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新装・札幌の開幕を飾るレースにふさわしい好勝負だった
文/浅田知広、写真/川井博


スタンド改築のため2年ぶりの開催となった札幌競馬。昨年は函館の連続開催で、この時期あたりから芝コースは大変な馬場状態になっていたが、1年休んだ今年は絶好の馬場状態で……と思いきや、土日とも雨模様という、ファンにとっても残念な天気になってしまった。

ダート1700mで行われた日曜メイン・エルムSは、そんな天気の影響もあって不良馬場。しかし、出走メンバーは久々の札幌開催を祝うかのように実績馬がずらり。全13頭中、G1馬2頭を含む10頭が重賞勝ち馬という好メンバーで争われた。

そんな中、1番人気に推されたのは数少ない重賞未勝利馬・ジェベルムーサだったが、前々走のマーチS②着など、全10戦④着以内と底を見せていない新勢力の4歳馬。続く2番人気は、こちらもダートでは9戦して掲示板を外していない5歳馬・ブライトライン。前走はドバイに遠征し、ゴドルフィンマイルで⑤着と上々の成績を残してきた。

この2頭が単勝3倍台の人気を集めたものの、なにせ重賞勝ち馬10頭。個々に挙げていけばキリもない中で、レース序盤から存在感を示したのは、このレース5年連続出走(③③④②着)となるエーシンモアオバーだった。ゲートこそひと息ながら押っつけて先手を奪っていった。

そして、前走・平安Sを12番人気で制したクリノスターオーが2番手につけ、3~4番手に昨年(函館代替)の覇者・フリートストリートと、一昨年の覇者・ローマンレジェンド。向正面ではおのおの1馬身ほどの間隔で、こういった実力馬たちが先導する形になった。

前半の700m通過は41秒7、900mは53秒8……、と言っても700mや900mではピンと来ないが、同じ札幌開催でエーシンモアオバーが逃げた10~12年の700mが良馬場で42秒6、42秒4、41秒9。今年は脚抜きの良い不良馬場で41秒7なら、決して速いペースではない。

こうなると苦しいのが1番人気に推されたジェベルムーサだ。今回は課題のゲートこそ互角に出たものの、特に作戦を変更することはなく、いつも通りの後方待機。3コーナー手前から動いて中団まで進出したものの、前もまったくペースが落ちず、4コーナーでは内に並んだ2番人気のブライトラインともども、逆に突き放され気味になってしまった。

一方、前では3~4コーナー中間でエーシンモアオバーを交わしてクリノスターオーが先頭へ。これをマークしてローマンレジェンドインカンテーションが続いたが、4コーナーでインカンテーションが脱落。直線はクリノスターオーローマンレジェンドによる一騎打ちとなった。

勢いでは明らかに外のローマンレジェンドだったが、少々もたれ気味のところもあり、一気に交わすほどの勢いはなし。それに加え、内のクリノスターオーマーチSがフロックではないことを証明せんとばかりにしぶとく食い下がった。

結局、最後はローマンレジェンドが底力を見せてクリノスターオーをねじ伏せたが、新装・札幌の開幕を飾るレースにふさわしい好勝負だったと言えるだろう。

優勝したローマンレジェンドは、一昨年のジャパンCダートの1番人気馬(④着)で、続く東京大賞典でG1制覇。しかし、その後は勝ち鞍がなく、特にここ2戦はジャパンCダートが⑬着、そして東京大賞典は⑥着でも勝ち馬から3秒0差と、本来の力をまったく出せずに終わっていた。揉まれると良くない面もあるようだが、G3に戻った今回は前々からの競馬で、7ヵ月ぶりの実戦でも実績通り。秋に繋がる勝利となった。

そして、惜しくも敗れたクリノスターオーは、これでオープン入り後⑤⑤⑯①②着。⑯着大敗のアンタレスSだけは中団からの競馬で、こちらも前々で運べさえすれば大崩れがない。今回は相手より1キロ軽い斤量だったが、その相手はなにせG1馬。外に併せられてからも最後までしぶとく食い下がり、③着に5馬身差をつけた内容からも地力強化は明らか。今後、さらに相手が強化されても侮れない存在だ。