今年のヴィクトリアマイルで好走するのは!?
文/浅田知広、写真/川井博
3月の中山開催は、初っ端の
中山記念にはじまり、今週の
中山牝馬S、そして来週の
フラワーC、
スプリングSと、芝1800mで計4重賞が組まれている。3歳の牡馬、牝馬、そして古馬の牡馬、牝馬と、2歳戦のないこの時期に考えられる重賞がすべてこのひと月に詰め込まれた形だ(ついでにダートの1800mでは再来週に
マーチSもある)。
このうち牝馬重賞は、今週の
中山牝馬Sと、来週の
フラワーCだが、この両レースは1番人気の成績が対極的。
フラワーCは過去10年で
[4.4.1.1]と極めて安定した成績を残しているのに対し、
中山牝馬Sはハンデ戦ということもあり
[2.0.1.7]に終わっている。
もっとも、ここで人気馬がひと息だからといって、今後のG1でまったく通用しないのかと言えば、決してそんなことはない。06年に
ヴィクトリアマイルが創設されて以降、
中山牝馬Sの出走馬が同年のヴィクトリアマイルで③着以内に入れなかった年は、08年のわずか1度きりなのである。
一昨年は
中山牝馬S⑤着の
ホエールキャプチャと、同⑪着の
ドナウブルーが、
ヴィクトリアマイルに直行してワン・ツー・フィニッシュ。昨年は
中山牝馬Sを制した
マイネイサベルが、間に
福島牝馬S②着を挟み、
ヴィクトリアマイルで③着に好走している。
とはいえ、
中山牝馬S出走全馬の同年の
ヴィクトリアマイル成績は
[1.3.4.36](連対率9.1%)止まり。一昨年のように、
ここで敗れた馬が本番で巻き返す例もあれば、逆に
本番がダメというパターンも当然あるだけに、コース形態や展開、ハンデなどさまざまな要素を踏まえた上でこのレースを見て、そして本番でも通用しそうな馬、上積みがありそうな馬を探し出すのが重要だ。
そんな先々に考える楽しみがありそうなメンバー構成だった一方で、
競馬ファンとしてはここでまずは穴を獲りたい、というレースでもあったのだが。終わってみれば、今年の
中山牝馬Sを勝ったのは、「先々の楽しみがある1番人気馬」
フーラブライドだった。
昨年、3連勝で
愛知杯を制したときには、同じ
ゴールドアリュール産駒の
エスポワールシチーや
スマートファルコンのように連戦連勝を重ねるのか、と
愛知杯の『速攻レースインプレ』で書いた馬だったが、その次走では牡馬相手の
日経新春杯に挑戦。結果③着とはいえ、直線ではかなり渋太く脚を伸ばしており、連勝こそ止まっても十分な好内容だった。
そんなレースを受けて、今回は再び牝馬限定戦。今度は
愛知杯のハンデ50キロから53キロになり、本格化後では初めて直線の短いコース、そして1800mという距離がどう出るかがカギだった。
しかし、4角手前でムチが入りながらも大外を勢い良く進出。この馬の前で、やはりいい勢いにも思われた
キャトルフィーユをねじ伏せるように交わし去り、見事に
ふたつ目の重賞タイトル獲得となった。
そしてこの勝利で、
ヴィクトリアマイルにも前進するにはしたのだが。果たして東京芝1600mという条件は、この馬にとってどうなのだろうか。これまで芝では直線の長いコースで結果を出し、左回り中京で重賞を勝っているのだから、東京コースは問題ないだろう。
ただ、
ランニングフリー(
春の天皇賞②着)の近親とか、半弟
エーティータラント(
父デュランダル)が2000m超で好走を重ねているといった血統背景からは、あまりマイルというイメージは湧いてこない。しかし、展開ひとつで中距離馬でも、というコースが東京芝1600mでもある。さて、
陣営がここからどんな選択をするのか興味深いところだ。
一方、敗れた側でも
ケイアイエレガントや
キャトルフィーユは近走の好調そのままに、軽ハンデも活かして②着同着。そして55キロを背負った
アロマティコ、
ノーブルジュエリーも目立つ脚は繰り出していた。
さらに、半年ぶりの今回は⑨着に敗れたトップハンデ・
エクセラントカーヴも、直線で狭くなった中でそこそこの走りは見せており、ここを叩いて変わってくる余地は大いにある。
さて、この中から今年の
ヴィクトリアマイルで好走するのはどの馬か。ちょっと間隔が空いている上、間にレースを挟む馬もいるだけに
人気の盲点になりがちだが、
このレースから毎年のように好走馬が出ていることは、5月までしっかりと覚えておきたい。