進化と存在感をアピールするかのような末脚炸裂だった
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
昨年の
ダービーでワンツーを果たした
キズナ、
エピファネイア。その秋、
キズナはフランスに渡り、
ニエル賞で英ダービー馬
ルーラーオブザワールドを下して勝利し、
凱旋門賞でも④着と健闘した。
エピファネイアは国内で牡馬クラシック戦線を歩み続け、
神戸新聞杯、
菊花賞で連勝。皐月賞馬もダービー馬も不在となった牡馬クラシック最終戦で
待望の一冠を手にすることとなった。
ダービーでの
エピファネイアは道中で折り合いを欠き、躓いて落馬寸前のシーンもあったので、明け4歳となったいま、スムーズに競馬をしたらどちらが強いのか。その2頭が
ダービー以来、再び激突するだけでも興味深い一戦なのに、昨年、G1・3勝を挙げて
最優秀3歳牝馬に輝いた
メイショウマンボも参戦となれば
見逃せない好カード。
8頭立てのG2戦なのに、パドックに詰めかけていた人々の多さはまるでG1のような雰囲気を感じさせ、やはりこの一戦を楽しみにしていた
競馬ファンが多かったということだろう。
その大注目の一戦。
カレンミロティック、
トウカイパラダイス、
ビートブラックが固まりつつも競り合うことなく進み、後続と大きな差ができて馬群がふたつのグループに分かれることに。
メイショウマンボは休み明けのせいかレース前からテンションが高く、後続グループを引っ張る
ショウナンマイティの直後で掛かり気味。その後ろに
エピファネイア、
フラガラッハ。
キズナは最後方から
エピファネイアの動きを見つつといった感じで追走する。
表示された1000m通過タイムは
60秒5で、思ったほど速くない。だが、3コーナーを通過しても前3頭と後ろ5頭の差は10馬身以上。3番手
ビートブラックは後退気味だが、逃げる
カレンミロティック、2番手
トウカイパラダイスの手応えは悪くなさそうで、
穴党の方々は特にザワついたのではないだろうか(笑)。
4コーナー手前で先に動いたのは
エピファネイア。
メイショウマンボを交わし、勝負所での加速力はさすがという速さで、
福永騎手はほとんど動かずに前との差を詰めていく。
武豊騎手が手を動かしてエンジンをふかしている
キズナとは対照的だ。
エピファネイアは5ヵ月半ぶりで2kg減の484kg、
キズナは半年ぶりで過去最多体重の498kg。その馬体重からはかなり仕上げてきた
エピファネイア、余裕残しの仕上げの
キズナという印象も受けた。
キズナが勝負所で反応が少し鈍かったのは、そのあたりも影響しているのかなと感じたが、そこからがすごかった。
キズナは弾け切れない
エピファネイアを残り1F手前で交わし、先頭に踊り出ていた
トウカイパラダイスもあっさりと捕えて先頭へ。追えばどこまでも伸びて行きそうな末脚で前を行く7頭をきっちりと差し切ってみせた。
エピファネイアに有利と思われた小回り&芝2000mという条件で完勝。
「4歳となったキズナはパワーアップしている」、
「ジャスタウェイ、ジェンティルドンナだけじゃない、日本にはキズナもいる」。
そうアピールするかのような末脚炸裂だった。今後に期待が膨らむ2014年白星スタートだったのではないだろうか。
ちなみに00年以降、
ダービー①&②着馬がその後初対戦となったレースでどうだったかと言うと、対象機会は10回あり、先着した場合を勝利とすると
ダービー馬が8勝2敗と圧倒的な強さを見せていたのだが…
ダービー馬強し、である。
一方、
エピファネイアは
キズナの後塵を拝し、2番手から抜け出した
トウカイパラダイスも捕え切れず③着に敗れた。マークされる立場に加え、自分から仕掛けるという厳しい展開で
キズナと0秒3差なら悲観するほどではないが、
爆発力に欠けた感は否めない。
次走は香港の
クイーンエリザベス2世Cに参戦する予定だが、ひと叩きされた次走でどんな走りを見せてくれるのか。そこで4歳となった
エピファネイアの
真価が問われることになるかもしれない。
メイショウマンボは勝負所でペースアップした時にも対応し切れず、後方からなだれ込む形で⑦着。今回は
キズナと
エピファネイアの争いに加わることもできなかったが、これで連外の4戦はすべて阪神となり、休み明けも
④⑦着と2戦して馬券圏外。休み明けをひと叩きされ、
[4.1.0.0]の京都に舞台を移せば…いま一度期待だろう。
明暗が分かれる形となった感のある4歳G1馬対決だが、レースとしては
見応え十分の内容だったと思う。ただ、
キズナも
エピファネイアも
メイショウマンボも、年末の
有馬記念は
体調不良などを理由に回避していて、この3頭の邂逅が休み明けでの前哨戦というのはちょっと
残念という思いもなきにしもあらず。
次はG1タイトルをめぐって激闘を繰り広げるシーンを見せてほしい。そのようにも思わせる4歳G1馬対決だった。