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ラストインパクトは有馬記念の穴候補に浮上
文/浅田知広、写真/稲葉訓也


有馬記念の過去10年を振り返ると、③着以内の好走馬30頭中27頭を、海外も含めた前走G1出走馬が占めている。では、残り3頭はというと、10年③着のトゥザグローリー中日新聞杯①着、12年②着のオーシャンブルー金鯱賞①着、そして昨年②着のウインバリアシオン金鯱賞③着馬。12年から中日新聞杯金鯱賞に置き換えられており、前走G1組以外で買えるのは事実上、この金鯱賞組だけ、ということになる。

今年の金鯱賞も、有馬記念出走を視野に入れた馬がズラリ。まず上記の3頭がまとめて出走してきたのに加え、有馬記念出走歴がある馬もほかにラブリーデイなど4頭。さらには京都大賞典を制したラストインパクト毎日王冠エアソミュールなどなど。

なにしろ出走全17頭が重賞連対実績を持ち、そのうち13頭はG2以上での連対馬というメンバー構成。ジャパンC翌週だけあって、さすがにG1実績馬は多くないが、どうやら完全に有馬記念のステップレース」としての地位は確立されたようだ。

そんなことを考えていると、つい有馬記念で狙いたい馬を買いそうになったが、金鯱賞有馬記念とは違い、直線の長い左回り・2000m戦。さて、このコース、このメンバーでどんな人気になるかと思えば、秋のG2優勝馬・ラストインパクトエアソミュールが僅差の1、2番人気。以下、ウインバリアシオンなどG1、G2の実績馬が続き、近走不振有馬記念好走馬オーシャンブルー(10番人気)やトゥザグローリー(11番人気)あたりはふた桁人気も致し方なし、といった次第であった。

レースは天皇賞・秋でも逃げたカレンブラックヒル(5番人気)の先導で、前後半の1000mは59秒8-59秒0。結果的に勝ち時計は1分58秒8のレコードになったが、決してハイペースではなかった。

もっとも極端なスローでもなく、掛かったり、向正面あたりから動く馬もなし。直前のステイヤーズSで先頭の入れ替わりやロングスパートが見られたのに比べると、まったく落ち着いた展開で、なにか物足りなさすら感じる中で3コーナーを通過していった。

こうなると、後方待機馬は早めに仕掛けたいところ。中団からまず4番人気のサトノノブレスが動きだし、これに内から併せる形でラブリーデイ(6番人気)もスパート。2頭を見つつ1番人気のラストインパクトが続き、2番人気のエアソミュールも内で詰まり気味ながらも前を射程圏に入れていた。

この結果、人気どころではウインバリアシオン(3番人気)だけが後方に取り残された形。先頭のカレンブラックヒルも含め、その他の上位人気馬はそれぞれ勝機のある位置で直線に向かっていった。

さて、どの馬のタイミングがベストだったのか、という直線412.5m。昔の中京コースならカレンブラックヒルの逃げ切りか、先に動いたサトノノブレスラブリーデイあたりだっただろうか。しかしここは新・中京。向正面から直線入口まで長く続く下り坂で勢いに乗り、急坂をエンジン全開で駆け上っても、まだその先ゴールまでは200m以上ある。

この坂を少々余裕残しで登り切り、残り1ハロン手前から猛然と追い出されたのが川田騎手ラストインパクトだった。サトノノブレスカレンブラックヒルを交わすやいなや外から襲いかかり、多少の抵抗は受けつつも最後は1馬身半突き放しての完勝だった。

京都外回りに中京と、直線の長いコースで2連勝のラストインパクト。ただ、小回りも決して苦手ではなく、初重賞制覇は向正面から一気に動いた今年の小倉大賞典。直線の短いコースは[3.2.1.1]で、馬券圏外は休み明けの小倉記念⑥着のみである。京都大賞典との間に今回2000m戦を挟んだことがどう出るかだが、前に馬を置いて折り合えればチャンスあり。「前走G1以外」なら金鯱賞組という有馬記念だけに、穴候補として覚えておきたい。

そして、覚えておきたいこともあれば、忘れたほうが良さそうなこともあり。同時期に行われていた中日新聞杯の06~11年、そして12年の金鯱賞を合わせた7年間では、外国人騎手が計5勝を挙げていた。しかし、ここ2年の金鯱賞池添騎手川田騎手。レース前は「1年来なかっただけでしょ」という話(で、外国人騎手から買ってしまった)だったが、どうやら昨年で流れは変わっていたようだ。

また、騎手といえば、今回の川田騎手有馬記念エピファネイアに騎乗予定のため、ラストインパクト菱田騎手を迎えての出走になるとのこと。昨年はカレンミロティック金鯱賞を制した池添騎手が、オルフェーヴルの手綱をとって有馬記念を圧勝。さて今年は? 若い菱田騎手ラストインパクトの走りはもちろんだが、川田騎手新たなジンクスを作るかどうかにも注目して有馬記念を楽しみたい。