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ダノンプラチナのレース内容は王者にふさわしい
文/安福良直、写真/稲葉訓也


G1レースで、距離とか競馬場などの条件が大きく変わる場合、その変わったばかりの回というのはかなり重要なのではないかと思う。新装1回目のレースで強い馬が勝てば、そのイメージがファンにも植え付けられ、チャンピオン決定戦としてだれもが認めるレースとなって続いていくのだ。

2歳王者決定戦として行われている阪神JF朝日杯FSも、昔は東西それぞれの地区チャンピオンを決定するレースだったのが、1991年に牡馬が朝日杯に、牝馬が阪神に統一される形で変更。その1回目を勝ったのが、朝日杯は翌年の二冠馬ミホノブルボン阪神は翌年の桜花賞馬ニシノフラワー。どちらも強い馬が文句のない勝利を収め、両レースとも王者決定戦としての格を高めていった。

というところで、今年は朝日杯だけ、中山から阪神に場所が変わるという大幅変更。中山での朝日杯は、「1分33秒台の高速決着」「内枠がかなり有利?」「3歳クラシックとの結びつきはちょっと弱いかも?」というイメージが強くなっていたが、これがリセットされるのかどうなのか。変更第1回ということで、今後の朝日杯をも占うつもりで、馬券は少々抑えめにして(?)観戦した。

前置きが長くなってしまったが、結果はダノンプラチナの快勝。1番人気馬が勝ったというのは、朝日杯の今後を考えると、とりあえずはホッとできる結果だと思う。

ダノンプラチナのレース内容も王者にふさわしいもので、内枠からいったん後ろに下げ、3コーナーから外に出して堂々たる差し切り。直線に入った時点での脚色が良く、ここですでに「勝負あった」という印象。ここまで3戦2勝で、2勝はいずれも外枠を引いてのもの。内枠で馬群に揉まれる競馬になったらどうか、という懸念もあったが、難なくクリア。今回も外目の枠を引いていたら、さらに楽な競馬ができていたのではないだろうか。

欲を言えば、勝ちタイムの1分35秒9というのがどうか、というところ。前日の大雨で、稍重という発表以上に時計のかかる馬場になったのは確かだが、前週の阪神JFに比べると1秒5も遅いのをどう評価するか。今後は阪神JFと時計の比較で牡牝のレベル差が語られるようになるのは間違いないと思うので、ダノンプラチナの今後にはかなりのプレッシャーがかかりそうだ。

ここまで1600mまでしか経験していないから、クラシックのことを考えれば距離延長も克服しないといけないし、その上で前週のショウナンアデラとの見えない戦いにも勝たなければならない。鞍上が同じだから、絶対に比較されるはず。ダノンプラチナにとってはかなり大変な道だと思うが、今日の勝ちっぷりは良かったので、乗り越えられる器だと信じて今後を見守りたい。

②着には、14番人気の伏兵アルマワイオリが突っ込んできた。こちらはダノンプラチナとは違って外には一切出さず、内から馬群を割ることにこだわったのが好結果につながった。この馬の場合は内枠を上手く活かしたことになるが、勝ち馬は外から来ているので、中山のときのような、内枠有利というイメージは薄らいだような気はする。

アルマワイオリの祖母は、ニシノフラワーの翌年に阪神3歳牝馬S(当時)を勝ったスエヒロジョウオーこの舞台で活きる血が騒いだ、といったところか。泥を被ってもひるまない根性はたいしたもので、今後もマイラーとしてたびたび穴をあけてくれそうだ。

③着以下の人気馬、クラリティスカイアッシュゴールドブライトエンブレムらはそれなりに見せ場もあったが、伸びきれなかった。まだ成長途上とも言えるが、もうワンパンチ欲しい内容だった。ナヴィオンもパンパン馬場なら斬れる脚が使えるが、この馬場ではいいところが見られず。

そんな中では、スタートで出遅れて④着まで追い上げたネオルミエールは、内枠もプラスにならなかったことを考えればいい内容。父(ネオユニヴァース)も母(シルクプリマドンナ)も東京でG1を勝った馬だと思うと、今回でいちばんダービーが見えたのは、この馬かもしれない。