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前走とはまた別の意味で、強烈なレースを見せられた
文/編集部(M)、写真/川井博


今年で3回目を迎えたアルテミスS。昨年は中団馬群の中から差したマーブルカテドラルが制し、一昨年は最内枠スタートから内を捌いて伸びたコレクターアイテムが優勝した。この2頭の上がり3Fは33秒9で、末脚がしっかりしている馬でないと勝てないレースであることが分かる。

ただ、その一方、位置取りが後ろすぎると良い脚で追い込んでも届かないケースが目立ち、第1回の一昨年では、後の桜花賞馬アユサンがメンバー最速の上がり33秒5で4角16番手から追い込んできたが、半馬身及ばず(②着)。昨年もセレナビアンカ4角16番手から33秒9の上がりを使うも、⑤着までだった。

ココロノアイは新潟芝外1600mの前走で初勝利を挙げた馬で、4角15番手から大外を回って上がり33秒3の脚で突き抜けるという強烈なレースぶりだった。しかし、それはまさに“アルテミスSでは突き抜けられないパターン”で、今回は危険に感じていた。過去2戦とはジョッキーが替わっていたが(戸崎騎手横山典騎手)、この鞍上ならなおのこと最後方追走で追い込みに賭けてくる乗り方をするのではないかとも思っていた。

そんなわけで、レースは【穴ぐさ💨・A】に指名したトーセンラークに注目しながら見たのだが、そのトーセンラークは前走からゲートの出が良くなり、今回も好スタートを決めて好位のインに位置した。道中のペースは上がらず、しめしめと思って眺めていたら、向こう正面でココロノアイが引っ掛かって上がって行く姿が映し出された。ココロノアイは3~4番手まで行ってようやく止まった。

横山典騎手が道中で“持っていかれる”シーンというのはなかなかお目にかかれない。だから、珍しいなと思っていた。と同時に、いくらペースが遅くても、道中であれだけ掛かって脚を使ってしまったら最後まで持たないだろう、とも感じていた。だからこそ、直線に入ってから分があるのはトーセンラークの方だと思っていた。

残り300mを切った辺りでもトーセンラーク吉田隼騎手の手応えは良く、これは勝ったか!?と力が入った。ところが、外目から渋太く脚を伸ばしてくる馬がいる。なんとココロノアイだった。てっきり直線に入ったら伸び脚をなくすと思っていたココロノアイが盛り返してきていた。というか、しっかり伸びている!

あれだけ掛かっていたのに、ココロノアイにはまだ余力があり、坂を登ってからさらに脚を伸ばしてきた。トーセンラークも内から伸びて抵抗したが、突き放されてしまう。最後に1番人気のレッツゴードンキが激しく追い込んできたが、ココロノアイはこれもハナ差凌いでゴールを駆け抜けた。未勝利勝ちした前走とはまた別の意味で、強烈なレースを見せられた。

荒削りと言ってしまえばそれまでだが、これは相当な能力とスタミナがないとできない芸当だろう。曾祖母が桜花賞を8馬身差でぶっちぎったマックスビューティで、そこにリアルシャダイデインヒルを掛け合わされ、さらに父にはステイゴールドが配合されている。確かに爆発力を多分に秘めたこの血統なら、これだけの走りを見せられても驚けないか…………いや、驚くでしょ(笑)。とにかく、現時点では器の大きさを測りかねるレースぶりだった。

レース後、横山典騎手が語ったように「課題がある」のは明白だろうが、見ている側としては、これほど能力で圧倒する馬というのは楽しいものだ。アイルランドTを逃げ切ったエイシンヒカリもかなりの荒削り型だが、今回のココロノアイも同じくらいのインパクトを残したと思う。

曾祖母のマックスビューティオークスも2馬身半差で圧勝した馬で、前述したようにこの馬はリアルシャダイの血も内包しているから、スタミナは豊富なはずだ。スピード値もかなり高いことをここ2戦で示しているから、桜花賞でもオークスでも夢は広がる(いや、ダービーでも!?)。

今後は、ある程度の短所には目をつむって長所を伸ばしていくのか、それとも、課題の克服に主眼を置かれて調教を積んでいくのか。これは厩舎の腕の見せ所だろう。“破天荒な少女”の今後が非常に楽しみだ。

レッツゴードンキは上がり33秒6で追い込むも惜しい②着で、結果的に“アルテミスSでは突き抜けられないパターン”になってしまったが、この馬も道中では行きたがる面を見せていたので、それを考えれば強い内容だった。

こちらは父キングカメハメハ×母父マーベラスサンデーという配合だが、やはり母系にリアルシャダイが入っていて、それが最後までヘコたれない伸び脚につながったのだろう。過去2戦が札幌で、今回は初の左回り&U型コース、さらには関東への長距離輸送もあったのだから、収穫は少なくなかったはずだ。阪神JFで有力視されてもいいだろう。

過去2回のアルテミスSの優勝馬はどちらも社台Fの生産で、それを意識されたか、今回、レッツゴードンキ以外の上位人気には社台グループの生産馬が推されたが、軍配は日高の馬に上がった。社台グループの生産馬は、フローレスダンサーの④着が最高着順だった。

優勝したココロノアイは、浦河の酒井牧場の生産になる。酒井牧場の生産馬によるJRAの重賞制覇は、ビーナスライン06年函館スプリントS以来になる。横山典騎手酒井牧場の生産馬で重賞を制したのは、あのホクトベガ以来になった。