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どうにも台風に翻弄された一戦だった
文/浅田知広、写真/森鷹史


京都大賞典といえば、以前は単勝1倍台の馬が多く勝つ、堅いレースという印象があったものだ。しかし10年ほど前から変化が見られ、昨年など11番人気のヒットザターゲットが勝って単勝万馬券(166.2倍)、3連単361万9290円の大波乱だった。

そんな結果を受けての今年、さてどうなるかと思ったら、馬券よりも先に天気が大荒れ。2週連続の台風襲来で1日延期である。どんな馬場で行われるのかが掴みづらく、加えて仕事や学校がある方の多い平日開催。さらに夜間発売も行われないなど、事前に予想を立てたり馬券を買うには不自由なレースになってしまった。

ましてや今年は、馬場次第で予想も大きく変えたくなるようなメンバー構成だった。1番人気が予想されたトーセンラーは、ダービー⑪着、日経賞⑩着、そして安田記念⑭着と、重~不良は3戦すべてふた桁着順と明らかに道悪は苦手だ。

続く2番人気は、重馬場だった昨年のエリザベス女王杯を「上がり34秒1」で制したメイショウマンボ。同じ重馬場でもローズSでは④着に終わっており、本当に道悪巧者かどうかは怪しいところだ。

さらに3番人気ラストインパクトも切れる脚を使うタイプ。逆にそれ以下の各馬は晴雨兼用、あるいは道悪巧者と思われる馬も多く、もし道悪が残れば昨年同様に波乱も期待できそうな印象で、さて、どんな穴馬券を買おうかと、あれこれ思いを巡らせていた。

ところが、そんな穴党歓喜の重~不良馬場はどこへやら、朝の段階から芝コースは稍重発表。そもそも絶好馬場の京都開幕週、そしてレースまで半日近くあるとなれば、もう馬場の心配などまったくない雰囲気で、昼には良馬場に回復していた。

そんな中で行われたレースは、トゥザグローリーが先手を奪い、前半の1000m通過は60秒7。この回復した馬場を考えれば速くはなく、ある程度は予想されたペースだ。しかし、3コーナー手前の登りでトゥザグローリーが後続を引き離しにかかると、これを2番手のタマモベストプレイが追いかけ、後続はみるみるうちに離れていったのだった。

台風のせいで馬場状態に気を取られていたが、馬場を問わず長距離戦でレース展開がポイントになるのは言うまでもない。その考えがおろそかになった中でも、まだタマモベストプレイの早めの仕掛けは想像された範囲内。しかし今回は、トゥザグローリーともども後続を離して4コーナーを通過する展開だ。

しかも、人気のトーセンラーは馬群の中で動き出せるような態勢ではなく、中団の外に出したメイショウマンボも手応えひと息。そして、4番人気・当方の◎でもあったヒットザターゲットはさらに後ろ。これでは昨年同様の差し切りなど望めない。

そんな展開を味方につけたのは、上位人気の中で唯一前々で運んだラストインパクトだった。前も後ろも気になる難しい3番手とも言えたが、そのまま馬なりで坂を下ると、前との差はじわじわ詰まり、4番手以下とは2馬身ほどの差をキープしたまま直線へ。ここまで来れば、あとは前2頭を捕らえるのみだ。

とはいえ、今回のメンバーでラストインパクトが先着を許した経験があるのは、その「前」にいたタマモベストプレイ1頭だけ(きさらぎ賞神戸新聞杯)。渋太さが売りのタマモベストプレイにとっても絶好の展開だっただけに、ラストインパクトも差し切るまでかなり手こずったが、最後はきっちり交わし切ってふたつ目の重賞タイトルを手中にした。

ひとつ目のタイトル、小倉大賞典は向正面まくりという「奇手」でモノにしたラストインパクトだったが、今回は本来の形での重賞制覇。折り合って運べればいい末脚を繰り出せる馬だけに、これを足がかりに、叔父のナリタブライアンにどこまで近づいていけるのか注目だ。

一方、惜しくも敗れたタマモベストプレイも、これで3歳春以来となる連続連対。短距離型ばかりだったタマモ〇〇〇プレイ兄弟の中では異色のタイプだが、ステイゴールドの近親でもうひと皮むけてくる可能性もあるだろう。

いずれにしても、少々乗り難しそうなタイプが①②着を占めた今年の京都大賞典。そんな特徴も踏まえ、馬場など気にせず展開を詰めて考えられれば、馬券の当たりハズレは別にして、一層楽しめたレースだったはず。しかし、どうにも台風に翻弄された一戦だった。本格的なG1シーズンの開幕も迎えるだけに、今年の台風はこれで最後にしてもらいたいものだ。