①②着に関しては前年の反動が出たような結末に
文/浅田知広、写真/森鷹史
いかにも荒れそうなレースでつい本命サイドの馬券を買ってしまい、結果ハズレて、ものすごく損した気分になったことはないだろうか。
そんな
「いかにも荒れそうなレース」の代表格が、牝馬限定・ハンデ戦の
愛知杯。昨年は
12→14→13番人気決着で3連単471万馬券。過去を振り返れば、6月施行の05年も
13→11→14番人気で3連単221万馬券と、10年で2度も
「ふた桁人気馬上位独占」があった波乱のレースだ。
中央競馬全体を見ても、こういった結果は05年以降の過去約10年、3万数千レースもあった中でたったの17回。そのうち2回がこの
愛知杯なのである。
しかし、平均から大きく外れたことが起きた後には、その反動が出そうなもの。実は05年の
大波乱の後は、06年が
1→3→2番人気、07年が
4→2→1番人気で、ともに3連単は1万円未満だったのだ。
そう考えると、今年も人気馬が上位を占めそうにも思えてくる(ついでに損した気分を味わいそうにも思えてくる)。まず2番人気の
キャトルフィーユ、そして3番人気の
フーラブライドは昨年の②①着馬。この1年で実績を重ねてハンデこそ増えているものの、コース・距離に不安はない。
そして、1番人気の
ディアデラマドレは、07年の優勝馬・
ディアデラノビアの娘。07年当時の小回り中京とは違うとはいえ、自身も左回りの
府中牝馬S、同距離の
マーメイドSで重賞制覇を果たしていた。
さて、この3頭が、ハンデ56キロを背負い、重馬場でどうなるのか。4番人気の
シャトーブランシュは前走1600万条件で、しかも③着に負けていた馬。対して、人気上位3頭は
エリザベス女王杯③④⑤着なのだから、ハンデはさておき
実績面では「3強」ムードだ。
ゲートが開くと、その
「3強」はいずれも後方から。
ディアデラマドレはともかく、
キャトルフィーユや
フーラブライドには少し後ろ過ぎる感もあった。加えて、前半の1000m通過63秒1は、重馬場を考慮しても遅めの流れである。
そんな中、
「3強」で最初に動いたのは昨年の覇者・
フーラブライドで、3コーナー過ぎから大外をまくり気味に進出。
ディアデラマドレはその直後、
キャトルフィーユは馬群の中へと突っ込んでいった。
そして直線。外へ行った
フーラブライドはやや伸びを欠き、
ディアデラマドレはその後ろで詰まり加減。対して
キャトルフィーユは大きな不利なく残り200mで先頭へ。ここでほぼ勝負はあったかという態勢に思われた。
ところが、その後ろのごちゃついた中から、1頭だけ違う脚で突っ込む馬が1頭。前が開いた
ディアデラマドレが持ち前の切れる末脚を繰り出し、まさに並ぶまもなく差し切ったのだ。07年の母
ディアデラノビアも馬群を割って鮮やかな差し切り勝ち。当時とはコース形態こそまったく違うが、母の勝利を思い出させるような
愛知杯母娘制覇、そして母に並ぶ
重賞3勝目となった。
その
ディアデラノビアは4歳時の06年は
[0.1.5.3]で、3月以降で国内に限れば
[0.1.5.0]。
ヴィクトリアマイルや
エリザベス女王杯でも③着と崩れなかったが、G3も勝ち切れなかった。一方、娘の
ディアデラマドレは、これで4歳の今年
[3.1.1.1]。母は5歳時に
重賞2勝を上積みしただけに、さらなる活躍へ期待が高まるところだ。
こうして、終わってみれば
1→2番人気決着となった今年の
愛知杯。③着に10番人気の
スイートサルサが突っ込んで
「馬連にしとけば良かった」と、違う形で後悔することになった
当方だが、ともあれ
今回も①②着に関しては、前年の反動が出たような結末だった。
ちなみに、
ディアデラマドレにとって来春の大目標となりそうな
ヴィクトリアマイルは、
ここ2年連続でふた桁人気馬が馬券圏内に好走中。同様の例は09~10年にもあったが、翌11年は
2→1→3番人気(
アパパネ→
ブエナビスタ→
レディアルバローザ)決着で、3連単すら3620円と平穏に収まっている。
このまま順調なら、
ディアデラマドレも上位人気で
ヴィクトリアマイルを迎えることになるだろう。そしてこの流れなら、母の4番人気③着(06年)を上回り、母が手にできなかった
G1タイトル獲得もありそうだが、さて、どんな結果が待っているだろうか。