次はひと桁馬番でのG1で、その走りを見たい
文/編集部(M)、写真/森鷹史
「メインレースの考え方」では、
【◎フェイムゲーム ◯クリールカイザー ▲アドマイヤケルソ】としていて、
その順番通りの決着になったか!?と思ったら……。最後に
アドマイヤケルソは交わしていなかったですかねぇ?
写真判定をもう一度やり直しませんか? やり直しませんね。残念です……。
優勝した
フェイムゲームは単勝2番人気(4.9倍)だったが、1番人気(3.9倍)の
ホッコーブレーヴ、3番人気(7.0倍)の
スーパームーン、4番人気(7.7倍)の
クリールカイザーはいずれも今流行の(?)
重賞未勝利馬で、初タイトルを狙う馬たちに包囲網を敷かれた感じだった。
レースでも
フェイムゲームは中団のインを走り、文字通り、
重賞初制覇を狙う馬たちに囲まれていたが、これは
この馬の好走パターンだった。
フェイムゲームは実に
枠順に忠実な馬で、
ふた桁馬番だと7戦して③着以内がないが、
ひと桁馬番だと[3.0.1.1]で掲示板を外したことがなかった。馬群の中に入ると脚が溜まるし、
集中力も続いて
闘志も湧くのだろう。今回は
2枠3番という好枠を引き当てたことがいちばんの勝因ではなかったかと思う。
先に抜け出した
クリールカイザーを交わし、
フェイムゲームは最終的に
2馬身半差を付けたが、これは
アルゼンチン共和国杯ではなかなか珍しいことだ。①着と②着の差が
2馬身以上付いたのは、01年(勝ち馬
トウカイオーザ・2馬身半差)以来で、90年以降ではその年しか該当例がない。89年には
クリロータリーが3馬身差で制しているが、同馬は
ハンデ53kgで、
トウカイオーザは
55kgだった。
90年以降の
アルゼンチン共和国杯で、ハンデ57kg以上で優勝した馬は5頭だけで(00年
マチカネキンノホシ57.5kg、05年
サクラセンチュリー57.5kg、06年
トウショウナイト57.5kg、09年
ミヤビランベリ57.5kg、10年
トーセンジョーダン57kg)、この中で②着との差が
1馬身以上付いたのは09年
ミヤビランベリ(1馬身差)と10年
トーセンジョーダン(1馬身3/4差)だけ。今回の
フェイムゲームは
ハンデ57kgで
2馬身半差を付けたのだから、
快挙と呼ぶに相応しいだろう。
ハンデ57kgで1馬身3/4差を付けた10年の
トーセンジョーダンは、ご存知の通り、その後に
天皇賞・秋(11年)を制し、
ジャパンCや
天皇賞・春でも好走している。図らずも、
トーセンジョーダンと
フェイムゲームは、どちらも父系に
トニービンの血を持ち、母系に
ノーザンテーストの血を持っている。今回の勝ちっぷりを目の当たりにすれば、
フェイムゲームもG1で……と夢想することはあながち外れてはいないだろう。
フェイムゲームはこれまでに
G1に3度挑戦していて、⑫着(
皐月賞)、⑥着(
天皇賞・春)、⑥着(
宝塚記念)という結果が残されている。
G1では[0.0.2.12]でワンパンチが利かなかった兄
バランスオブゲームを引き合いに出されて、
フェイムゲームも
「G1では足りない」ように言われかねないが、決してそうは思わない。
G1に挑戦した3戦がいずれも
ふた桁馬番で、まだ
得意の枠順でG1に挑んだことがないこと。そして、
ハーツクライ産駒から何頭もの
G1馬が出ていること、母の父が
リボー系(アレミロード)で
G1で求められる底力も備えているように思うことがその理由だ。ハマれば
相当な力があることは、今回の結果が証明している。
レース後のインタビューで、鞍上の
北村宏騎手は面白いことをコメントしていた。
フェイムゲームは
「気持ちを前に向けさせることに苦労するタイプ」で、
「目標があった方が良い馬」だと。過去に
チークピーシズを装着したことがあるのは、それだけ前に気持ちを持っていくのに苦労したからなのだろう。
このコメントを聞いて、ふと思ったことがある。
「来年の天皇賞・春で、フェイムゲームは面白い存在になるのではないか?」ということだ。
なぜ
天皇賞・春なのかと言えば、同レースでは09年
マイネルキッツ、10年
ジャガーメイルという
ブリンカー装着の優勝馬が出ていて、気持ちを前に向けさせる工夫が必要な馬ほど最後まで
スタミナが保ち、
長距離戦で好戦するケースが見られるからだ。ちなみに、
ジャガーメイルはやはり父系に
トニービンの血を持っていて、
マイネルキッツは母の父が
サッカーボーイで、
フェイムゲーム(曾祖母
ダイナサッシュはサッカーボーイの母)は似た血統を持っている。
フェイムゲームは、おそらく来年の
天皇賞・春より前に
G1に再度挑戦することになるだろう。それがどの舞台かは分からないが、まずは
ひと桁馬番に入った時にどんなレースをするか、それを見てみたいものだ。今年の重賞2勝は
東京競馬場だが、3歳時には
京成杯も制していて
中山にも実績はある。
ある日突然、覚醒するのがハーツクライ産駒でもあるから、今後も侮らないようにしたいものだ。