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人気馬らしい強い競馬で重賞2勝目、長距離路線での活躍が楽しみ
文/浅田知広、写真/川井博


最近は以前にも増して手薄な印象が否めない長距離路線。しかもハンデ戦となればどうも難しいところがあり、良くも悪くも「なにか」「なにか」をやらかしそうな先入観がある。

ただその一方で、このレースの過去10年の傾向を見ると、単勝7倍以下の馬が優勝馬10頭中8頭を占め、[8.4.1.17](連対率40.0%、複勝率43.3%)と、ハンデ戦にしては人気馬が安定している印象も受けた。

そんなデータを参考にしつつ今年のメンバーを見ると、11頭と少なめの頭数に収まったこともあり、フェイムゲーム(2.9倍)、アドマイヤバラード(3.8倍)、そしてタニノエポレット(3.9倍)と、上位人気3頭が単勝4倍以下。そして4番人気のラブラドライトまで6.2倍と、ここまでが「単勝7倍以下の馬」の圏内、勝利を手にする可能性の高い馬たちだった。

と、単勝オッズだけなら上位拮抗。大きく割れているというよりは、一部の馬に人気が集まった形にはなっていた。しかし、そこはちょっと手薄な長距離戦。個々の馬を見ると、その印象はまったく異なるものになってくる。

1番人気(2.9倍)のフェイムゲームは前走がG2・アメリカJCCで③着だったとはいえ、その2200mが過去最長距離。2番人気(3.8倍)のアドマイヤバラードは、前走で1000万を勝ったばかりの格上挑戦。そして3番人気(3.9倍)のタニノエポレットは、前走で格上挑戦のOP特別・万葉Sを勝ち、今度は重賞になったのにハンデは2キロ増。さらに4番人気(6.2倍)のラブラドライトは1000万の身でハンデ50キロである。

過去の傾向やオッズを見ればなんとなく人気馬が良さそうでも、もしかしたらケイアイドウソジン(12年①着・190.0倍の単勝万馬券)クラスの事件も起きうるのではないか。そんな気配も感じられるメンバー構成で行われた、今年のダイヤモンドSである。

しかし、実際のレースを見れば、そんな危惧はどこへやら。1番人気に推されたフェイムゲームが、人気馬らしい強い競馬で2つ目の重賞タイトルを手中にしたのだった。

もっとも、スタートは少し暴れたところでゲートが開いてしまい、レース序盤は馬群から1頭離れた最後方追走。このあたりは「やっぱり信用ならんのかな」という走りだった。

しかし、2周目の向正面でじんわりと後方馬群に取りつくと、そのままの勢いで一気に中団、そして4コーナー手前では好位まで進出。ここから大外を回って先行勢を一気に飲み込むと、東京の長い直線もなんのその、そのまま後続を寄せ付けずに堂々と押し切って見せたのだ。

続く②着には、09年の菊花賞⑦着以来となる長距離戦だったセイクリッドバレーが入って少々驚かされたものの、この馬とて5番人気の単勝11.0倍。そして③には3番人気のタニノエポレットと、なんのことはない、終わってみれば比較的平穏な決着である。

ともあれ、初の長距離戦を克服し、昨年1月の京成杯以来となる重賞2勝目を挙げたフェイムゲーム。血統的には「中距離G2番長」だったバランスオブゲームの半弟で、果たして今後のG1でどうなのか。いや、そもそも今回の長距離戦すらどうなのか、という印象もなくはなかった。

しかしこの馬、牝系を見ればステイゴールドの近親、そして種牡馬としてはステイヤーだったサッカーボーイの近親でもある。そう考えると、今回の出遅れからのひとまくりという派手なレースぶりは、確かにステイゴールドサッカーボーイっぽいところがある。

また、父ハーツクライはさまざまなタイプを出す種牡馬とはいえ、一昨年のこのレースで②着だったギュスターヴクライ(次走・阪神大賞典オルフェーヴルを下して優勝)、昨年①着のアドマイヤラクティ、そしてG1好走馬では菊花賞②着のウインバリアシオンなど、長距離実績を持つ産駒も少なくない。

そんな血を受け継ぎ、ハンデ戦とはいえ長距離重賞のタイトルを手中にしたフェイムゲーム。これからさらなる強敵との戦いも待っているが、古馬になってさらに力をつけてきそうな血統背景でもあるだけに、この路線で今後どんな活躍を見せてくれるのか楽しみになってきた。