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キャリア2戦目で早くも「秘めた」良血が開花した
文/編集部(T)、写真/川井博


人間には自分自身が注目されて嬉しいタイプと、そうでないタイプがいる。たとえば、福引きで当たったときに鐘を鳴らしてもらうことを喜ぶタイプと、できれば大げさにしてほしくないと思うタイプだ。

こういう例は枚挙に暇がない。学生時代に好成績を収めたテストの結果が張り出された時、競馬で言えばPATで10万馬券を的中させた時、皆さんはどんな反応や行動をしたでしょうか?

ちなみに、自分は目立ちたくないタイプなのだが、当たったことを誰かに言いたい、うらやましがられたい気持ちがあるのもまた事実。10万馬券を当てたら、まず5人以上の知り合いにメールが飛ぶ(笑)。

こんなことを思い出したのは、今回の共同通信杯を制したリアルスティール血統を見た時だった。

今回1番人気に推されたドゥラメンテは、母がアドマイヤグルーヴ。2番人気アヴニールマルシェは祖母がキョウエイマーチパッと見て良血と分かる2頭が上位人気で出走してきたことにより、“良血馬対決”にふさわしいメンバーとなった。

そんな中、“良血馬”としてはあまり名前が出てこず、3番人気に甘んじていたのがリアルスティール。前述の2頭はすでに500万勝ちや重賞連対があって実績も上位だったが、「自分も血統じゃ負けてないんだけどなあ……」と思っているような印象を受けたのだ。

というのも、リアルスティールの母と祖母は未勝利馬だが、祖母の産駒に欧州G1馬がいて、曾祖母はブリーダーズCマイルを連覇するなど、欧米のマイルG1を勝ちまくったミエスク。その産駒にはキングカメハメハの父キングマンボなどがいる。

世界的に見ればこちらの方がより良血と言われてもおかしくないわけで、前述のように「目立ちたくないけど褒められたい」自分としては、リアルスティールに対して「分かってる、ちゃんと君のことを分かってるよ!」と肩を叩きたい気分になったわけだ(笑)。

そして、レースぶりも良血開花を存分に印象づける好内容だった。デビュー戦に続いて好スタートを切ったリアルスティールだったが、スタート直後に福永騎手が手綱を引っ張って控え、外で首を上げて掛かり気味に前後するドゥラメンテを横目に好位の内々で折り合いをつけた。

結果を見る限り、あるいはレース前半が勝敗を分けたのかもしれない。直線を向いて馬場の真ん中に持ち出したドゥラメンテが一旦先頭に立ったが、そこから伸びが鈍る。一方で少し窮屈になった内を捌いてジリジリ伸びたリアルスティールが差し返し、逆に半馬身差をつけた。

デビュー2戦目と考えると、この落ち着いたレースぶりは特筆もの。調べてみると、90年以降の芝1800m以上の3歳牡牝混合重賞で、キャリア1戦で勝ったのはたった1頭(93年毎日杯シクレノンシェリフ)のみ。サイレンススズカ(97年弥生賞⑧着)、ハーツクライ(04年きさらぎ賞③着)などが壁に跳ね返されている。

さらに、父ディープインパクト×母父ストームキャットといえばキズナ、ラキシスと同じ。リアルスティールの全兄ラングレーも昨年秋から連勝して本格化を感じさせるだけに、まだまだ伸びしろもあるはず。

これだけの強さを見せた以上、今後は“良血”ではなく“強い”リアルスティールとして名前が語られることが多くなるはずなので、血統に言及されることはさほど多くないのでは、と想像できる。

それでも、少なくとも自分だけは「君は強いだけでなく、良血馬だということを分かってるよ!」と、リアルスティールの肩を叩き続けたいと思う(笑)。