年齢よりも重賞実績よりも、切れ味が求められた
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
出走馬16頭中10頭が
重賞ウイナーで、今年の
根岸Sはメンバーが揃った印象があった。ただ、16頭中11頭は
7歳以上で、ベテランが多いのも事実だった。
根岸Sは、連対圏を
6歳以下の馬が占めるケースが多く、冬開催となった01年以降では、7歳以上の連対馬は2頭だけだった(03年①着
サウスヴィグラス、06年①着
リミットレスビッド)。そのような面が影響したのか、今回の1番人気には
5歳で
重賞勝ち実績もある
ブライトラインが推された。これは当然の流れだと思った。
ブライトラインは昨春からダートに転向して[3.0.2.1]という成績。唯一の馬券圏外が前走の
JCダートで、馬券圏外とは言っても④着だった。
同レース③着の
ホッコータルマエはその後に
東京大賞典→
川崎記念と連勝していたし、②着の
ワンダーアキュートは
東京大賞典で②着。
ブライトラインの後塵を拝した2頭(⑤着
ニホンピロアワーズ、⑥着
グランドシチー)が先週の
東海Sでワンツーフィニッシュを飾ったほどで、その比較から考えても、
ブライトラインがここで崩れることは想像しづらかった。
ただ、
気になることがないわけでもなかった。
ブライトラインは12~2月が[0.0.0.7]で冬実績がなかった。そして、
根岸Sでは
切れる脚を使った馬が台頭しやすく、脚質的には少々疑問符が付いた。結果的には、この不安が的中することになってしまった……。
差し馬が台頭するとしても、能力的に
ブライトラインが粘り込むことは十分可能だと思っていたが、スタートでやや
出負けをしたことで歯車が微妙に狂ったのかもしれない。向こう正面で早めに3番手に取り付き、事なきを得たと思われたが、最後の最後に他馬に交わされてしまった。
レースの上がり3Fは
36秒1で、
ブライトライン自身も36秒1の上がりを使っている。ダートでの過去3勝は上がり
36秒6~37秒1で挙げていたから、今回も決して止まったわけではない。上がり勝負では分が悪かったということか……。
優勝した
ゴールスキーは上がり
35秒3という末脚で混戦を断った。2着の
ノーザンリバーの上がりは
35秒8で、3着の
シルクフォーチュンは
34秒9。①~④着はいずれも芝重賞で掲示板に載ったことがある
父サンデー系の馬なので、やはり
切れ味がポイントだったのだろう。
数多くの重賞ウイナーがいる中で、7歳で重賞未勝利の
ゴールスキーは今回が
休み明け(2ヶ月半ぶり)でもあり、勝ち切るのは難しいのではないかと思っていた。ところが、間隔が空いても
末脚の切れ味は変わらず、直線でグイグイ伸びて突き抜けた。芝での5勝中4勝はマイル戦で、ダートは1400mだと2戦2勝。ダートではこれくらいの距離が合うのだろう。
今年から
根岸Sの優勝馬には
フェブラリーSへの優先出走権が与えられるので、
ゴールスキーの次走も
フェブラリーSとなるのだろう。休み明けだった今回を一度走り、
中2週となる次走はさらに状態がアップするのかもしれない。
切れ味勝負となりやすい
根岸Sは、底力も問われる
フェブラリーSとは直結しないという話もよく耳にするが、単純にそうでもない気がしているから、そのことも記しておこう。
東京ダート1600mで行われた
フェブラリーS(G1)では、16回すべてで
距離短縮馬が馬券に絡んでいて、確かに、前走で1600mを超える距離を使われていた馬の方が信頼感は高い。
ただ、前走で
根岸Sを走っていた馬も、出走馬がいた12回中11回で掲示板に載っていて、
根岸Sを勝って参戦していた馬に限れば[2.1.2.6](複勝率45.5%)と悪くない。
根岸Sと
フェブラリーSが直結しない、という話は迷信だろう。
フェブラリーSが底力を問われやすいというのは事実だろうが、
メンバー中上位の上がりを使った馬が差し込むケースも多く、東京競馬場で行われた16回(G1)では、
メンバー中3位以内の上がりを使った馬が13勝を挙げている。末脚が切れるタイプが台頭することも多いのが
フェブラリーSなのだ。
ゴールスキーにとっては、
ダート1600mに替わっても
同じ切れ味を見せられるかがポイントだろう。
ゴールスキーの半兄
ゴールドアリュールは、中山競馬場で行われた
フェブラリーS(03年)の勝ち馬で、母ニキーヤは
ヌレイエフ×
ニジンスキー系という配合だからダート1600mが長いとは思えない。距離が延びても折り合いを欠かなければ、最後に伸びてこられるのではないだろうか。
なお、③着に食い込んだ
シルクフォーチュンは、前走の
カペラSでのこのコーナーでも触れたが、今回もその時計について記しておきたい。
前走の
カペラSは③着だったが、その走破時計は
1分10秒8で、これは優勝した前年(12年)と同じだった。今回の
根岸Sは一昨年(12年)に優勝したレースだが、その時の走破時計は
1分23秒5で、今回も同じ
1分23秒5。今年は斤量が56kgだった面はあるが(12年は57kgだった)、力が衰えていないことを証明した。
フェブラリーSは、一昨年が
1分35秒7で②着、昨年が
1分35秒5で⑤着。優勝タイムがどうなるかで、
シルクフォーチュンの着順も変わってきそうだ。