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夢広がる“ゴールドシップVer.3”のお披露目
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


いきなり競馬と関係ない話になるが、ネット時代になったこともあって、最近のゲームはネットを通じてバージョンアップが行われることがある。それによって何が行われるかというと、例えばバグ(プログラム上の間違い)が直されたり、ゲームのバランスが改善されたりする。

以前「これは自分には合わないなあ……」と思っていたゲームが、バージョンアップが行われたことによって劇的に改善することも多い。また、その逆もたまにある(笑)。

現在の古馬戦線というと、オルフェーヴルロードカナロアなど、トップを張っていた馬が軒並み引退したこともあって、各路線はともに混戦模様。それぞれG1ではどの馬が勝つか、予想するのが非常に難しくなっている。

そこで今回の阪神大賞典。今年は昨年の覇者ゴールドシップ“復活”があるのかが最大のテーマとされていた。

前走が有馬記念③着の馬に対して“復活”とは失礼では!? と思ったりもしたが、昨年秋は京都大賞典⑤着、ジャパンC⑮着とやや精彩を欠いていたことは事実。G1を4勝している馬だから、目指すところは高いということだ。

戦前、ゴールドシップ“不振”について、「精神的なもの」「いやいや肉体的なものがあるのでは」など、さまざまに言われたりしていた。そういうこともあって、昨年の阪神大賞典で1.1倍だった単勝オッズが、今回は1.7倍(それでもかなりの人気だが)にとどまったのだろう。

冒頭のゲームの話にたとえると、デビューから4歳春まで、破竹の勢いだった“Ver.1”から、“Ver.2”に変わった昨年秋はやや不振。今年緒戦となる今回は、ゴールドシップVer.3”を見せられるかが焦点、という感じだろうか。

レースでは、有力馬の一角を占めたバンデがハナに立ったこともあって、後続を離してはいたが実際は溜め逃げの形。前半1000m通過は63秒2だった。

ゴールドシップはいわゆる“負けパターン”が分かりやすく、昨年の京都大賞典ジャパンCのように、スローペースで上がりの競馬になり、3~4コーナーでスムーズにポジションを上げられなかった時は苦戦する傾向がある。

道中で昨年のラップを見直す(3000mなので時間があった)と、前半1000m通過は61秒2で、実に昨年比で2秒も遅い。これだけ見るとかなり厳しい展開と思えた。

しかし、ゴールドシップのレースぶりはこれまでと違っていた。スタート直後は岩田騎手の手が動いたが、行き脚がついてからはスムーズに2番手につけ、道中で掛かり気味だったほど。以前はスタートで仕掛けられても後方からの競馬になっていたことと比べると、雲泥の差だ。

さらに驚いたのは、4角で後続が接近してきたところで闘志に火がつくと、スッと前に出て持ったままでバンデを交わして先頭に立ったこと。前述のように、ここでスムーズにポジションを上げられない時はこれまた苦しい。しかし、そんな心配も無用だった。

そして、一度先頭に立ってしまうと他馬は問題にしない。直線を向いてから後続を突き放し、まさに“ゴールドシップVer.3”のお披露目といえる強さだった。

もともと折り合いに不安の少ない馬ではあったので、勝負どころでの反応が劇的に改善された今は、以前以上の強さを見せられる可能性もある。天皇賞・春は昨年⑤着に敗れているが、リベンジする場面が見られてもまったく驚けないだろう。

そして、昨年、一昨年と同じステイゴールド産駒のオルフェーヴルが②着に敗れた凱旋門賞で……“Ver.3”の夢は広がる。