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“大物感”が“大物”に変わる日が訪れることを楽しみに待ちたい
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也


大相撲秋場所では、新入幕の逸ノ城が1横綱2大関を破るなど13勝を挙げ、千秋楽まで優勝争いに絡む奮闘を見せた。新入幕場所での優勝となれば100年ぶりとのことだったが、白鵬が直接対決で勝利するなど、大横綱が“壁”として立ちはだかったのである。

横綱・鶴竜戦、大関・稀勢の里戦では立ち合いで変化したことに落胆するファンもいたようだが、この場所を大いに盛り上げたことに違いはない。白鵬との一番で胸を合わせ時、身長192cm、体重199kgという恵まれた体格からは“大物感”を漂わせていたし、新星誕生を強く印象付けた。

一方、このシリウスSは、クリノスターオーというダート界の新星誕生を印象付ける結果となった。

クリノスターオーアルデバランS⑤着、マーチS⑤着、アンタレスSに至っては控えたことが裏目に出てシンガリ負け(⑯着)を喫するなど、逸ノ城とは違ってOP入り直後は成績が振るわなかった。「OP通用はもう少し時間がかかるかな」と感じた競馬ファンもいたのではないだろうか。

そんな競馬ファンの心理が反映されたのか、続く平安Sは単勝74.9倍の12番人気という低評価だったが、これを覆して勝利を収めたところから成績が一気に好転する。

エルムSローマンレジェンドと一騎打ちを演じながらアタマ差②着と惜敗し、ここは横綱(G1馬)が“壁”となって立ちはだかったが、③着以下を5馬身ちぎる好内容。平安Sの激走がフロックではないことを証明して迎えたこのシリウスSは堂々の1番人気に推されたのである。

レースは大方の予想通り、サトノプリンシパルが逃げ、クリノスターオーが2番手につけるという形。この本命馬をピッタリとマークしてきたのが3番人気ナムラビクターで、外から被せてクリノスターオーにプレッシャーを与える。

外から被されて勝負所でペースアップした時に若干置かれ気味となり、以前のクリノスターオーならそのまま後退しても不思議ない状況だったが、「一度被された後に馬に火がついた」というレース後の幸騎手のコメントしかりで、直線で盛り返してサトノプリンシパルナムラビクターの間をこじ開けるように伸びる。

1000m通過63秒2というスローペースでレース上がりが35秒8と速くなり、中団から差したトウシンイーグルが③着に食い込んだものの、終わってみれば先行有利な展開となったが、クリノスターオーは57.5kgの重いハンデも休み明け(2ヵ月半ぶり)もあっさりとクリア。

②着ナムラビクターがトップハンデ58kgを背負い、休み明け(4ヵ月半ぶり)で16kg減と本調子でなかった可能性もあるが、「4コーナーやゴール前でも遊んでいた。着差(3/4馬身差)以上に強い内容だった」(幸騎手)ということで、530kgという雄大な馬体を誇る見た目だけではなく、レースぶりにも“大物感”を漂わせながら1番人気に応えての重賞2勝目となった。

逸ノ城は九州場所で最速での新三役が濃厚とされるが、クリノスターオーもこのシリウスSの勝利でダート界の関脇、小結クラスにランクされる感じだろうか。

クリノスターオーはまだG1、G2に出走経験はないが、今度はダート界の横綱、大関クラスと対戦する機会も増えてくるはず。そこで一体どんなパフォーマンスを見せるのか。

エルムSではローマンレジェンドの胸を借りた形だが、この時のローマンレジェンドは7ヵ月ぶりでクリノスターオーより1kg重い斤量58kgを背負っていた。本調子の横綱クラスを破るならもうひと皮剥ける必要がありそうだが、そこはクリノスターオーの本気度次第か。

逸ノ城クリノスターオーもまだ伸びシロがありそうで、その分、周囲の期待も高まるというもの。“大物感”という文字から“感”が取れる日が訪れることを楽しみに待ちたい。