今回の好走はデータ通り、ヴィクトリアマイルでも先行策なら!?
文/浅田知広、写真/川井博
優勝馬には今年から、
ヴィクトリアマイルの優先出走権が与えられるようになった
福島牝馬S。G1のステップレースというと一般的には、本番の条件に合わせて時期や距離などが決められるもの。G1の時期、条件が変更されれば、それに伴ってステップレースに手を加えられる形が多い。
しかし、この両レースの関係はこれとは異なり、先に
福島牝馬Sが04年に創設され、その翌々年となる06年、このレースから中2週の間隔で
ヴィクトリアマイルが新設されている。
そんな経緯が関係しているのか、それとも単に
福島牝馬SがG3だからなのか。ともあれ、
ヴィクトリアマイルでの
前走・福島牝馬S組の成績は
[0.1.1.33]で複勝率でも
5.7%止まり。09年の
ブラボーデイジー(
福島牝馬S①着→
ヴィクトリアマイル②着)と、昨年の
マイネイサベル(同②着→③着)の2頭しか好走馬が出ていない。一応ステップレースではあるとはいえ、果たして
優先出走権の付与が適切なのか、という感もなきにしもあらずだ。
その一方で。
福島牝馬Sと密接な繋がりがあるのが、ひと月半ほど前に行われた同距離の
中山牝馬Sである。代替開催時も含め過去10年、
前走・中山牝馬S組はなんと
[8.5.5.43]と、③着以内馬の半数以上。特に
前走・中山牝馬Sの連対馬は
[5.1.1.2]で勝率
55.6%、複勝率は
77.8%を記録している。
さて、今年。その
中山牝馬Sを制した
フーラブライドこそ不出走ながら、②着同着だった
ケイアイエレガントと
キャトルフィーユが駒を進めてきた。
前走・中山牝馬S連対馬の勝率は
50%超、つまり同一年に該当馬が2頭いれば、
どちらかは勝つ確率になる。
もっとも、
中山牝馬Sから負担重量は変わっており、
ケイアイエレガントは1kg増、そして
キャトルフィーユは2kg増。この2頭から4分の3馬身差の④着だった
アロマティコが1kg減なのだから、斤量だけ見れば
アロマティコが有利だ。
そんな発想からか、1番人気は
アロマティコ。
キャトルフィーユは2番人気、そして
ケイアイエレガントは5番人気という評価でレースを迎えたのだった。
スタートは
アロマティコが1頭出遅れたが、もともと末脚勝負のタイプの上、前走でも出遅れており、これは想定された範囲内。対して前走は2番手だった
ケイアイエレガントが押っつけてハナを奪い、
キャトルフィーユは3~4番手の追走となった。
そして向正面、1000mの通過タイムは
60秒ちょうどでやや遅い流れ。例年は差しが決まる傾向ではあるが、良馬場の福島で行われた過去2年は
58秒2、
57秒9で通過しており、今年は少々違った展開のレースになった。
こうなると後方から進めた
アロマティコには厳しく、3コーナー過ぎから大外をまくり気味に動いたものの、直線で末を失う結果に終わってしまった(⑩着)。
一方、前は3~4コーナー中間で、2番手の
フィロパトールが逃げた
ケイアイエレガントが並びかける競馬。ペースは別にして、これはこれで逃げ残るのは苦しいかとも思われた。
しかし、ここからの
ケイアイエレガントは粘り強く、直線に向くと差し返して残り100mで先頭へ。最後は
キャトルフィーユの急追を受けたものの、これもしのぎきって見事に逃げ切り勝ちを飾ったのだった。
こうして、終わってみれば斤量云々は関係なく、
好走確率の高かった前走・中山牝馬S連対馬のワン・ツー決着となった今年の
福島牝馬Sだった。そして、次なる目標は
ヴィクトリアマイル。冒頭にも触れたように、
前走・福島牝馬S組が
苦戦を強いられているレースになる。
ただ、過去2頭の好走馬は
福島牝馬Sで連対し、
ヴィクトリアマイルでは先行していた。今年の上位2頭も今回同様のレース運びなら、その条件は満たしてくる。
特に、勝った
ケイアイエレガントにとって
ヴィクトリアマイルの東京芝1600mは、2月に1600万を3馬身差で圧勝したコースだ。もちろん大幅に相手は強化されるものの、
阪神牝馬Sが差し決着になるなど、他の有力どころは差し馬が中心。展開ひとつで、
前々で運べる脚質が好結果をもたらす可能性も十分にありそうだ。