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決着タイムで考えれば、不良馬場でもおかしくなかった
文/編集部(M)、写真/森鷹史


2年ぶりの開催となった札幌競馬は、開幕週にも関わらずあいにくの天候となってしまったが、中京競馬は今夏の開催最終日があいにくの馬場となった。ダートが良馬場なのに芝が稍重馬場という、かなり珍しい現象の中で中京記念は行われた。

マイル戦となった過去2回が波乱の決着で、今回も人気は非常に割れたが、最終的にはこのレースを連覇していたフラガラッハが1番人気(単勝5.3倍)に推された。コース相性の良さにすがった人が多かったということだろう。

フラガラッハ中京芝1600mを得意にしていることは誰もが知るところ。それに加えて、近走では不得意と思われた2000m以上のレースでも健闘していたのだから、自分の庭に戻ればさらに走れるはずと考えられてもおかしくはなかった。斤量も、連覇をした昨年&一昨年から500gの増量なら我慢が利くと見る向きが多かったのだろう。

ところが、今年は馬場が悪すぎた。昨年の勝ち時計は1分33秒5(良)で、馬場改修初年度の一昨年は1分35秒1(良)。それに比べて今年は1分37秒1(稍重)もかかった。

フラガラッハは3歳秋の準OP戦(紅葉S)で道悪(稍重)を克服して勝っているが、道悪での芝重賞は2戦してふた桁着順に敗れている(⑰⑮着)。今回も、直線で大外に持ち出されて、優勝したサダムパテックと同じような位置にいたものの最後に伸びきれず、⑩着に敗れてしまった。見た目以上に悪い馬場がこたえたのではないか。

ちなみに、JRAの芝1600m重賞で勝ち時計が1分37秒0よりも遅かったのは、05年の阪神JF(1分37秒3・勝ち馬テイエムプリキュア)以来だ。古馬混合戦に限れば、02年の東京新聞杯(1分37秒7・勝ち馬アドマイヤコジーン)以来で、その時は不良馬場だった。

良~重馬場で行われた古馬混合の芝1600m重賞で勝ち時計が1分37秒0よりもかかったレースを探したら、なんと86年まで遡っても見つからなかった。参考までに記すと、タイキシャトルが優勝した98年の安田記念(不良)は1分37秒5で、今年の安田記念(不良)は1分36秒8。走破時計で考えれば、今年の中京記念不良馬場でもおかしくない状態だったのだ。

実は不良馬場だったと考えてしまえば、優勝したのがサダムパテックというのも、さもありなんという感じだろう。サダムパテックの前走はその安田記念で、3ヵ月の休み明けながら1分37秒5で走破していた。今回は前走と同じ斤量58kgを背負っていたが、休み明け2戦目の上積みがあったのだろう、前走よりも時計を詰めて1分37秒1で差し切ってみせた。

サダムパテックマイルCSの勝ち馬だが、3歳時には弥生賞も制し、皐月賞でもオルフェーヴルの②着となっている。昨年に続いて②着となったミッキードリームも阪神芝2000mで行われた朝日CCの勝ち馬で、③着となったマジェスティハーツ新潟大賞典神戸新聞杯で②着となっているから、芝2000m以上の重賞で連対歴のあった馬が上位を占めたと言える。

今回、芝2000m以上の重賞で連対歴があったのは、サダムパテックミッキードリームマジェスティハーツゲシュタルトダイワマッジョーレの5頭だけ。2000m以上の距離でも好走できるようなスタミナ特殊な馬場適性が求められたのだろう。中京記念「サマーマイルシリーズ」の初戦という位置付けだが、今回に限っては「サマー2000シリーズ・特別編」としてもいいようなレースだった。

「サマーマイルシリーズ」は、2戦目が8月17日の関屋記念で、最終戦が9月14日の京成杯AHになる。サダムパテックG1馬で、今回でもトップハンデの58kgを背負っていたのだから、京成杯AHに出るとしたら、いったいどれだけのハンデを課せられるのだろう?

ただ、そんな心配は必要ないようだ。サダムパテックは、今後は一度放牧に出て、秋のマイルCSを最大目標とするとのこと。サマーマイルシリーズ王者を狙うことも、ましてや、「サマー2000シリーズ」に緊急参戦ということもなさそうだ。G3の舞台でG1馬の底力を見せてもらったので、今度は再びG1の舞台で輝く姿を披露してほしいものだ。