記録ずくめで歴史に残る大波乱の一戦となった
文/浅田知広、写真/川井博
2歳重賞が大幅に変更されて混乱したり、
チャンピオンズCと
チャレンジCを何度も見間違えたりした昨年秋。それに比べて年明けの重賞は、特に
混乱する要素もなく安心して(?)見られる印象だ。ただ、今年は暮れの
ターコイズSが重賞に昇格し、来年は
愛知杯が1月に移動してくる。同じ牝馬重賞である
京都牝馬Sも、なにがしかの影響を受けることになるのかもしれない。
いずれにせよ「暮れの
愛知杯から1ヵ月後」としては最後になる今年の
京都牝馬S。昨年の優勝馬・
ウリウリを筆頭に、ずらり18頭が駒を進めてきた。そう、今年の大きな違いといえばこの「18頭」。昨年まで冬場はフルゲート16頭に制限されていた京都芝外1600mだが、今年から各コースとも重賞に限り冬場の上限が撤廃され、春以降と同じ
フルゲート(京都芝外1600mなら18頭)で行われる。
このあたりは馬場管理技術の向上など、さまざまな要因の積み重ねで、冬場でも以前に比べて芝のレースが多く行われるようになるなど、多くの変化が見て取れる。土曜の競馬にしても
「1回京都も最終週だし、Aコース8日目だし」と思っていると、直前の
若駒Sを差し切った
アダムスブリッジの上がりが33秒3と聞いてひっくり返りそうになる。
もっとも、昨年の
京都牝馬Sは
ウリウリが上がり32秒9で差し切り勝ちを収めており、なにを今さらという話だが、「今年も」良好な馬場状態で迎えられたこのレース。同じような馬場、そして54キロで出られるなら今年も
ウリウリか、という単勝3.3倍の1番人気。いくら
プラス2頭の18頭とはいえ、ハンデ戦ほどの斤量差もないだけに、それなりの結果に落ち着くような印象……を持つと、これがまたとてつもなく
大きな落とし穴にハマることになるのだった。
ともあれ、9番人気
ケイアイエレガントの先導ではじまったレース、画面に表示された前半600mの参考タイムは35秒4。頭数が増えれば先行争いが激化する可能性も上がるのだろうが、今回のメンバーでは例年並み。3コーナーで突き放しにかかったように見えたが、後続もすぐに反応してほぼ一団となった。
ただ、前々からでも速い脚さえ使えれば、スローなら基本的には先行有利。
ケイアイエレガントは
中山牝馬Sで②着、
福島牝馬S①着と小回り1800mの印象が強いが、これよりも前、東京芝1600mの1600万では上がり33秒4の脚を繰り出し、②着以下を3馬身突き放した実績の持ち主だ。コースこそ違えど、今回はそれとほぼ同じ時期、同じ距離。4コーナー手前で
内田博幸騎手が仕掛けると、みるみるうちに後続を突き放して残り200mでは後続に3~4馬身差をつけていた。
これに対し、昨年よりかなり前の道中6~7番手で進んだ
ウリウリは、直線前半まで馬なりの手応えで運んだものの、位置取りのせいか追われてからの伸びひと息。これを見るように運んだ2番人気の
キャトルフィーユや、3番人気の
ダンスアミーガも伸びてこない。
かわって後方の内ラチ沿いから突っ込んできたのは15番人気の
ゴールデンナンバー、内目からは8番人気の
パワースポット。そして人気どころ全滅の好位~中団勢からは、13番人気の
マコトブリジャール。これら人気薄がゴール前で
ケイアイエレガントに襲いかかったが、やはり直線半ばまでに築いたリードは大きく、
ケイアイエレガントの
鮮やかな逃げ切り勝ちとなった。
これに②着
ゴールデンナンバー、③着
パワースポットで上位3頭は
6→6→7歳となり、牝馬限定重賞で6歳以上の上位独占はおそらく史上初。同じく牝馬重賞で
520キロ以上のワンツーも、手元で調べられる86年以降では初めてである。また、関西地区の重賞としては12年の
阪神C以来となる
関東馬の馬券圏内独占となった。
そして9→15→8番人気で、
「中山牝馬Sかよっ!」とツッコミを入れたくなる
大波乱の3連単286万馬券。17~18番人気こそ来なかったものの、②着の
ゴールデンナンバーは、出走馬決定順18番目の滑り込み。こんなところで
「プラス2頭」の影響が大きく出ていた。
こうして数え上げれば「こんなことが」という話がいくつも出てくる、歴史に残る一戦となった今年の
京都牝馬Sだが、勝った
ケイアイエレガントは、昨年の
福島牝馬S以来となる重賞2勝目。前述のように東京芝1600mの圧勝実績もあるだけに、
ヴィクトリアマイルでも展開ひとつで昨年(0秒3差⑥着)以上の結果もあるだろう。
また、メンバー中最速の上がり33秒0を記録した②着
ゴールデンナンバーは、これで12年末以降の
14戦中12戦で上がり最速。こちらもハマれば一発がありそうで、今後も「6歳牝馬だし」などと片付けないようにしたい上位勢だ。