独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン

厩舎&騎手の手腕によって怪物的な強さがようやく復活
文/石田敏徳、写真/川井博


連載コラムの仕事で今週、17年前のジャパンCについて原稿を書く機会があった。1997年の第17回。パドックで“馬っ気”を出していた英国馬ピルサドスキーが日本のエアグルーヴをねじ伏せるようにして差し切り、マイケル・スタウト調教師が前年のシングスピールに続く連覇を飾ったレースである。

当時の資料をあれこれとひっくり返していたら、色々なことを思い出した。この年のジャパンCには創設以来初めて、北米勢の参戦がなかったこと。6頭という外国馬の出走頭数は前年と並ぶ史上最少タイだったこと。ジャパンCはそろそろ曲がり角を迎えている。そんな指摘とともに、何らかのテコ入れ策を講じる必要性があちこちで論じられ始めたのもこの年あたりからだ。

そして17年後の今年。ジャパンCに参戦してきた外国馬は3頭だった。昨今の情勢を考えればまずまずの顔ぶれといえたものの、結果はアイヴァンホウの⑥着が最高着順で、アップウィズザバーズは⑯着、そしてトレーディングレザー競走中止と非常に残念な結果になってしまった。

ならば「日本VS世界」の構図が、看板倒れになってしまって久しいジャパンCにかつての活況を取り戻すためにはいったいどうしたらいいのか?

究極的に“超思い切った”賞金の増額ぐらいしか手立てはないと考えている。

第20回の節目を迎えた2000年に2億5000万円に増額されて以降、ずっと据え置かれてきたジャパンCの①着本賞金(ちなみにピルサドスキーの当時は1億3200万円)は来年から3億円に増額されるというけれど、その程度の引き上げでは到底、効果は望めない。

日本馬の強さ、欧州の芝とはあまりにも勝手が異なるコース、検疫条件や入国後の調整環境の厳しさが世界のホースマンたちの間に広く知れ渡った現在(なので、よく提案される“同日に複数のG1を施行するカーニバル開催”を実現しても効果は薄いと思う)、それでも黒船にたとえられるような外国馬を呼んでくるためには、彼らの青い目を白黒させるぐらいのインパクトがある増額を行わなければ難しいのではないか。

もっとも、「日本VS日本」の構図が描かれた今年のジャパンCは実に豪華絢爛たるメンバーによって争われた。ジェンティルドンナが挑む3連覇の成否をはじめ、ハープスターを筆頭とする3歳勢VS古馬勢、さらにジャスタウェイVS2400mの距離などなど、興味を惹かれるポイントもたくさんあった。

そして、それらの見所をまさしく“一色に”塗りつぶしてしまったのが、スミヨン騎手エピファネイアのコンビが演じた見事な圧勝劇だったのだ。

主導権を奪ったサトノシュレンは緩みのないラップを刻んで後続を引っ張り、レースは少し速めの平均ペース、縦に長い隊列で進行。例によって闘志を露にしながら走るエピファネイアを懸命になだめながら、スミヨン騎手は直後の好位で流れに乗った。

傍目には何とかついているように見えた折り合いだが、によれば「バックストレッチに入っても行きたがり、ハラハラしていた。まるでマイラーのような走りだった」とのこと。一方の角居勝彦調教師「本当にギリギリでしたね」と、紙一重のところで成り立った折り合いだったことを認めている。

道中の追走がそんな風だったから、スミヨン騎手は直線に向き、ひと息入れてから仕掛けるつもりでいたのだという。ところがファイティングポーズをとり続ける馬は、まだか、まだかと加速を催促してくる。じゃあ仕方ない。とばかりに手綱の戒めを解いたところ、エピファネイア「まるでフレッシュな馬のようにドン!」と加速したそうだ。

良発表とはいえ、前日の雨が残って少しソフトなコンディションになっていた馬場(ジェンティルドンナ石坂正調教師R・ムーア騎手は揃って“馬場状態”を敗因にあげた)に緩みのない流れが重なり、それなりに上がりがかかる展開になったことは、エピファネイアにとっては確かに追い風だっただろう。

ただそれでも、「レースは理想的に運べた」(福永祐一騎手)というジャスタウェイ以下に4馬身ものリードを開いてゴールを駆け抜けたのだから、これは完勝にして圧勝。折り合いの課題を意識しすぎた余り、結果的に「春先は前向きさを欠いていた」(角居調教師)という馬の闘志に再び火をつけた厩舎のスタッフと、それを暴発寸前のところで制御してみせたスミヨン騎手の勝利だったともいえる。

ただし、始動戦では空回りしてしまった闘志の歯車がガッチリ噛み合ったのは、秋の天皇賞をひと叩きした効果も大きかったはず。というのも前走時に比べると、この日のパドックでは格段に落ち着いて周回しているように見えたからだ。

「今回、やっと結果を出せてホッとしていますが、まだ予断を許さないところがある馬ですからね」と、自戒するように笑ったのは角居調教師。次走には有馬記念を予定しているそうで、昨年の秋に華々しくアピールした怪物的な強さを、ようやく復活させることに成功した陣営は、今度はそれを“定着”させるという課題に取り組む。