオッズで、1番人気に支持されたのは前者の代表格レッドレイヴンだった。

AJCCは基本的に格がものをいうレースで、特に有馬記念“G1の壁”に跳ね返された馬が巻き返すケースが非常に多い。

一方の4歳馬は過去10年間、15頭が出走してわずか1勝(07年マツリダゴッホ)のみ。そんなレースの傾向からも、前走で準オープン特別を勝ち上がってきたばかりの4歳馬レッドレイヴンが1番人気に支持されたのは正直、意外だったが、よくよく考えてみれば分からないでもなかった。

昨春のクラシックでは青葉賞⑪着、ダービー⑫着と精彩を欠いたものの、もともとは2歳時から僚馬コディーノ「将来性は互角」と評価されていた存在の同馬。

本調子になかったと思しきダービーの後、夏休みを挟んで戦列に復帰してからは、初戦の甲斐路Sディサイファ(その後、福島記念④着、中山金杯③着)の②着、続く美浦Sではフェスティヴタロー(次走の初富士Sを快勝)を子供扱いにして完勝と、着実に軌道に乗ってきていた。

一方では3頭(ヴェルデグリーンダノンバラードトゥザグローリー)が出走してきた有馬記念組への“半信半疑の思い”も、レッドレイヴンの支持を押し上げた一因だっただろう。

先の3頭のうち、有馬記念最先着馬は⑧着のトゥザグローリーだが、オルフェーヴルとのタイム差は2秒4。⑩着のヴェルデグリーンは2秒6、ブービー負けに終わったダノンバラードに至っては、4秒7ものタイム差を開かれている。

いくらオルフェーヴルが強すぎたといっても、あれだけの大敗を喫した有馬記念組“ガラリ一変”より、まだまだ伸びしろを秘めていそうなレッドレイヴン“未知の魅力”に期待したファンが多かったのも無理のない話。

だが、当日の馬体重がプラス20kgという重め残り(パドックでは数字ほど太くは見えなかったけれど、やはり立派過ぎる体つきと映った)も響いたのか、レッドレイヴンは最後のひと押しを欠いて④着に沈み、レースの軍配は⑩着に敗れた有馬記念から鮮やかな変わり身をみせたヴェルデグリーンにあがった。

大方の予想通り、先導役を務めたのはサトノシュレン。しかしチョイワルグランパが積極的に絡んできたため道中のペースをあまり落とせず、残り1600m地点から12秒台前半のラップが刻まれるタフな流れでレースは進んだ。

「ゲートをちゃんと出てくれた」(田辺騎手)というヴェルデグリーンは、レッドレイヴンをすぐ前に見る形で縦長の隊列の中団外めを追走。抑えきれない手応えで進むサクラアルディートを追って、3コーナーから進出を開始したレッドレイヴンの動きに呼応してジワジワとポジションを上げると、先行集団を射程に収めて直線に向く。

先週は逃げ残りが目立った中山の芝だが、開催末の今週は明らかに外差し傾向。まして緩みのないペースで流れたレースは、外へ持ち出されて差し脚を伸ばしたサクラアルディートレッドレイヴンヴェルデグリーンの叩き合いに。

ゴール前では力尽きて失速したレッドレイヴンにかわってフェイムゲームも強襲してきたが、大外からパワフルな末脚を繰り出してサクラアルディートの抵抗をねじ伏せたヴェルデグリーンが、「クビ+クビ」の着差で決着した接戦をものにした。

昨秋のオールカマーを豪快に差し切って重賞ウイナーの仲間入りを果たした後は、天皇賞が⑧着、有馬記念は⑩着とG1の壁に跳ね返され続けてきたヴェルデグリーンだが、天皇賞は大外枠が響いて「何もできずに終わった」(田辺騎手)もの、そして有馬記念オルフェーヴルのスパートに併せて3コーナーから一緒に動くという強気のレース運びが、2秒6差の大敗を招いた面もあった。正真正銘の怪物に真っ向勝負を挑んだ結果、木っ端微塵に玉砕したというわけである。

しかしこの日は「自分から勝ちに行く競馬」をして堂々の快勝。有馬記念とは反対に、格下といえる面々に対してG2ウイナーとしての貫禄を見せ付けたともいえる。ただ、下した相手関係を物差しに考えると“G1の壁”はまだまだ厚そうに映ることもまた確かで、もうひとつ上のステージで活躍できるかについては次走が試金石となりそうだ。