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破天荒なレースぶりが、ラストインパクトの強さを際立たせた
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


スタートで1番人気に推されたラストインパクトが出負けした瞬間、1回目の「おいおい大丈夫か?」の声が出た。

ラストインパクトは前走の準OPが芝2400mで強い勝ち方をしており、今回は過去に実績のない芝1800mだった。それだけに、スムーズなレースができなければ案外もろいかも……という懸念があったからこその独り言だった。

そして2度目の「おいおい大丈夫か?」は、向正面でラストインパクトが一気にマクって先頭に立った瞬間。当然聞こえないのだが、場内のどよめきも聞こえてくるようだった。

ところが川田騎手の手綱を見ると、そこまで引っかかったようでもなく、むしろ抜群の手応えにさえ見える。ラストインパクトはその手応えそのままに、直線に入っても脚色を衰えさせず、後続を2馬身半突き放して圧勝を飾った。「大丈夫だったろ?」と馬が言っているようにも聞こえた(笑)。

レース後のインタビューで、川田騎手「ペースが遅かった」と語ったが、実際はどうだったのか。レースラップを見ると、以下の通りとなる。

12.5-11.2-12.2-12.2-11.3-11.3-11.4-11.4-11.8

前半1000mは59秒4。これは03年以降に小倉で開催された小倉大賞典(03~09、11~13年)の中で真ん中あたり、6番目のタイムだった。遅くもなく速くもなく、といった感じだ。

小倉は2コーナーを回り切ったあたりで残り1100mだから、ラストインパクト最後の5ハロンで11秒台のラップを連発したことになる。レースラップがさほど緩まず、先頭に立った馬がこれだけのラップで走られては、後続は為す術はなかった。逆に言うと、ラストインパクトの強さが際立った結果だったといえるのではないだろうか。

レース後に川田騎手が語ったところによると、予定の行動ではなかったようだが、この日の川田騎手は、以下のように芝での中長距離のレースでは徹底した位置取りをしていた。

5R⑤着(芝2000m)2-2-2-1
7R①着(芝2600m)6-5-2-1
11R①着(芝1800m)11-11-1-1

すべて4角先頭というだけでなく、7レースとこのレースはともに外を通って3コーナー手前で進出している。本当に予定の行動ではなかったのだろうか(笑)。

それ以外の芝のレースを見ても、4角2番手以内にいた馬が8レース中7レースで馬券に絡んでいる。今週からBコースに替わった影響もあるとは思うが、開催3週目ともなると「そろそろ外差しも決まり始めるか」と思っていたもの(実際、自分もこの日はけっこう差し馬を買っていました)。その中で先行馬でも十分戦えていた結果を見る限り、少し認識を改める必要があるかもしれない。

勝ち馬に話を戻すと、ラストインパクトは明け4歳で、同世代のダービー馬にはキズナがいる。この2頭は血統的にも共通点があって、ディープインパクト産駒というだけでなく、ともにいわゆる“パシフィカス牝系”の出身となる。

ラストインパクトは、昨年春の青葉賞は③着に敗れ、惜しくもダービーへの出走は叶わず、キズナとの対決は実現しなかった。それが今回重賞を制覇したことで、堂々とG1戦線に駒を進めることができるだろう。

キズナだけでなく、神戸新聞杯菊花賞で敗れたエピファネイアとの再戦に向けて、楽しみな馬が小倉から名乗りを上げる結果となった。