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京都外回り長距離戦の王道競馬はまさにこれ
文/安福良直、写真/森鷹史


キズナゴールドシップ豪華メンバーが揃った天皇賞・春だったが、結果はフェノーメノが勝って同レースの連覇を達成した。

天皇賞・春は長距離のスペシャリスト向けのG1だが、過去に連覇したのは、他にもたくさんのG1を勝ったメジロマックイーンテイエムオペラオーのみ。「長距離適性が高い」というだけでは連覇できない、ということなのだろうか。それだけに、今回は価値ある連覇を達成したと言っていいだろう。

それにしても、レースの前は、というより前の週からずっとだが、今回の天皇賞は、予想をするのが実に楽しかった。春開催の京都は毎年おなじみの高速馬場。前に行った馬は最後まで止まらず、中長距離戦は逃げ切り決着ばっかり。そんな中で、各馬はどんな作戦を立て、どの馬が最後に抜け出すのか。大レースの距離短縮を叫ぶ声も大きいが、長距離戦の醍醐味は、この「予想する楽しさ」にもある。

特に今回、1番人気のキズナは2400mを超える長距離を走るのが初めてで、しかも今の馬場には不向きな追い込み馬。一昨年①着のビートブラックのような、早仕掛けの逃げ馬が現れたらキズナはかなり苦しいはず。私はそう考え、前走で逃げ切りを決めたデスペラードに期待したが、大外枠が応えたのか十分に折り合うことができずに大敗

代わりに逃げたのは日経新春杯を逃げ切ったサトノノブレスだったが、ビートブラックのように早めに突き放す競馬ではなかった。

ラップタイムを見ると、残り5ハロン地点までは1ハロンで13.0秒以上のラップがないイーブンペースが続いていたが、その次の1ハロンは12.3秒とペースアップ。ここはちょうど2周目3コーナーの坂の上り。ペースを上げるのには勇気が要る場所だ。

サトノノブレス浜中騎手としては、早めにペースを上げてスタミナ勝負にするつもりだったのだろうが、後続もついて来てしまったのは誤算だったか。

しかし、この「少し早めのペースアップ」が、勝ったフェノーメノと負けたキズナの明暗を分けたように思える。

フェノーメノは中団より少し前の位置で折り合いもつき、3コーナーの下りを慎重に、かつ位置取りを悪くせずに下りきって直線勝負。京都外回り長距離戦の王道競馬はまさにこれ、という内容で、会心の勝利と言える。

一方のキズナは、4コーナーまでに差を詰め、直線を向いたときの先頭との距離を考えれば、「十分に届く」と思ったはず。しかし、そこに至るまででかなりのスタミナを消費していたようで、ダービー大阪杯で見せたような末脚は残っていなかった。

もし、サトノノブレスが坂の下りからペースアップしていたらどうだったかなと思うが、そのときは4コーナーまでに前との差は詰められなかっただろうが、それでもこちらの方がキズナらしい競馬はできたかもしれない。ただ、勝てたかどうかはやはり微妙

残る有力2頭、ウインバリアシオンゴールドシップは、騎手が乗り替わることになったのが不本意だったかもしれない。ウインバリアシオンは、当初予定していた岩田騎手騎乗停止になり、代わったシュタルケ騎手も当日の落馬負傷で、最後は武幸騎手に。代役としてはほぼ完璧な内容で②着まで持ってきたが、過去のG1②着を超えるインパクトも残せなかった。

落馬などがあって仕方がないことだが、ウインバリアシオンが勝つにはどういう競馬をすればいいだろうか、と何日も前から考えていたファンにとっては、残念なことだった。

一方のゴールドシップに至っては、スタートで大きく出遅れてしまい万事休す。菊花賞のときのような大仕掛けができればだれにも負けない馬のはずだが…。このような個性の強い馬の場合は、1人の騎手と長いコンビを作って、個性を熟成させてほしいな、と思うのですがどうでしょうかね。

騎手と言えば、最後に見せ場を作ったのは③着ホッコーブレーヴ田辺騎手。直線ではフェノーメノの真後ろから斬りかかるような競馬で、ゴール前では②着かもという内容。こういう、スキあらば襲いかかる、という競馬をG1でもできる騎手は今後も注目だ。

ということで、今年のG1ではずっと田辺騎手の複勝を買い続けることにしよう。って、最大のチャンス(フェブラリーS)をすでに逃している!?