強烈な末脚に、父ディープインパクトの3歳春を思い出した
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
かたや、単勝1.5倍の1番人気に推された
バンドワゴン。デビュー2戦が圧勝続きで、デビュー戦では後に
若駒Sを制した
トゥザワールドに6馬身差、2戦目は出世レースとして知られる
エリカ賞で、こちらも5馬身差をつけていた。
こなた、単勝2.5倍で続く
トーセンスターダム。こちらも2戦2勝で、前走の
京都2歳Sは出遅れて最後方からの競馬になったが、前残りの流れを上がり33秒6という強烈な末脚で差し切った。
と、大相撲の横綱同士の決戦のような紹介をしてしまったが(笑)、実際にこのレースはともに
2戦2勝という2頭の強豪が激突し、
「どちらが勝つのか?」が最大、もしかしたら唯一のテーマとなっていたと思う。
そしてレース前、皆さんの多くがそうだったと思うが、自分も最初に考えたのは
“どちらを頭で買うべきか”ということ。
そう考えたときに、
これまでの着差と前に行ける脚質の有利さで、バンドワゴンの方が有利なのではないか、ということがまず思い浮かんだ。オッズを見ても分かるように、やはりそう考えた人の方が多かったのだろう。
ただ、ひとつ気にかかったことがあった。それは、
トーセンスターダムがディープインパクト産駒だということ。
思い返せばおよそ9年前の05年、7頭立ての
若駒Sで、
ディープインパクトは直線に入ったところで先に抜け出した
ケイアイヘネシーに5馬身ほどの差をつけられていたが、そこから並ぶ間もなく交わして逆に5馬身差をつけて圧勝している。
レース上がりが36秒1に対して
ディープインパクト自身の上がりが33秒6という鋭すぎるほどの末脚は、後の大活躍を予感させるに十分だった。
とはいえ、正直なところ、自分はこの
若駒Sの勝ちっぷりを見せられても
ディープインパクトの強さをまだ信じ切れず、ようやく認めたのが
皐月賞後だったという苦い思い出があるのだが(笑)。逆に言うと、それだけ強烈な印象が残っている。
今回については、前を行く
バンドワゴンも前述のように相当強いが、
トーセンスターダムは
ディープインパクトの鞍上も務めた
武豊騎手も
「この馬でダービーへ」と期待する逸材。それだけの馬なら、
前がいくら強くても交わせてしまうのではないか……とも思ったのだ。
そしてレースは、戦前の予想通り
2頭の一騎打ちに。直線を向いた時点で逃げた
バンドワゴンと
トーセンスターダムとの差は5馬身ほどあったが、外を通って
トーセンスターダムが一気に差を詰め、
バンドワゴンもよく粘ったがゴール寸前で
トーセンスターダムが差し切った。
稍重の馬場だったこともあって上がりが少しかかったが、それでもレース上がりが35秒5に対し、
トーセンスターダムの上がりは34秒7を記録していた。
ディープインパクトの
若駒Sほどの強烈さはなかったが、
武豊騎手がレース後に語ったように、緩い馬場で切れ味が削がれた面はありそうで、良馬場ならさらに末脚が切れそう。これまでの3戦が9頭立て以内なので、多頭数でどうかという懸念は残るが、脚質的には頭数増でペースが上がれば、さらに末脚を活かせるようになるかもしれない。
まだまだ荒削りな面はあるが、完成すれば
ディープインパクトに近づく存在になれる可能性を示したといえそうだ。
トーセンスターダムの血統を見ると、母の弟は
天皇賞・秋勝ち馬
トーセンジョーダンや
京都新聞杯勝ち、
ダービー③着がある
トーセンホマレボシ。近親にはカンパニーなどもいて、クラシック戦線だけでなくその後も長く楽しめそうな血統背景を持つ。
自分も
ディープインパクトの間違いを繰り返さないように、
「トーセンスターダムは強い」と呪文のように繰り返しながら(笑)、今年のクラシック戦線、そしてその後を楽しみにしながら見ていくつもりでいる。