ディープインパクト自身と産駒は得意距離がズレている?
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
出走馬16頭のうち4頭いた
ディープインパクト産駒が1~4番人気に推され、結果、①~③着と⑤着。
1分31秒4というレコード決着で、レース上がりが
33秒6と速くなり、
ディープインパクト産駒の独壇場となった。
京都芝外1600mでの重賞は、昨秋の
マイルCS以降、これで
ディープインパクト産駒の5連勝だ。
マイルCS(
トーセンラー)→
京都金杯(
エキストラエンド)→
シンザン記念(
ミッキーアイル)→
京都牝馬S(
ウリウリ)→
マイラーズC(
ワールドエース)で、今年の
きさらぎ賞(京都芝外1800m)でも
トーセンスターダムが優勝しているので、京都芝外1600~1800mの重賞では
ディープインパクト産駒が6連勝を飾っていることになる。
ディープインパクト自身は京都芝外1600~1800mでの出走歴がない。というか、
1800m以下の距離には一度も出走しなかった。それでいて産駒はこのような成績を残しているのだから、不思議なものだ。
今回優勝した
ワールドエースは、前走以前の7戦が1800m以上で、マイル戦は初めてだった。
皐月賞で②着となり、
ダービーでは1番人気(④着)に推されたほどで、3歳時までは父が活躍した距離と似たカテゴリーでの飛躍が期待されていた。
ところが、ケガもあって
G1タイトルを手にするまでにはいかず、仕切り直しての勝ち鞍が
1600mとなった。しかも、1分31秒台というなかなかの
レコードタイムのおまけ付き。
ワールドエースの母
マンデラは独オークスの③着馬で、その父
アカテナンゴは独ダービー馬にして、独チャンピオンサイアーだ。
アカテナンゴは母の父として独ダービーや独オークスを制する馬も出していて、ケンタッキーダービーとドバイワールドCの覇者・
アニマルキングダムなども輩出している。
このような血統背景でも、
ワールドエースは芝1600mに
真の適性距離があったかのような走りを見せた。
ディープインパクト自身は1800m以下の距離で出走歴がなく、走っていれば無類の強さを見せた可能性もあるが、
ディープインパクト自身と産駒とでは、
得意距離が微妙に違うと考えた方がいいような気がする。同産駒は
芝3000m以上で勝った馬がまだいない([0.4.2.15])。とかいって、
来週あたりにサクッと勝たれそうな気もしないでもないけど。
今回、4頭いた
ディープインパクト産駒の中では、距離適性の面でいちばん未知数だったのが
ワールドエースと言えた。
フィエロは芝1600mが5戦4勝だったし、
エキストラエンドは
京都金杯勝ち馬にしてこの距離は[1.1.0.0]。
オースミナインは
京都金杯が②着で、芝1600mでは[3.4.1.0]と崩れ知らずだった。
ワールドエースは
ディープインパクト産駒の中では枠がいちばん内(2枠4番)だったが、間隔も空いていたし(2ヶ月半ぶり)、屈腱炎を治癒されてから1戦しか走っておらず、およそ順調とは言えなかった。
それでいて後続に1馬身以上の差を付けて快勝するのだから、
ここでは力が違ったということか。前述した通りに
ワールドエースは
ドイツの牝系で、
ドイツ人ジョッキー(
シュタルケ騎手)とのコンビがハマッたということもあるのかもしれないが。
ワールドエースはこの後も順調なら、当然、
安田記念での有力馬として名前が挙がるのだろう。東京競馬場では④着(
ダービー)、⑤着(
白富士S)という成績で、
左回りがどうかという印象があるものの、
マイル戦なら違った結果が出ても不思議なさそうでもある。
ちなみに、過去の
安田記念での
ディープインパクト産駒は[1.0.1.4]で、11年に
リアルインパクトが優勝している。昨年は
ダノンシャークが③着に食い込んだが、それらを含めて
安田記念での
ディープインパクト産駒はすべて
馬番12~17番だ。なんだか、これ、
ディープインパクト産駒だけハンデを背負わされてるように見えるのは気のせいだろうか(
安田記念の勝ち馬は05年以降の9頭中7頭が馬番10番以内)。
ワールドエースや
フィエロ、
オースミナインらはふた桁馬番でも勝ち鞍があるが、
エキストラエンドは過去6勝がひと桁馬番で、真ん中から内目の枠の方が良さそうな印象がある。
安田記念での
ディープインパクト産駒は、まずは枠順発表で良い所を取れるかがカギではないだろうか。
最後に、開幕したばかりの
京都の馬場についても触れておこう。
今開催最初の芝のレース(4月26日京都3R・3歳未勝利・芝1600m)で、いきなり
1分33秒台の決着になり、その次のレース(京都4R・3歳未勝利・芝1400m)では
1分19秒9という
レコードが出て、今春の
超高速馬場は確定した。
以前にJRAの職員に話を伺った際、「
レコードタイムが出て嬉しい気持ちにはならない」と話されていて、個人的には
時計の出やすい馬場を作っているわけではないと認識していたが、どうもそれを肯定する気持ちにはなれなくなっている。
時計の速い馬場を歓迎する声はほとんど聞かないのに、現実は違う方面に進んでいる気がしてならない。これだけ時計の速い馬場になって、
競走馬の脚元は大丈夫なのだろうか。今週出走した馬たちが今後も故障なく、無事に出走してくることを切に願う。