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2強が敗れた中でも熱い勝負を十分に堪能できた
文/浅田知広、写真/森鷹史


かなり早い段階から、一昨年のダービー馬キズナと、昨年の桜花賞馬ハープスターの対決が話題を集めた今年の京都記念。こう書いてしまうと、話題性のわりにG1優勝実績がしょぼく見えてしまうのだが(G1馬に失礼なっ!)キズナは二冠牝馬・ファレノプシスの半弟で、ナリタブライアンビワハヤヒデの従兄弟。一方のハープスターはやはり二冠牝馬・ベガの孫で、ダービー馬アドマイヤベガなど姪っ子という血統背景の持ち主である。

加えて父はともにディープインパクト。その他さまざまな思い入れを持って見られるあたりは、まさにスターホース。「G1・1勝馬」という肩書きだけでは片付けられない存在感を示してきたのは、間違いのないところだ。

ともに休養明けとなるこの2頭。キズナがプラス22キロ、ハープスターがプラス14キロと発表されての出走になったが、過去2年の京都記念でもプラス10キロ以上の馬が馬券圏内を独占。2頭の体重増も、スポーツ紙の報道などで予想された範囲内である。

しかし、昨年の京都記念で何があったかといえば、単勝1.6倍ジェンティルドンナ⑥着敗退。直近の「芝・別定・G2」(AJCC)で何があったかといえば、単勝1.3倍ゴールドシップ⑦着敗退である。1~2頭ならまだしも、5頭も6頭も先着されて掲示板外に沈むという、単なる実績比較だけならあり得ないような事態も起きうるものだ。

どのみち当方、2頭が揃って絡む組み合わせに大金を突っ込めるほどのお金持ちではないので、少額の観戦料を支払ってレースはスタート。昨秋に同コースの比叡Sを逃げ切ったスズカデヴィアスの先導でレースは進み、ラブリーデイの2番手も大方の予想通りだろうか。

人気2頭では、ハープスターが7番手でいつもより前の位置取りだったが、前2頭のほかに先行馬らしい先行馬がいない組み合わせで、11頭立てならこんなものか。折り合いを欠くこともなく前に壁を作って、無難なレース運びに見受けられた。そしてキズナは後方2番手で、こちらはいつも通りである。

前半1000mの通過は61秒2、1200mは73秒4と、スローペースの上がり勝負も予想された通り。ハープスター桜花賞などで上がり32秒台、キズナも後方一気のダービーで上がり33秒5を記録しており、さばきやすい少頭数での爆発力勝負なら、まったくもって不安はない、はずだった。

しかし、先に異変を見せたのはハープスターだった。4角手前で川田騎手の手が動き、直線では外に出せず内に切り替えたものの(この際にトウシンモンステラの進路が狭くなり、川田騎手は3月1日まで騎乗停止)、その伸びはいまひとつである。対してキズナは直線で大外に持ち出し、武豊騎手のムチが入るとエンジン点火。前2頭との差をグイグイと詰め、こちらは一気に差し切る勢いかと思われた。

しかし、ここからが休養明けの影響か、それとも本質的には坂があった方がいいタイプなのか。昨春の天皇賞でも残り100mあたりからジワジワとしか詰まらなくなったのと同じように、今回も止まってこそいないものの、前に届きそうで届かない。結局、キズナはハナ+クビ差の③着止まり、そしてハープスターは0秒4差の⑤着。まさかの……というには馬連3040円は安いものの、2強が揃って連対を外すという結果になった。

と、リアルタイムではどうしても2強に注目してしまったが、先行2頭・スズカデヴィアス(藤岡佑騎手)とラブリーデイ(戸崎騎手)の争いも、またこれが熱かった。逃げたスズカデヴィアスに残り200m手前でラブリーデイが並びかけ、いったんはラブリーデイがわずかに前へ出たようにも見えた。

しかし、ここからスズカデヴィアスの粘り腰の渋太かったこと。残り100mでスズカデヴィアスが差し返し、外からキズナが迫ると今度はラブリーデイがまたもうひと伸びと、激しい追い比べとなった。

最後はクビの上げ下げ。いや、クビの低さ勝負というべきか。もともとの走法からしてクビがやや高いスズカデヴィアスを、戸崎騎手ラブリーデイがねじ伏せて重賞連覇中山金杯では同期の皐月賞馬ロゴタイプを下し、今度はダービー馬キズナを撃破と、G1の舞台が楽しみになってきた。

そして、このなんとも言い難い負け方、スズカデヴィアス藤岡佑騎手はさぞ悔しかろう。しかし、2強が敗れた中でも決して「凡戦」ではない、わずかな観戦料しか払わなかったのが申し訳ないと思えるほどの、熱い勝負を十分に堪能させていただいた。

こうして、ディープインパクト産駒2強ムードだった京都記念は、キングカメハメハ産駒のワンツー決着に。今年の種牡馬リーディングも、2月1日に1日11勝の記録を作ったキングカメハメハディープインパクトを抑えて1位を走っており、このレースもランキング通りの結果になった。

と思っていたら、10分後の共同通信杯ではディープインパクト(3番人気・リアルスティール)が、キングカメハメハ(1番人気・ドゥラメンテ)に雪辱。こちらの争いも今後どう展開していくのか楽しみだ。