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ここでひとつ壁をやぶった5歳馬の今後に注目
文/浅田知広、写真/稲葉訓也


春のグランプリ・宝塚記念の前走別成績で、他を圧倒する好走馬数を誇るのは、天皇賞(春)出走馬。そして、これに続くのが安田記念組金鯱賞組だったのだが、12年から金鯱賞は暮れの開催に移動。同じ「グランプリ」でも有馬記念の前哨戦となり、オーシャンブルーウインバリアシオンと2年連続で有馬記念②着馬を輩出し、まずは成功を収めている。

その金鯱賞とほぼ入れ替わる形でこの時期にやってきたのが、この鳴尾記念である。宝塚記念まで中3週のG2・金鯱賞から、中2週のG3・鳴尾記念になり、この変更当初は「前哨戦」としての格も下がったかな、という印象を受けたものだ。

しかし、一昨年はこのレース②着のショウナンマイティ宝塚記念で③着に。そして昨年③着のダノンバラード宝塚記念②着と、こちらも2年連続で好走馬を輩出。まだ優勝馬こそ出ていないものの、ステップレースとしての役割はしっかり果たしている。

そんな鳴尾記念に、今年は11年秋の天皇賞馬トーセンジョーダンが出走。そして一昨年の優勝馬で、11年の有馬記念③着の実績もあるトゥザグローリーも出走してきた。ただ、トーセンジョーダン有馬記念⑭着以来の実戦で4番人気止まり。トゥザグローリーも一昨年優勝後は丸2年にわたって馬券圏内がなく、今回は久々のG3参戦でも8番人気の評価にとどまった。

そんなG1好走実績馬が人気を落としている一方で、上位人気を占めたのはG1経験のない、あるいは少ない馬たち。特に1番人気のエアソミュールは、オープン特別こそ4勝を挙げているものの、重賞6戦中5戦がふた桁着順という馬だった。

果たして、ここで好結果を残して宝塚記念へ向かうのは、こういった実績不足の上位人気馬か、それとも人気を落とした実績馬か。12頭立てで1番人気が単勝3.9倍、そして9番人気でも16.8倍という混戦模様でレースを迎えた。

レースは「実績馬」組のトゥザグローリーが先手を奪い、前半の1000m通過は60秒6のスローペースとなった。しかし、2番手のトウカイパラダイスが3コーナー手前で抑え切れない形で先頭に並びかけるとペースアップ。内回りコースらしいロングスパートもはまりそうな展開になり、そんな流れに乗って大外から進出したのが、1番人気のエアソミュールだった。

先に触れたように重賞6戦中5戦がふた桁着順というエアソミュールだが、残る1戦が昨年のこのレース④着で、上がりはメンバー中最速の33秒9。16頭立ての大外からまくり気味に動き、直線も後方からよく伸びたものの、最後は②③着馬に差し返され、②着と同タイムでの④着敗戦だった。

ただ、今年は昨年よりも少ない12頭立て。同じ「外枠」でも昨年より4コーナーのロスは少なく、直線入口では前を射程圏に捕らえるところまで持ち込めた。ここから一気に差し切るまでには至らなかったものの、同タイムの「②着争い」に敗れた昨年とは違い、今度はハナ+ハナ差の「①着争い」を制して重賞初制覇を果たしたのだ。

重賞では道悪やパワーを要する馬場に泣かされたレースも多く、これまでの実績がすべて力負けというわけではなかったエアソミュール。しかし、なにせ結果が結果だけに「オープン特別大将」の印象も強かったが、阪神開幕週を良馬場で迎えられた今回は、きっちりその力を証明してみせた。

二冠馬のおじエアシャカールにはまだ遠いが、いとこのエアシェイディ(有馬記念③着2回など)には一歩近づいたとみていいだろう。こちらは春のグランプリで好走するのか、それとも秋の天皇賞か。いずれにしても、ここでひとつ壁をやぶった5歳馬が、今後どんな成績を残していくのか注目したい。

そしてハナ+ハナ差の②③着には人気薄の7歳馬の2頭。長期休養明け2戦目で一変したアドマイヤタイシは、これで重賞②着6回目。3走前の13年・新潟大賞典②着に続くハナ差でまたもタイトルを逃したが、まだまだ力の衰えはなさそうで、今後もチャンスはあるに違いない。③着のフラガラッハは、7月末の中京記念を2連覇中。今年はハンデが気になるものの、好相性のレースへ向け状態を上げてきた印象だ。