今回の経験がG1へと繋がる可能性も大いにあり!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
11月は5週連続で6つの重賞競走が行われる2歳戦線。ただ、先週までは
阪神JFや
朝日杯FSの前哨戦だったのに対し、今週の
東京スポーツ杯2歳S、そして来週の
京都2歳Sは、
ホープフルS(G2)のステップという位置づけだ。
今後、条件が整えばG1に昇格する方向の
ホープフルSだが、今年の①着賞金
6500万円は、
朝日杯FSと500万円差で、
阪神JFとは同額。こうした賞金面や、ステップレースの整備状況から、グレード以外はすでに
G1化されていると言えるだろう。
その
ホープフルSの前哨戦となるのが、今週の
東京スポーツ杯2歳Sである。後の活躍馬を多く出している一戦で、昨年は
イスラボニータ(
皐月賞①着)が優勝。そんなレースが今年から
「ほぼG1」の前哨戦となれば、当然ながらさらにハイレベルに……と言っていいのか、どうなのか。一見すると好メンバーでも、出走馬13頭中、2勝馬は
ジャストドゥイング1頭だけである。
ただ、08年から11年に優勝した
ナカヤマフェスタ、
ローズキングダム、
サダムパテック、
ディープブリランテという後のG1馬たちは、いずれも前走が
新馬・未勝利①着の1勝馬。こればかりは、後々になってみないとわからないものだ。
ともあれ、今年も好メンバー「っぽい」面々が揃ったこのレース。2歳戦だけに、自分の力を出し切れるかどうかもカギになる、そしてその
予想が難しい一戦でもあった。
そんな難しさを象徴するように、いきなりスタート前から4番人気・
サトノクラウンがゲート内で何度となく立ち上がり、なんとも
怪しい雰囲気である。
そして、ゲートが開くと、ある程度は予想できたとはいえ、2番人気の
クラージュシチーが出遅れ。さらに、3番人気の
グリュイエールがハナに立ったことにも少々驚かされ、その後3番手に下げると
グリュイエールはクビを上げてこれに反抗。デビュー2戦とも道中は掛かり加減だったとはいえ、これまた
怪しいレース運びだ。
そんな中、
落ち着いたレース運びを見せていたのが1番人気の
アヴニールマルシェだった。バタバタしている前の集団を見つつ、道中はほぼ折り合っての5番手追走。そのまま5番手で4コーナーを通過し、この馬にかぎってはスムーズな競馬で力を出し切れそうだった。
ところが、その
アヴニールマルシェも直線に入ったところでやや内に押し込まれると、その間に外から
ジャストドゥイングにも前に入られ、気づいたときには前が壁。
アヴニールマルシェの隣には
当方期待の穴馬・
グァンチャーレ(7番人気)、さらに内には
グリュイエールもいたのだが、これは3頭まとめて出られないか、という残り300mの態勢だ。
しかし、残り200mを切ると、この中から
アヴニールマルシェだけが壁を切り裂き、ぐいっとひと伸び。これだけ苦しい競馬の中でも、なんとか勝利を手中にしたかと思われた。だが、そこに1頭挟んだ外からやって来たのが、ゲートで何度も立ち上がっていた
サトノクラウンだった。
サトノクラウンは
大きな出遅れこそ避けられたものの、もっさりしたスタートから道中は後方追走。その後は、あれやこれやとあったレース展開の中、どうも存在が消えていたような感もあった。後でVTRを見直せば、直線坂下では
アヴニールマルシェの直後。そこからこの馬もまた、前が開いた瞬間を見逃さず一気に伸びての差し切り勝ちだ。
この馬より先に先頭に立った
アヴニールマルシェですら、ゴール手前100mまで実況に馬名を呼ばれなかったこの展開。ましてや
サトノクラウンとなると、買っていた人ならともかく、買っていなかった人(
当方)にとっては、いったいどこから飛んで来たんだ、という大逆転のゴール前だった。
これで
サトノクラウンは
2戦2勝。先に触れたように、前走
新馬・未勝利①着からの連勝馬は、
過去10年で4頭が後にG1タイトルを獲得している。今回、
この厳しい競馬を勝ち切った経験が、そのG1へと繋がる可能性も大いにありそうだ。
また、このレースで敗れた馬の中にも、
ジャスタウェイ(11年④着)や、
メイショウサムソン(05年②着)、そして昨年⑥着の
ワンアンドオンリーなど、後のG1馬は少なくない。今回はこういったレース展開で
不完全燃焼に終わった馬も多いだけに、
「POG指名馬が負けてしまった」という方も、この敗戦だけで気落ちする必要はないだろう。
当方、POGはやっていないのだが、大出遅れの
いちょうS(⑥着)、そして前が壁になった今回(⑦着)と◎にした
グァンチャーレは、絶対どこかで穴を出すと信じてまた買ってみたい。