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これだけの末脚は、相当な力がなければ繰り出せない
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


先日、プロ野球のクライマックス・シリーズが開催され、セ・リーグでは阪神タイガースが第1ステージで広島カープ、第2ステージで読売ジャイアンツを下し、日本シリーズへ進出した。ちなみに、自分は虎党なので非常に嬉しい(笑)。

その第1ステージでの話。広島ファンの友人(※「馬迷男」の八木さんではありません)に「ウチは昨年とほぼ同じオーダーなんだから、負けるはずないだろ!」と言われた。

確かに、それぞれのクライマックス・シリーズ第1戦におけるカープの先発オーダーは、野手8人のうち6人が昨年と同じ。昨年は広島が阪神に2連勝したわけだから、今年も、というのが彼の理論だった。

ところが今年は1戦目で阪神が勝利、2戦目は引き分けで、規定によりレギュラーシーズンで上位の阪神が第2ステージに進出を決めた。悔しがる友人に、「そっちは去年と同じでも、ウチは去年からゴメスは加入したし、福留は復調したし、去年と同じじゃないからなあ」と言った自分は性格が悪いと思う(笑)。

なぜこんなことを思い出したかというと、昨年の富士Sに出走した馬のうち、勝ち馬のダノンシャークを含めて6頭(ほかにシャイニープリンス、ブレイズアトレイル、レッドアリオン、インパルスヒーロー、ダノンヨーヨー)が今年も出走していたから。さらに、昨年は1番人気に推されたダノンシャークが今年も1番人気で、3歳馬を迎え撃つ……という構図も昨年と同じとなった。

ところが、クライマックス・シリーズと同じように、結果は違っていた。昨年このレースに5歳で出走したダノンシャークは3歳馬を含めた他馬を一蹴したが、今年は3歳馬ステファノスに差し切られ、昨年下したシャイニープリンス(今年は②着)、レッドアリオン(同③着)にも先着を許してしまった。

ダノンシャークももう6歳で、衰えもあるかというとそんなことはなく、今年の走破タイムは昨年と同じ1分33秒5。前走の関屋記念で58kgを背負って②着に好走しているので、力の衰えはないと見たい。

ではなぜ敗れたのか、やはり敗因は展開と、勝ったステファノスの強さに求めるべきだろう。

今年の前半800m通過が47秒6で、昨年は47秒8。どちらもスローペースの範疇だが、昨年は道中でうまく外に持ち出せたのに対し、今年はレース後にダノンシャーク騎乗の福永騎手「左右からつつかれて力んだ」とコメントしたように、息を入れられずに先行馬には厳しい流れだったのだろう。

そして、スローペースの中を、末脚鋭く差し切ったステファノスもまた強かった。前走のセントライト記念は休み明けもあって伸び切れなかったが、これで重賞初勝利。これまで10戦して掲示板を外したことがなく、さらに強い相手でも相手なりに走れそう。

ステファノス今回記録した上がりは32秒9。90年以降の東京芝1600m重賞で上がり32秒台で勝った馬は1頭しかおらず、05年東京新聞杯ハットトリックが記録した32秒9のみ。坂のあるコースのマイル重賞に対象を広げても、今年の桜花賞(阪神)を制したハープスターの32秒9のみだった。

ハープスターの活躍は言うに及ばず、ハットトリックも後にマイルCS香港マイルを制している。これだけの末脚は、相当の力がないと繰り出せないということなのだろう。

ステファノスはひと息入れるかを含め、今後はまだ未定とのことだが、将来に大きく展望が開けたのは間違いない。主役不在のマイル路線に風穴をあけられるか、今後に注目したい。