シャイニングレイ陣営は、リスクを負って、アドバンテージを得た
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
朝日杯FSが
阪神競馬場で施行されることになり、その替わりに、以前の
ラジオNIKKEI杯2歳Sが関東圏に移って
ホープフルS(G2)として行われることになった。そのように解釈している人もいるだろう。むろん、そのような発表がされていて間違いではないのだろうが、
番組編成者の思惑と
レース結果は、必ずしも一致しなかった。
G2に変わっても、結果は以前の
OP特別と同じだったように思う。
ラジオNIKKEI杯2歳Sは、2年前の勝ち馬
エピファネイア(前走・
京都2歳S)や昨年の勝ち馬
ワンアンドオンリー(前走・
東スポ杯2歳S)など、前走ですでに
OPクラスを走っていた馬が勝利するケースが多かった。前走が500万クラス以下だった馬の優勝は、04~13年の近10年では
2頭だけ(05年
サクラメガワンダー、11年
アダムスピーク)だった。
それに対して
ホープフルSは、04~13年の近10年で前走が
OPクラスだった馬が2勝(04年
エキゾーストノート、10年
ベルシャザール)。前走が500万クラス以下だった馬が勝利するケースが多く、近3年はいずれも
前走でデビュー戦を勝ったばかりの馬が連勝していた(11年
アドマイヤブルー、12年
サトノネプチューン、13年
エアアンセム)。
今年は
京都2歳Sで1~2番人気に推されていた
ダノンメジャーと
ティルナノーグがいたし、
東スポ杯2歳Sで③着となった
ソールインパクトもいて、上位人気に推されたが、いずれも馬券圏内には入れなかった。③着以内はすべて
前走が500万クラス以下の馬で、優勝した
シャイニングレイは新馬戦を勝ったばかりだったので、これで4年連続で
「新馬→ホープフルS連勝」となったわけだ。
レースのグレードが上がってもレース結果に変化が見られなかったのは、
中山競馬場の特殊性と
2歳戦であることが影響したのかなと思う。
出走馬のレベルが上がるには
関西馬の大挙出走が不可欠だと思われるが、2歳のこの時期に関東へ輸送することには
リスクが伴う。広い東京競馬場ならまだしも、
トリッキーな中山競馬場では、走らせることとダメージを天秤にかけると、
出走しない選択をする陣営も多かったのではないか(G1なら話は別だろうが)。2歳戦だと、
賞金の増額(①着賞金は1500万円から6500万円に増額されている)だけでは効果はそこまで大きくないのだろう。
そのことを考えると、優勝した
シャイニングレイは
勝利した価値がかなり大きいと思う。前進気勢の強い馬で、関東への長距離輸送を経てテンションが上がってしまえば抑えが利かない可能性もあったかと思うが、3~4番手で折り合うと直線で抜け出し、
1馬身1/4差で快勝した。2戦目で
関東遠征も挟んでこの強さを見せるのだから、よほど精神的にも
大人なのだろう。
関東遠征を経験し、初の中山競馬場、しかも
皐月賞と同じ舞台で先行押し切りという
優等生のレースを見せたのだから、当然、
2015年クラシックの有力候補と言っていいはずだ。陣営は、
リスクを負って挑戦し、
アドバンテージを得たと言える。
ただ、裏を返せば、
G2になっても
挑戦を控えた有力馬は存在すると思われ、今後はそのような馬たちとの闘いになるだろう。過去2戦のレースぶりと同じように、
シャイニングレイは
3歳クラシックという舞台において早めに先頭に立った。ここから押し切れるかは、
4~5ヶ月間での成長力も重要になってきそうだ。
京都2歳Sに続いて上位人気に推された
ダノンメジャーと
ティルナノーグは、⑨着(
ダノンメジャー)と⑩着(
ティルナノーグ)という惨敗に終わってしまった。来春の
皐月賞を考えれば頭を抱える結果だったかもしれないが、
枠順や
脚質を考えれば敗因ははっきりしているから、あまり悲観する必要もないのではないか。
中山競馬場の芝コースは3~4コーナーで
外を回って動くと、直線で坂を登ってから脚色が鈍る。3~4コーナーを内でジッとしていた馬が直線で伸びるのはよくあることで、今回の③着
ブラックバゴがそのパターンだったし、
有馬記念②着の
トゥザワールドもその形だった。
ブラックバゴと
トゥザワールドは
3~4枠で、道中を内でジッとするには
内目の枠に入らなければ難しい。
ダノンメジャーは
5枠9番、
ティルナノーグに至っては
8枠15番という外枠で、外を回らざるを得なかったから伸びきれなかったのも仕方ないだろう。
もちろんここで賞金を加算できなかったことは、
来春のクラシックを考えればプラスではないだろう。ただ、力があるのはすでに実証済みで、噛み合えば
巻き返しは必然のはずだ。
一昨年の
ダービー馬キズナは
ラジオNIKKEI杯2歳Sで③着に敗れ、
弥生賞でも⑤着に敗れながら頂点に立った。あの
オルフェーヴルだって今の時期は
京王杯2歳Sで⑩着に大敗し、
シンザン記念(②着)や
きさらぎ賞(③着)でも2勝目を挙げられずにいた。掛け違えたボタンを外し、
もう一度掛け直す手間はかかってしまうが、幸いにしてまだ時間はある。今回のレースを
糧にしてほしいと思う。
それにしても………
ディープインパクトとは何という馬なのだろう。
ディープインパクト自身の話ではない。
その産駒の話だ。
ディープインパクト産駒は
中山競馬場での重賞制覇がそれほど多くなく、今年の4回中山開催に限っては、土曜日(12月27日)終了時点で芝では
1勝も挙げられていなかったのに([0.5.2.18])、日曜日(28日)は
ホープフルS(
シャイニングレイ)と
有馬記念(
ジェンティルドンナ)という重賞をふたつとも制してみせた。なんという
勝負強さだ。
かつては
「新聞を読む馬」などと揶揄される馬が存在したが、
ディープインパクト産駒たちも何か読めるように教育されているのではないか? 新聞の
成績欄や
展開予想などではなく…………
賞金欄だけ読めるとか(笑)。
ディープインパクト産駒には逆らえない、というのは、
中山や
福島などの小回りコース以外だと思っていたが……2015年はいよいよ
完全制圧に近づくのかもしれない。