マイル路線一直線、2ヵ月後にはどんな姿を見せてくれるか
文/浅田知広、写真/森鷹史
昨秋前半あたりまでは牝馬ばかりに勝たれ、いったいどうなってしまうんだ、という状態だった2歳(現3歳)の重賞戦線。しかし、牡牝の路線が分かれれば時間の経過とともに解決されるもので、
京王杯2歳Sを
カラダレジェンドが勝って
2戦2勝としたあたりから、
「凡走経験のない実績馬」が続々と誕生してきた。
その筆頭格が
朝日杯FSを制して
3戦全勝の2歳王者・
アジアエクスプレス。そして年が明ければ、
若駒S①着の
トゥザワールド、
シンザン記念①着の
ミッキーアイル、
きさらぎ賞①&②着の
トーセンスターダムに
バンドワゴン、さらに
共同通信杯①着の
イスラボニータ。
ざっと
「2勝以上+③着以下なし」のオープン好走馬だけを拾っても、これくらいの名前は挙がってくるようになった。
ここから今度は、
皐月賞路線と
NHKマイルC路線に分かれていくことになるが、
皐月賞を目指すなら、ぼちぼち中距離のレースには使いたいところ。そんな時期にマイル戦の
アーリントンCに駒を進めてくるのは、中距離でいったん距離の限界を見せたり、そもそも見向きもしない馬になる。今年、単勝1.4倍の断然1番人気に推された
ミッキーアイルは、マイル路線一直線だ。
前走の
シンザン記念優勝直後は、
ニュージーランドTへ向かうとの話もあったこの馬。あちらはG2、
アーリントンCはG3なので、
賞金を考えればその手もあっただろう。
しかし、東京で行われる
NHKマイルCを視野に入れると、小回り中山で走るよりは広い阪神外回り。また、左回りを経験させるなら
ファルコンSという手もあるが、差し馬ならまだしも、スピードに富んだ馬を1ハロン短い1400mで使い、本番でマイルに戻すのは避けたいところで、この
アーリントンCというのも納得の選択である。
さて、この
ミッキーアイルがここでどんな走りを見せるのか。改めてこれまでの戦績を振り返ると、今回と同じ阪神芝外1600mの
新馬戦は①着
アトムから半馬身差の②着。続く
レコード勝ちの
未勝利戦は京都内回りの1600m、そして500万勝ちは小回り中山。さらに、前走・
シンザン記念は外回りでも、直線に坂のない京都で半馬身差の競馬だった。
しかし今度は「外+坂」、唯一の
敗戦を喫した阪神芝外1600mである。ついでに他馬より重い57キロでもあり、
穴党なら
「いやいや、実は少しくらい不安もあるんじゃないの?」と。相手関係や回りの左右はさておき、
NHKマイルCへ向けて前進するためには、しっかりとクリアしておきたいステップだった。
そして今回は、控える競馬を試すのかという注目点もあった。2番手で折り合いを欠いた
新馬戦だけ②着で、以降の3戦は逃げ切り勝ち。もし本番に、短距離路線を進んだスピード馬が出てくればハナを譲る可能性もあるだけに、馬券を買う側からしても「2番手の
ミッキーアイル」は見てみたいところだった。
しかしゲートが開けば、2番手なんてとんでもない
好スタート、
好ダッシュ。大外枠ながら50mも行かないうちにあっさり先手を奪うと、前半3ハロン35秒2と前走(35秒5)よりも速いペースで差を開いていったのだ。
こうなると、もう
ミッキーアイルと後続とは完全に別の競馬。残り400mから11秒1のラップを刻んで勝負に決着をつけると、余裕を持って②着に3馬身半差の
重賞連覇となった。
ただ、今回は
完勝の中にも気になるところもいくつか見られたレースではあった。もう少し溜めたかったように見受けられた300m通過地点あたりから、後続との差を開いていってしまったこと。直線前半で物見をして少しふらついたこと。そしてラスト1ハロンは、デビュー以来もっとも遅い
12秒5を要していたことだ。
思い返せば昨年の
阪神大賞典、
ゴールドシップがラスト1ハロン
13秒0要したのを「気を抜いただけ」と片付けてしまい、後々の馬券で
失敗した方もいるに違いない。
とはいえ、
本番・NHKマイルC(5月11日)はまだ2ヵ月先。そしてその2ヵ月で、
心身とも大いに成長できる3歳馬でもある。この間に
課題を克服して
NHKマイルCを制すれば、今回は
「危険信号」ではなく、
「結果を残しつつ課題も見えた良い前哨戦」だ。
もっとも、あくまで
外野の立場からすれば、課題克服など知ったこっちゃないという爆走で、一気に逃げ切ってくれた方が盛り上がるもの。果たして
2ヵ月後のミッキーアイルは、我々にどんな姿を見せてくれるのだろうか。