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「11月のデイリー杯」組から今後、大活躍を見せるのは!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也


昨年までの10月上旬から、今年は11月中旬に繰り下がったデイリー杯2歳S。まだ「デイリー杯3歳S(芝1400m)」だった82年から93年にかけては11月に行われており、91年には名牝・ニシノフラワーが優勝。続く92年は、翌年の年度代表馬となるビワハヤヒデが制していた。また、敗れた馬にもナリタブライアン(93年③着)など後の活躍馬が多く見られ、単に「2歳G1と近い時期」という以上に重みがあった印象だ。

それから少しずつ施行時期が繰り上がった後、21年ぶりに11月に戻ってきた今年の一戦。今回のメンバーで大物候補といえば、アッシュゴールドだ。なんといっても三冠馬・オルフェーヴルの全弟。しかしオルフェーヴルの全弟だからこそ、将来に期待はしても目先の馬券は別、そんなシビアな目もあっての単勝2番人気の支持だろうか。

そのアッシュゴールドを抑えて1番人気に推されたのはナヴィオン。こちらも父ハーツクライで将来性はありそうだが、祖母はワンモアラブウエイ(93年小倉大賞典①着など)の半妹で、祖母の父がレジェンドテイオー(88年アルゼンチン共和国杯①着など)という渋さである。

そして3番人気はアルマワイオリで、こちらの祖母は、92年の阪神3歳牝馬Sを制したスエヒロジョウオー。そんな視点で見れば、先に挙げたアッシュゴールドの母の父も、90年代前半に大活躍したメジロマックイーン。なにか「21年ぶり」にふさわしい血統背景を持つ面々が、上位人気に推されていたと言えるだろう。「ダビスタ(91年~)で競馬をはじめました」といったあたりのファンなら、とても語ることが尽きそうもない。

そのダビスタといえば、ニンテンドー3DS対応の「ダービースタリオンGOLD」が12月4日に発売予定。それを思い出し「3DS購入資金を稼がなくては!」と思っていたら、学生時代からの友人は「子どもに3DSを買い与えたばかりで、ダビスタも買おうと思ってる」そうな。親子2代のダビスタライフ。こんなことも起きるのが「21年ぶり」である。

ともあれ、そんな3頭を含め今年は9頭立ての少頭数。レザンドゥオールがじわっと先手こそ取ったものの、前半の600m通過は36秒0と、予想された通りのスローペースでレースは進んだ。

こうなってしまうと、各馬とも折り合いをつけるのにひと苦労。ナヴィオンはなんとか我慢して中団まで控えたものの、アルマワイオリは終始掛かり加減。また、後方8、9番手だったタガノエスプレッソアッシュゴールドが道中で中団までポジションを上げるなど、入れ替わりの激しい展開になった。

しかし、基本的にはスローペースで、9頭立ての馬群は一団。内を突けば前が詰まる危険がある一方で、外に出せばその距離損が勝敗を分ける可能性もあり。馬群が一団ゆえに選択肢も限られるという、少々やっかいな態勢で4コーナーを通過した。

この展開に、悪い意味ではまってしまったのが、内で包まれた1番人気のナヴィオンだった。残り200mを切ってラチ沿いから抜けてはきたが、③着確保が精一杯。昔のダビスタなら前が開いた瞬間に爆発しそうだが、実際の競馬でレースの上がりが34秒0(自身33秒8)では致し方ない。

そんなナヴィオンを内に見つつ、外から突き抜けたのは「最初から外」の8枠2頭、タガノエスプレッソアッシュゴールドだ。ともにスタート直後は後方だったが、ここに至る過程は異なり、タガノエスプレッソは向正面で掛かり気味。アッシュゴールドはこれを見る形で動いており、展開的にも、直線の脚色からも、アッシュゴールドが優勢かと思われた。

しかし、残り200mで半馬身差まで迫られてからのタガノエスプレッソは渋太く、ラスト1ハロンは11秒4。アッシュゴールドにそれ以上差を詰めさせず、前走の未勝利勝ちから2連勝で重賞タイトルを手中にした。

そのタガノエスプレッソ父ブラックタイドは、三冠馬・ディープインパクトの全兄。21年ぶり云々から、一気に8年前や1年前まで走っていた馬の話になるが、「三冠馬の全兄の息子」と「三冠馬の全弟」の追い比べ、まずは「三冠馬の全兄の息子」に軍配が上がったことになる。

さて、この「11月のデイリー杯」を走り、後に大活躍を見せるのはどちらの馬か。勝ったタガノエスプレッソは、差し届かずのデビュー2連敗から、自在な走りを身につけつつの2連勝。敗れたアッシュゴールド「さすが」の末脚は見せており、こちらもまだまだ伸びしろがあるだろう。

今年から2歳重賞が増えた分、各レースのメンバーが薄くなったとも言われるが、ここで初対決を迎えた2頭が世代を引っ張る存在になってくれることを期待しつつ、次の対決を楽しみに待ちたい。