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相手云々は関係なく逃げ切りたい展開に持ち込んで完勝
文/浅田知広、写真/森鷹史


なんとも難解なレースが続いた、この土日の中央競馬だった。そもそもワールドスーパージョッキーズシリーズは毎年のように難しいレースが多い印象だが、土曜は東西第9R以降の3連単最低配当が6万8280円。それを記録したのが、たった8頭立ての京都2歳Sなのだから難しい。

そして迎えたこの日曜。東京9Rで3万円台、京都11Rで4万円台と、最低配当こそ土曜より落ち着いたものの、その間には26万(東京10R)や、55万(京都10R)などの波乱もあり。東京の最終レース・ジャパンCも、一応は「上位人気」という括りの中で決着したものの、1、2番人気のジェンティルドンナハープスターが④着、⑤着に敗れているのだから、決して簡単な馬券ではなかった。

そんな流れでやってきたのが京都最終・京阪杯である。これがハンデ戦ではなくてまだ良かったという、ずらり揃ったフルゲート18頭。スプリンターズS③着のレッドオーヴァルが、頭ひとつ抜けて単勝2.7倍の1番人気には推されていたものの、くせ者揃いの18頭だった。

また展開面も難しく、アンバルブライベンサカジロロイヤル、そしてニザエモンと、近走逃げて結果を出している馬が3頭。さらに、最内1番枠なら先行しそうな2番人気エピセアローム、そして前走で先行策に戻って勝ち切った3番人気ワキノブレイブあたりの出方もカギになる。

そんなメンバー構成も含め、これらを前に置いてレースを進められそうなレッドオーヴァルの1番人気だっただろうか。ただ、昨年の前3頭「行った行った」は極端にしても、近年はなんだかんだと前の馬も残っているのが、この京阪杯の傾向だ。

レースの走破タイムよりも長いローブティサージュの枠入り実況の後、ダッシュ良く飛び出して行ったのは、「逃げ3頭」の中で、もっとも内を引いたアンバルブライベンだった。そして、行ければ行く態勢だったサカジロロイヤルは、ムリには競らずあっさり2番手。さらにニザエモン、そして内からエピセアロームが加わったあたりは、大方の予想通りだっただろうか。

ただ「何頭も逃げ馬がいるレースは、位置取りさえ決まれば意外に落ち着く」と言われるのをそのままレースにしたような展開で、前半3ハロン通過34秒7は、京阪杯が1200mに短縮された06年以降でもっとも遅い流れ。後方集団はごった返してる一方で、先行勢は最初に決まった位置取りをそのまま守って、なにごとも起きずに4コーナーへ向かっていった。

こうなると、勝負に絡めるのはほぼ前の組。好位の馬、今回ならエピセアロームが良さそうに見えても、さらに前の馬が十分な余力を残していることは多々あるもので、残り100mでアンバルブライベンサカジロロイヤルを振り切ったところで勝負あり。最後は大外から②着サドンストームの急襲もあったが、レースとしてはアンバルブライベンの完勝と言っていいだろう。

3走前の北九州記念は前半3F33秒1で僅差④着、そして前走の福島民友Cは前半3F33秒8で逃げ切っていたアンバルブライベン。それが今回、前半3F34秒7なら、相手云々は関係なく逃げ切りたい展開だった。

そんな絶好のチャンスを自ら作り、しっかりモノにした鞍上は田中健騎手。4番人気のマルモセーラで制した10年ファンタジーS以来2つ目の重賞勝ちだが、今回も5番人気で、これで5番人気以内の重賞では3戦2勝となった。残る1戦は、アンバルブライベンで⑧着に敗れた今夏のアイビスSDだっただけに、その雪辱を果たすという意味でも嬉しい勝利だったに違いない。

そしてアンバルブライベンは、これで京都芝コースで[2.1.1.0]と4戦すべて③着以内。次走がどこになるかわからないが、直線平坦、特に京都に戻った際には近走成績に関わらず注目したい。今度は「楽に行かせると渋太い馬」とマークされる立場になるだろうが、馬券を買う側としては「もっと速いペースでも粘れる馬」との認識が必要だろう。

さて、こうして逃げ切ったアンバルブライベンは、単勝11.3倍の5番人気だったのだが。②着に食い込んだサドンストームは11番人気、そして③着に粘り込んだサカジロロイヤルは15番人気で、3連単の配当は文句なしに今週の最高配当・202万9240円。思い切りトドメを差されたというべきか、ここまでくると諦めがつくというべきか。ともあれ、波乱続きの土日を締めくくるにふさわしい結果だった、と言っておこうか……。さあ、来週は開催替わりだ。