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ユールシンギングは社台SSの結晶ともいえる血統背景を持っている
文/編集部(T)、写真/森鷹史


出走馬のハンデを見ると、トップハンデのナリタクリスタルが57.5kg。次いで57kgがエクスペディショントランスワープの2頭。昨年10月以降に馬券圏内のない馬がハンデ上位となっていた。

それより軽い馬というと、56.5kgでレッドレイヴン、56kgにユールシンギングなど5頭がいて、それ以外の7頭はすべて55kg。その差は最大で2.5kgしかなく、「別定戦でももう少し差がつくんじゃないか!?」というレベル。裏を返すとそれだけ拮抗している、という見方もできた。

ところが、オッズはそうではなく、1番人気に推されたレッドレイヴンが3.2倍、2番人気マジェスティハーツが4.1倍、3番人気ユールシンギングが5.0倍で、単勝ひと桁台の馬はこの3頭のみだった。

そして、結果もこの3頭が上位を独占。ハンデを踏まえた上で、馬の実力を判断したファンの皆さんの見立ては正しかったということだろう。個人的には穴ぐさにしたカルドブレッサに期待していたが…、上位3頭は強かったです(④着)。

過去の新潟大賞典を振り返ってみると、開幕週の開催だった12年と13年は4角7番手以内にいた馬が制していて、2週目以降の開催だったそれ以前のレースでは05年以降7年連続で4角8番手以下の馬が制していた。今年はというと、2週目の開催。これまでの傾向でいけば上がり勝負となることが予想できた。

上位人気に推された3頭の前走の上がり3ハロンタイムを見ると、①着ユールシンギングが33秒8、②着マジェスティハーツが34秒6、③着レッドレイヴンが34秒8。前走の上がりタイムの順に人気馬を買えば当たっていたわけだ。ここまで単純ではないだろうが、そういったアプローチの仕方もあったかも…と、レース後に反省しました(笑)。来年は何週目の開催になるかはまだ分からないが、2週目以降だとしたら「上がりタイムにしか目を向けない馬券術」を試してみようと思います!

話を勝ち馬ユールシンギングに移すと、その血統表が非常に面白いことが分かる。以下はユールシンギングの牝系と、その現役時の主な戦績を羅列したものだ。

4代母シャダイアイバー(父ノーザンテースト)
…82年オークス①着
3代母オークツリー(父リアルシャダイ)
…92年福島記念②着
2代母クリスマスツリー(父トニービン)
…00年ターコイズS①着
ジョリーノエル(父スペシャルウィーク)
…1000万①着(全4勝)

そしてユールシンギングの父がシンボリクリスエス。これらの父はすべて社台スタリオンステーションの繋養馬で、「ザ・社台SS」ともいえそうな配合を持っている。それぞれ時代を代表する名種牡馬を配合されていることからも分かるように、大事にされてきた牝系ということなのだろう。その期待に応えて、活躍馬を出し続けていることも凄い。

さらに近親にも活躍馬多数で、オークツリーを母に持つペインテドブラック(父サンデーサイレンス)は重賞2勝、クリスマスツリーは12年マーメイドS②着のクリスマスキャロル(父アグネスタキオン)を出している。これらもまた、父は社台SSの繋養馬だ。

ここからは妄想。ユールシンギングがいわゆる“社台血統”の結晶ともいえそうな血統背景を持つだけに、もしこの馬が社台SSで種牡馬入りしたら、どのような配合をするだろうか。ミスプロの血を持っていないからキンカメ牝馬? サンデーサイレンスが3代目にいるので、このクロスが生じる配合でも面白そうだ。

この妄想を現実にしていただくためにも、ユールシンギングにはこれから種牡馬入りできるほどの活躍をしていただかなければ!