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多頭数を克服したことは価値が高いのではないか
文/編集部(M)、写真/川井博


今年のステイヤーズSは、登録時点での頭数が20頭だった(フルゲートは16頭)。ただ、そこには下級条件の馬も交じっていて、当初からフルゲート割れは確実な情勢だった。最終的にいったい何頭に落ち着くのか……連覇を狙うデスペラードにとっては出走頭数がポイントになると睨んでいた。

デスペラードが昨年のステイヤーズSを快勝した時は13頭立て。一昨年に挑戦した時は③着で、この時は15頭立てだった。デスペラードはこれまでに重賞を2勝(13年ステイヤーズS14年京都記念)していたが、その2戦は12~13頭立てで、13年阪神大賞典で②着に食い込んだ時も9頭立てだった。だから、多頭数は良くないと考えていたのだ。

多頭数に不安を覚えたのは、何もデスペラード個体の問題だけではなかった。ネオユニヴァース産駒は6歳以上で14頭立て以上の芝レースに出走した時、[0.4.1.71]という成績が残されていた。デスペラードに限らず、ネオユニヴァース産駒のベテラン馬たちは、手頃な頭数の時に勝ち鞍を挙げていたのだ。

今年は最終的に15頭立てとなったので、連覇には黄色信号が灯った、と思っていた。他の出走馬14頭の中に芝3000m以上で勝った馬はいなかったし、過去2度のステイヤーズSでの成績(③①着)を考えても、デスペラードの長距離実績が抜けているのは明らかだった。ただ、それでも、これだけの頭数だと他の何かにやられてしまうのではないか…………そう思って、デスペラードを②&③着に付けた3連単を買ってしまいました(笑)。

昨年は後続に3馬身半差を付けての快勝で、それに対して今年は半馬身差だったから、パフォーマンスは落ちたように感じるかもしれない。走破時計を比べても、昨年時(3分45秒2)に対して今年は2秒以上遅い(3分47秒8)。

ただ、今年は道中のペースが昨年比で4秒近く遅く、その影響があったのだろう。むしろ、裏を返せば、それだけのスローペースだったのに折り合いを欠かなかったことを評価すべきと思われる。

鞍上の横山典騎手によれば、今回のデスペラード「やる気満々だった」そうだ。それでも最後の直線に向くまで、およそ3200mを折り合って運べたのだから立派だ。天皇賞・春分の距離を淡々と走り、その後にスパートしたわけだ。そのようなパフォーマンスを可能にしたのは、横山典騎手はもちろん、安達厩舎のスタッフの手腕もあるだろう。

今秋の京都大賞典⑧着、アルゼンチン共和国杯⑨着という内容には少なからず不安を覚えたが、デスペラード自身にしてみれば、「俺はまだ本気出してないだけ」だったか(笑)。多頭数(15頭立て)で、それでいてスローな流れでも勝ち切ったのだから、その力は昨年時と比べてもあまり落ちていないと思われる。今後は有馬記念を視野に入れて続戦されるようで、果たして、今年の有馬記念は何頭立てになるのだろうか?

覚えている人も多いかもしれないが、昨年の有馬記念でのデスペラードは穴ぐさ💨だった。後方の内を追走し、勝負所でも内を回って進出して、上手く捌ければ②~③着争いに加われそうな手応えだった。ところが、直線に入ってから前がまったく開かず……。あの時はフルゲートの16頭立てを恨めしく思ったものだ。

今年のステイヤーズSのレース後、横山典騎手「(有馬記念も)まともに走ればいいところがあると思う」と話したのは、昨年の悔しい経験があってのことだろう。気難しい面があるようで、その点は走ってみないと分からないのだろうが、このまま順調であれば、今年は多頭数を克服しての参戦になる。実績面でひとつステップアップしたことは間違いない。

冒頭で、デスペラードを②&③着に付けた3連単を購入したことを吐露したが、実は、半馬身差の②着ファタモルガーナは①着で買っていなかったので、馬券的には惜しくも何ともなかった。ファタモルガーナを①着で買っていなかった理由……それも血統が関係している。

ファタモルガーナディープインパクト産駒で、同産駒は中山の芝重賞で4勝を挙げているが、そのうち3勝は14頭立て以下だ。15頭立て以上の中山芝重賞を制したディープインパクト産駒12年京成杯ベストディールだけで、今年のステイヤーズSも含めると、[1.8.8.59]と恐ろしく②~③着止まりが多くなっている。

通算でも中山芝重賞では[4.11.10.71]と②~③着が多く、中山の芝G1ではのべ15頭が挑戦して突き抜けた馬はまだいない([0.2.2.11])。はっきり言って、中山芝はディープインパクト産駒に不向きなコースなのだ。

今年の有馬記念は、当初はあまり頭数が集まらないのではないか、と噂されていたが、ジャパンCが終わり、今週土曜日(12月6日)の重賞レースも終了すると、我も我もと参戦表明が相次ぎ始めた。このままだとフルゲートになる公算も高そうだ。そして、多頭数になればなるほど、ディープインパクト産駒にとっては乗り越える壁が高くなると思っている。

中山での芝重賞は、有馬記念当日にホープフルSが予定されているだけで、来週と再来週には実施されない。ということは、多頭数での中山芝重賞に関するデータも更新されないわけだ。今回のステイヤーズSで、デスペラードが多頭数を克服して勝利を収めたことは、意外に価値が高いのではないだろうか。