今度は強敵と同斤量で勝ち切れるかが見どころ
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
96年に創設され、今年で19回目を迎えた
アンタレスS。03年にハンデ戦から別定重量戦になり、その03年は前走で
フェブラリーSを勝っていた
ゴールドアリュールが59kgを背負いながら8馬身差の快勝。続く04年は
タイムパラドックスが優勝し、この年の
ジャパンCダートを制覇と、G3ながらも注目の一戦になるかと思われた。
ところが、その後の勝ち馬は
ピットファイターや
フィフティーワナーが
長期休養を強いられたり、
ワイルドワンダーがどうしてもG1を勝てなかったり。
不運もあったとはいえ、当初の印象からすると「あれ?」という感もあり、同時にやっぱりG3か、という感もあった。
しかし、一昨年は
ゴルトブリッツが次走で
帝王賞を制覇。そして記憶にも新しい昨年は、
ホッコータルマエと
ニホンピロアワーズの一騎打ちとなり、これに競り勝った
ホッコータルマエのその後の活躍はみなさんご存じの通りである。
そんな流れを受けた今年は、昨年に続いて
ニホンピロアワーズが出走。さらに、
ナムラビクターや
エアハリファ、
ソロルといった伸びしろのありそうな馬も参戦し、ここ2年の流れそのままといった一戦になった。
特に人気を集めたのは、
ニホンピロアワーズ(単勝1.8倍)と、
ナムラビクター(同4.0倍)の2頭だった。
ニホンピロアワーズは12年の
ジャパンCダート優勝後、G1・Jpn1以外では
[3.1.0.0]。昨年のこのレースで
ホッコータルマエに屈した以外はすべて①着と、
G1馬の力をしっかりと見せている。
一方の
ナムラビクターは12年の
レパードSで、その
ホッコータルマエにクビ差②着の実績を持っていた。その後は
1年近くの休養もあったが、前走のオープン特別は4馬身差で圧勝。G1・Jpn1挑戦へ向け、まずは
ニホンピロアワーズを打ち破りたい一戦だった。
そしてレースは、そんな2頭のまさに
ガチンコ勝負となった。レース序盤はふだんより後ろ、10番手前後につけていた
ナムラビクターが、3コーナーから外を回って進出を開始。そして同じく、いつもよりは控え気味だった
ニホンピロアワーズが、この動きに連れて
ナムラビクターの内にぴったり併せていったのだ。
2頭がほぼ並んだのは3~4コーナー中間の残り600m手前あたり。そして直線、外の
ナムラビクターが内の
ニホンピロアワーズを競り落としたのはゴール手前100mほどだった。
逃げた
グレイスフルリープ(④着)の渋太い粘りや、2頭の陰でいったん姿を消していた
トウショウフリーク(②着)のゴール前強襲もあり、結果的に①~④着同タイムとなったものの、レースの全体像としては優勝した
ナムラビクターと、③着に敗れた
ニホンピロアワーズによる、
見応えある一騎打ちだったと言っていいだろう。
そんな
一騎打ちを制した
ナムラビクター、今回は
ニホンピロアワーズより2kg軽い斤量が効いた面もあるだろう。しかし、
ニホンピロアワーズとの2kg差は、昨年の
ホッコータルマエも同様で、この勝利を足がかりに次走で
かしわ記念を制し、続く
帝王賞では同斤量になった
ニホンピロアワーズに競り勝っている。勢いに乗る今年の
ナムラビクターも、
今度は強敵と同斤量で勝ち切れるかが見どころになりそうだ。
もちろん、③着に敗れた
ニホンピロアワーズも、その2kg差を考えれば十分な好内容。2つめのG1・Jpn1にはなかなか手が届かない現状だが、まだまだ
チャンスはあるだろう。
そして、今回は失礼ながら脇役扱いにしてしまったが、2頭の間に食い込んだ
トウショウフリークも、7歳にして進境を見せてきた。
最内枠で出脚ひと息、ハナを切れず向正面までバタバタしていたものの、その後は内をうまく立ち回り、最後は
ニホンピロアワーズと
グレイスフルリープの間を割ってぐいっとひと伸び。
これまでのイメージを一新する走りを見せている。
加えて④着の
グレイスフルリープも、重賞初挑戦・初距離でこの結果は大健闘だ。もし(当方のように)①&③着馬の
一騎打ちばかりに気を取られていた方がいれば、この2頭の走りも再確認しておくことをおすすめしたい。