馬場状態も調教時計も、決めつけた見方は良くないのだろう
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
今年の
京成杯AHは
新潟競馬場での施行となり、4週前の
関屋記念と同コースだったため、例年以上に
適性を見極めるのは
楽だったように思われた。ただ、今回はハンデ戦で、前日の土曜日(13日)には降雨に見舞われたため、またも
馬場のジャッジが難しくなった。今年の
京成杯AHは、馬場の読み方がひとつのポイントであっただろう。
土曜日夜の時点で新潟競馬場の芝コースは
重馬場となっていたため、水はけの良い新潟競馬場なら、日曜日朝の時点で
稍重馬場→レース施行時は
良馬場になるだろう、と思っていた。日曜日の午前に一雨あったものの、14時前には
良馬場となり、読み通りに推移した。
良馬場であれば、
稍重馬場だった
関屋記念の時よりも
決着時計は速くなりそうなものだ。ところが、実際はそうはならなかった。
関屋記念は
稍重馬場ながら
1分32秒5で、
京成杯AHは
良馬場で
1分33秒3。もちろん、道中のペースが遅かった影響が大きいのだろうが、必ずしも
馬場の含水率と
走破時計が一致しない良い例にもなったと思う。ハンデ戦に替わり、決着タイムが
0秒8も遅くなったことで、②着以下に逆転現象が起こった。
②着に入った
ブレイズアトレルは穴ぐさ💨に指名したが、そのコメントにも記した通り、軽ハンデに加えて、
「少し時計のかかる良馬場」という条件が合ったのだと思う。優勝した
クラレントが通ったところよりも内に進路を採った馬は伸びきれなかったので、馬場の中央を選択した
津村騎手のファインプレーもあった。
02年に
京成杯AHが新潟競馬場で行われた時は、決着タイムが
1分31秒9(良)だった。これは、6週前に同コースで行われた
関屋記念(1分31秒8・良)とほとんど同じで、当時は馬場差が
限りなくゼロだったと言える。
一方、今年は週末に
雨に見舞われることが多く、また、開催前に
エアレーションと
シャッタリングが実施された影響もあるのかもしれない。先週あたりから
新潟芝の時計は少しかかるようになっている。
新潟芝は8月初旬からずっと
Aコースを使われていて、このまま10月5日の
スプリンターズSまで続く。
スプリンターズSも、おそらく
馬場の巧拙や
進路の差、すなわち
枠順が結果に影響を与えると思われる。来週以降も
時計の出方や
馬場の内外の差には注意を払っておきたいものだ。
関屋記念→
京成杯AHと連勝を決めた
クラレントに関しては、斤量が重くなることに加えて、
最終追い切りの時計がかかったことをどう見るかがポイントだったと思う。
今回、
クラレントは最終追い切り(9月10日)が栗東坂路で行われ、800mが
55秒1というタイムだった。管理する
橋口調教師は、予定していたタイムとズレたことに対して
「不満」と口にしていたし、実際、
クラレントは栗東坂路での最終追い切りで
54秒以上かかっていた時はレースで人気を裏切っていたので、調教を重視する人には
格好の餌食になったようだ(過去に54秒以上かかっていた時は、11年
東スポ杯2歳S・2番人気13着、12年
キャピタルS・2番人気4着、12年
阪神C・4番人気5着だった)。
ただ、
橋口調教師は、追い切り時計にズレが生じたものの、
「馬の体調が悪いわけではない」とはっきり言っていた。このような場合、何でも正直に話してくださる調教師・厩舎スタッフの存在は
本当にありがたいものだ。そして、
クラレントは
関屋記念の時と同じ馬体重(494kg)で登場し、その
好調さを証明する走りを見せた。
私自身は、馬の調教を見ても
調子が良いのか悪いのか見分けがつかないので、
橋口先生の言葉を信じただけですが(笑)、今回の件は、数字だけで判断してはいけない証左でもあると思う。
馬場状態と
時計の関係についても、
調教時計の判断についても、
決めつけた見方は良くないということだろう。
掲載したゴール前写真にあるように、
クラレントはいつも
胸を張るようにして駆けて行くが、あのスタイルで
東京や
新潟の外回りを押し切るのだから、凄いものだ。
クラレントは3歳以降の連対をすべて
左回りで記録しているが、京都芝外1600mの
デイリー杯2歳Sを制しているのだから
右回りがダメとも思えない。昨年の
マイルCSは4番人気で⑪着に沈んだが、あの時は馬体重が
12kg増(502kg)だった。今夏の好調さが続くなら、あの胸を張った走りが
淀の舞台で最後まで見られても不思議ないのではないだろうか。