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力でねじ伏せたと言っていい内容だった
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也


グリーンチャンネルで放映された岡田繁幸氏吉田照哉氏の対談(『新春BIG対談2015』)で、吉田照哉氏は、ハービンジャー産駒が早い時期から走っていることに対して欧州関係者が驚いている、という趣旨の話をされていた。

ハービンジャーは4歳夏の“キングジョージ”を11馬身差で圧勝した馬だが、G1挑戦はそのレースだけで、デビューしたのは3歳4月。3歳時はG1戦線とは無縁の道を歩んでいたので、それと産駒の活躍を比較して驚かれているのだろう。

今回の京成杯で産駒の重賞初制覇が成し遂げられたが、3歳1月は、ハービンジャー自身に当てはめればデビュー前だ。そりゃ、びっくりされて当然ですね。

京成杯の出走馬が確定した木曜日(15日)の時点で、実はハービンジャー産駒重賞初勝利が起こりそうだなと思っていた。ホープフルSで掲示板に載ったブラックバゴソールインパクトが上位人気に推されそうだったが、それならハービンジャー産駒破壊力が勝りそうに感じていた。連続開催7週目の中山芝で、ノーザンダンサー系を濃く持つハービンジャー底力が発揮されると思っていたのだ。

今回の京成杯に出走したハービンジャー産駒は2頭。未勝利戦を10馬身差で圧勝し、東スポ杯2歳Sで僅差のレースをしたクラージュシチーと、エリカ賞を内から差し切って2勝目を挙げていたベルーフだ。

2頭がどんな枠順に入るか、それに注目し、枠順に応じて「メインレースの考え方」の印を決めようと考えていたのだが、ふたを開けたら、なんと最内枠(クラージュシチー)大外枠(ベルーフ)になった。こんなことってあるんだろうか。

ベルーフエリカ賞を内から差し切ったように、内を捌けるタイプ(内に入って他馬と競り合いあいタイプ?)だと認識していたので、真ん中から内枠なら「◎」だと思っていた。なので、よりによって大外枠とは……という感情が湧いた。

一方、クラージュシチーは初勝利を挙げた時のようにのびのびと走った方が良さそうに感じていたので、真ん中から外枠がベターだろうと思っていた。

それぞれ私がベターと思っていたものと真逆の枠順だったから、来年からは京成杯マーくん(田中将大投手)と松山先生(松山康久元調教師)にご登場いただいた方がいいんじゃないか、と思ったほどだ(笑)。

何にしても、レース前日の夕方までには「◎」を決めなければいけない。クラージュシチーの内枠ベルーフの外枠を天秤に掛け、結局、ベルーフを「◎」にした。中山芝重賞で外枠が良いとは思わないが、京成杯は昨年も外差し決着になっていて、完全な内有利になるホープフルSとは異なること。そして、ステイゴールドなどが近親にいるという社台ブランド川田騎手の腕に信頼を寄せた格好だった。

正直なところ、大外枠のベルーフがどんな競馬をするか、まったくもって想像付かなかったが、後方追走から外を回って他馬をまとめて差し切るという豪快なレースになった。ハービンジャー産駒はいまのところ、こういう豪快な競馬で能力全開となるのだろうし、それには川田騎手も合っているのだろう。着差はハナ差だったが、通ったコースを考えれば、まさに力でねじ伏せたと言っていい内容だった。

一方、クラージュシチーは最内枠で好位のインを立ち回ったが、直線で伸びきれなかった(鞍上の菱田騎手は騎乗停止処分も受けた)。多頭数での最内枠という条件ではあの形しかなかったように見えたが、やはり窮屈なレースは合わないのだろう。長いバットを持って打席に入ったら、インコースばかりを攻められたように見えた。

ベルーフはこれで4戦3勝となり、賞金的に3歳クラシックへの出走権を得たことになる。クラージュシチー重賞に挑戦した2戦でともに2番人気に推されながら⑤着と⑧着に敗れ、まだ賞金を加算できていない。今後のローテーションに影響を及ぼしそうだが、冒頭に記した通り、ハービンジャー自身はもともと晩成型だ。ベルーフにしても、クラージュシチーにしても、使われて強さを増していくのではないか。無事であれば、まだチャンスがやってくるように思う。

1番人気に推されたブラックバゴは、ホープフルSではハナ差で賞金の加算が叶わなかったが、今回はベルーフに差し切られたもののクルーガーソールインパクトは退けて②着を確保した。ひとまず賞金を加算できたことは良かった。

今回は中盤でペースが緩み、道中で折り合いを欠く面が見られた。ブラックバゴやる気があるタイプ(に見える)で、続戦されていくと気性面がポイントになってくるのかもしれない。ペースは京成杯よりもホープフルSの方が多少だが速かったので、G2G1になってペースアップした方が走りやすそうに映るが。

そのレースぶりに驚いたのは、③着に入ったクルーガーだ。3枠5番という枠順だったクルーガーは、序盤は先行馬を見る位置にいたが、包まれる感じでポジションを下げ、直線入口では後方まで下がってしまった。普通なら盛り返すのは難しいレースぶりだったが、クルーガーソールインパクトと併せる形になると再びエンジン点火となり、結局、ソールインパクトを抑えて③着となった。上がり3Fタイムはソールインパクト34秒8で、クルーガー35秒1。しかし、直線だけのタイムはクルーガーの方が速かっただろう。

ベルーフクルーガーエリカ賞でワンツーした間柄で、そのレースを見る限り、ベルーフの方が2~3枚は力が上だと認識していた。だが、その考えは改めるべきのようだ。確かに今回は枠順と位置取りの差で走った距離が違うが、クルーガーには今後も注目したい根性が見られた。

クルーガーを管理する高野友和調教師は、ホープフルSを制したシャイニングレイも管理する。そのシャイニングレイで2戦2勝と勝ってきているのは、ベルーフの鞍上でもある川田騎手だ。今年の3歳クラシック戦線は、いろんな面で混沌としてきそうだ。