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カレンブラックヒルは今回の幸運で再び上昇気流に乗るか?
文/編集部(M)、写真/森鷹史


近年のダービー卿CTは、近3走以内に③着以内の好走歴があった馬が優勝していて、06年以降は8連勝を飾っていた。今回、重ハンデを背負って上位人気に推されたコディーノカレンブラックヒルは、ともに近走に好走歴がなく、地力に期待する感じだったが……そのジンクスをカレンブラックヒルが打ち破ってみせた。

レースが終わって振り返ってみると、その手もあったか……という感慨も湧いてきたので、そのことを記そう。

カレンブラックヒルはデビューから5連勝を飾った馬だが、その5戦はすべて馬番5番以内だった。6戦目以降は6連敗を喫していたわけだが、その6戦のうち馬番5番以内だったのは昨春の安田記念(馬番1番・⑭着)だけ。今回は、まずは内枠を引き当てた幸運があった。

南関東地方は木曜日(3日)と金曜日(4日)にが降り、週末の中山競馬が道悪馬場になったのも、カレンブラックヒルには好都合だったのだろう。デビュー2連勝は道悪馬場でのもので、馬場が渋れば負け知らずだった。日曜日(6日)の9R(千葉日報杯)の頃にも一雨があり、これが決定打になったのかもしれない。

今回はレース展開も、カレンブラックヒルにとって追い風となったのだろう。逃げ馬不在でスローペースが予想され、その通りにゆったりした流れになった。道中で引っ掛かる馬が続出し、最後の直線でも前が詰まる馬が数多くいたが、カレンブラックヒルは内を淡々と走り、直線でもスムーズに抜けてきた。思えば、3歳時にNHKマイルCを制した時もスローペースで、緩い流れは得意なのだろう。

冒頭で、このレースは「近3走以内に③着以内の好走歴があった馬が8連勝中」であることを記したが、9年前の優勝馬、つまりは近3走に好走歴がなく勝った馬ダイワメジャーだ。カレンブラックヒルが同馬の産駒であることも、何かの因縁だったのかもしれない。

ダイワメジャー皐月賞を制した後は、ダービー⑥着→オールカマー⑨着→天皇賞・秋⑰着と低迷していたが、ひと息入れられた後の4歳初戦でこのレースを制した。カレンブラックヒルは低迷した期間が父よりも長かったが、父が勝利を挙げた時と同じハンデ57.5kgで復活の勝ち鞍を得た。今後は、これを良いきっかけにできるかどうかだろう。

カレンブラックヒルはこれまでに6勝を挙げていて、そのうち5勝が1600mだ。例外は毎日王冠(東京芝1800m)で、その時はレコード(1分44秒2)に0秒8差の1分45秒0で押し切っている。その②着馬はジャスタウェイで、同馬とは斤量差が2kgもあった(カレンブラックヒルが56kg、ジャスタウェイが54kg)。

ジャスタウェイのその後の飛躍については、ご存知の通り。カレンブラックヒルも、ドバイでのレースを見て発奮したのかもしれないが、いずれにしても、同馬がG1で好勝負できる力があるのは確かなこと。ここから父のように再びG1戦線で主役を張ることができるか、注目される。

一方、コディーノは、前走の東京新聞杯に続いて今回も1番人気を裏切る結果になってしまった。道中で行きたがる面を見せ、直線で伸びかかったものの、最後のひと押しが利かなかった。坂を登ってから脚を伸ばせなかったのは前走と同じで、もしかしたら道悪馬場は向かないタイプなのかもしれない(道悪馬場は近2走だけ)。

コディーノも内枠巧者で(過去4度の連対はすべて馬番5番以内)、内目の枠(3枠5番)を引き当てたまでは良かったが、カレンブラックヒルとは異なり、こちらは文字通り水を差された格好になった。次走こそはパンパンの良馬場で真価を発揮してほしい。

NHKマイルCで④着の実績があるレッドアリオンは、前走のニューイヤーSで復活の勝利を挙げたが、今回は再び出遅れ癖を出してしまった。勝負所での反応もあまり良くなく、最後は流す感じでの入線(⑭着)だったので、この馬も道悪馬場は合わないのかもしれない。

コディーノにしても、レッドアリオンにしても、次走も道悪馬場だと真の力を測りかねるので、次に出てくる時はテルテル坊主でも作って観戦することにしよう。

今年のダービー卿CTはハンデ戦の上にスローペースになり、①着から⑦着までが0秒2差でゴールする大接戦になったが、結局、掲示板内は中6週以内の馬が占めた。暖かくなり、他のレースでは休み明けでも激走する馬が多く見られたが、ダービー卿CTだけは別なのかもしれない。

ダービー卿CTの勝ち馬で、中9週以上だったのは05年のダイワメジャーまで遡る。来年以降のこのレースでも、休み明けの馬についてはその出走間隔をよく吟味した方が良さそうだ。いや、カレンブラックヒルが父に続いてこのレースのジンクスを破ったから、休み明けのジンクスについてもダイワメジャー産駒だけは別格で扱うべきなのかもしれない。