今年は「中京記念組」クラレントが道悪を克服して重賞5勝目
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
かつて、この時期のマイル重賞といえば
関屋記念と
京王杯オータムH(現京成杯オータムH)が1セット。その後、マイルCSまで間隔が開いており、前後する距離の
毎日王冠や
スワンSあたりも含めて
「マイル路線」という印象があった。
しかし、00年より
富士Sが10月のマイル重賞になり、さらに12年からは7月末に
中京記念が移動して1600m戦に。こうして
安田記念後から、本当にマイル戦ばかりの
「マイル路線」が形成された。このうち、
中京記念、
関屋記念、そして
京成杯オータムHの3競走が
サマーマイルシリーズに指定され、この
関屋記念はその2レース目になる。
しかしこの2年間、
関屋記念に出走した
中京記念組は
[0.1.0.15]。唯一馬券に絡んだ
エーシンリターンズ(12年②着)も
中京記念では⑭着大敗を喫しており、同じ左回りのマイル戦ながら、今のところは
関連性の薄いレースになっている。
とはいえ、比較的出走しやすい中2週で行われることもあって、今年は
中京記念上位8頭のうち、勝った
サダムパテックと⑤着
オリービンを除く6頭が駒を進めてきた。
中でも、最上位の2番人気に推されたのが
中京記念③着の
マジェスティハーツ。さらに同⑧着の
クラレントが4番人気、同⑦着の
サトノギャラントが6番人気と続き、
中京記念で5番人気以内に推されていた馬がこの組の上位人気を占めた。一方、
中京記念最先着(②着)の
ミッキードリームは13番人気。要するに、
中京記念の結果はまったくアテにされていない、という人気である。
これに対するのが、
安田記念をはじめとする前走G1組。こちらは過去10年で
[3.1.1.9]で
連対率28.6%と、
中京記念組に比べれば圧倒的に優位である。中でも、1番人気に推された
ダノンシャークは昨年の古馬マイルG1連続③着で、今年の
安田記念も④着の実績馬。そして3番人気の
エキストラエンドは
安田記念⑫着ながら、4~2走前のマイル重賞で
①②③着と実績を残しており、G3で巻き返しが期待された。
ところが、スタートでその
エキストラエンドが大きく出遅れ。さらに、内の
サトノギャラントもまったくダッシュがつかず、レース開始早々に
安田記念組、
中京記念組それぞれ1頭脱落かという、波乱の幕開けとなった。
その一方、前では1番人気の
ダノンシャークが好スタートから3番手あたり、そして
クラレントや
マジェスティハーツも好位を追走。いずれも少々掛かり気味だったが、もともと中団から前あたりで結果を出している
ダノンシャークや
クラレントはともかく、末脚勝負も多い
マジェスティハーツは多少なりとも
不安を感じる走りだった。
そして終わってみれば、そんな序盤のレース運びがそのまま結果に結びつくことになった。直線に向くと、
ダノンシャークがまず抜け出し、残り200mでその外に並んだのが
クラレント。そして、出遅れた2頭ではまだマシだった
サトノギャラントも、なんとかここに加わるまで盛り返したものの、ゴール前で伸びきれずに③着まで。結局、いつも通りに前々で運んだ
「安田記念組」ダノンシャークと
「中京記念組」クラレントの争いに。最後は外の
クラレントが内の
ダノンシャークを競り落とし、
5つ目の重賞タイトルを手中にした。
不良馬場の
安田記念が⑩着、そして稍重でも時計のかかった
中京記念が⑧着だった
クラレント。今回も道悪必至だっただけに、特に重馬場発表だった午前のうちは、
中京記念を度外視して上位人気に推されるのもどうかと思われた。しかし、そこから回復過程の稍重馬場で迎えられたレースの勝ち時計は
1分32秒5と、ほぼ良馬場の例年並み。重馬場で③着だった
東京新聞杯も1分33秒台の決着で、このくらいの馬場なら問題はなさそうだ。
今後の課題は右回り。2歳時の
デイリー杯2歳S優勝、そして昨年の
阪神C③着の実績はあるものの、昨年の
G1・マイルCSは4番人気で⑪着。
3歳以降の4勝はすべて左回りで挙げたものだ。ただ、テン乗りだった
田辺騎手は優勝騎手インタビューで
「マイル以外でも」と述べており、左回り・東京の
天皇賞(秋)という選択もあるかもしれない。昨年の
エプソムC勝ちのほか、
毎日王冠で0秒1差③着と、東京芝1800mまでは克服済みだ。
一方、惜しくも競り負けた
ダノンシャークは、勝ち馬より1キロ重い58キロの斤量を考慮すれば
十分の内容だろう。こちらは昨年の
マイルCS③着馬。順調なら今年も好勝負が期待される。