現時点で今回の展開なら力が一枚上だった
文/編集部(W)、写真/川井博
驚きの末脚再び、である。
雨が降りしきる中、稍重で行われた6月28日の
東京5R(2歳新馬、芝1600m)には、自分のPOG指名馬
クラシコが出走していた。1番人気の支持を集めていたので、期待してレースを観ていて、直線で馬場の中央から手応え良く進出してきた時は
「やった!」と思ったのも束の間、大外からグイグイ伸びてきたのが3番人気
ブライトエンブレムだった。
レースVTRを見返すと、出遅れて後方を追走している
ブライトエンブレム。4角でも12番手と後方に位置していたが、大外に持ち出されるとエンジン全開で、内の各馬をあっさりと抜き去ったのだった。
相手が悪かったとしか言いようがない、そんな
クラシコの初陣だった。
その
ブライトエンブレムが
新馬戦に続いて手綱を取る
田辺騎手とともに参戦。東京芝1600mから札幌芝1800mに舞台を移し、小回りコースへの対応、課題のゲートが注目されたが、
新馬戦と同じく出遅れてしまい、
不安を感じさせる幕開けとなった。
今回は
新馬戦よりも格段にメンバーが強化されていて、加えて小回りコース。その中での
序盤のロスは致命的とも思えたが、
ブライトエンブレム&
田辺騎手は慌てず騒がずじっくりと後方から。
12秒0~12秒4という平均して速いラップが刻まれ、道中でペースが緩むところがなくて後方から押し上げにくい展開の中、
ブライトエンブレムは馬群の外、外を回りながら、どちらかと言えば軽快に、3~4コーナーでポジションを押し上げていく。
直線半ば、逃げていた
ミッキーユニバース、2番手
アルマワイオリを交わして先頭に躍り出た3番手追走の11番人気
マイネルシュバリエ、そこに馬体を併せていった7番人気
レッツゴードンキ、その人気薄2頭をあっさりと差し切ったのが5番人気
ブライトエンブレムだった。
出遅れて外を回る
ロスがありながら、最後方から全馬をまとめて差し切り。
波乱の決着に
衝撃感を上乗せし、デビューから
無傷の2連勝での重賞タイトル奪取となった。
田辺騎手はレース後の勝利騎手インタビューで
「外、外を回るロスがありながら終いまで止まらずに走ってくれました。力がないとできないです」と話していたが、
現時点で今回の展開(持続力勝負)なら力が一枚上、そう言っても過言ではないレース内容だったのではないだろうか。
1番人気
ミッキーユニバースは⑦着、2番人気
フォワードカフェは⑤着、3番人気
スワーヴジョージは⑩着で、1800mに替わった97年以降では98年以来2回目の
「上位人気3頭が馬券圏外」という、
札幌2歳Sとしては珍しい
上位人気馬総崩れの波乱となったが、馬券圏内を独占した
新潟2歳Sに続き、
関東馬の活躍(ワンツー)も印象的だった。
ちなみに、00年以降で
札幌2歳Sを制した関東馬は
サクラプレジデント(02年)、
ストーミーカフェ(04年)、
ロジユニヴァース(08年)、
コディーノ(12年)で、
ダービーを制した
ロジユニヴァースをはじめ、
4頭ともその後にG1で連対している。このあたりにも
札幌2歳Sが
出世レースと言われる所以が垣間見えるだろう。
ゲートが
不安定だったり、過去2戦の上がりはメンバー中最速ながら35秒台で、速い上がりを求められた時にどうかなど、
未知数な面も多い
ブライトエンブレムだが、父は
ロジユニヴァースと同じ
ネオユニヴァース、母は
秋華賞馬ブラックエンブレムと、血統背景からもG1に向けて期待が高まるというもの。今後はクラシック戦線を賑わす存在として、より一層
輝きを放ってほしい。
一方、97年以降、キャリア1戦で③着以内に好走した牝馬は
マイネヴィータ(01年②着)、
アズマサンダース(03年②着)、
アヴェンチュラ(10年②着)、
アドマイヤセプター(10年③着)、
レッドリヴェール(13年①着)で、
レッドリヴェール(
阪神JF)と
アヴェンチュラ(
秋華賞)はG1を制し、
アズマサンダースは
桜花賞で②着に好走している。
このデータに当てはまる
レッツゴードンキも今後の活躍が期待できる1頭だろう。近親には
09年エリザベス女王杯を11番人気で逃げ切って大波乱の立役者となった
クィーンスプマンテがいて、長い目で見守っていくのが良さそうだ。