流れからするとウインクリューガーの再現も!?
文/浅田知広、写真/森鷹史
サラブレ1月号付録のカレンダーを1枚めくって3月にすると、2月の
ジェンティルドンナにかわって登場するのは、昨年の
「世界ナンバーワンホース」ジャスタウェイ。もちろんレースは、世界に衝撃を与えた昨年の
ドバイデューティフリーだ。
その
ジャスタウェイが重賞初制覇を飾ったのが、2012年の
アーリントンCである。このレースは00年から03年にかけて、
エイシンプレストン、
ダンツフレーム、
タニノギムレット、
ウインクリューガーと4年連続で後のG1馬が優勝していた。だが、04年の
シーキングザダイヤがG1②着9回に終わると、その後しばらくはG1に手が届かない馬ばかり。
ジャスタウェイもそんな感じに終わるかという、
アーリントンC後の
10連敗だった。
しかし
ジャスタウェイは、1年8ヵ月後に
秋の天皇賞を突如として圧勝し、昨年3月末には前述の
ドバイデューティフリーを制覇。その翌日には
コパノリチャードが
高松宮記念を、さらに5月には
ミッキーアイルが
NHKマイルCと、ここ3年の優勝馬が1ヵ月少々の間にG1を勝ちまくったのである。海外G1馬、古馬G1馬、3歳G1馬という点も、00~02年の3頭とまったく同じだ。
その流れを踏襲すれば、今年の勝ち馬は03年に7番人気で優勝した
ウインクリューガー(2走後にNHKマイルC優勝)相当である。そんな後のG1馬の座を目指し、出走してきたのは12頭。落ち着いた頭数ながら、1番人気の
ナヴィオンが4.8倍、7番人気の
マテンロウハピネスで8.0倍という大混戦で、どの馬が勝っても重賞初制覇と
「ウインクリューガー相当」っぽい印象もある面々だ。
レースを先導したのは、その
ウインクリューガーと同じ7番人気の
マテンロウハピネスで、600m通過は35秒6とそこそこだったが、その後12秒5-12秒7と
ペースダウン。しかし、開幕週といえど追い込み馬もさばきやすい12頭立て、そして外回りコースということもあり、各馬とも自分の位置をキープすることに徹したかのように淡々とレースは進んだ。
迎えた直線。こうなると有利なのは前で運んだ馬か、抜群の切れを発揮する馬か。その両方を持っていたのが、道中3番手で運んだ
ネオスターダムで、内ラチ沿いから末脚炸裂。
1ハロン11秒1と速かった直線前半で一気に抜け出し、
マテンロウハピネスに2馬身、3番手以下にはさらに2馬身差と、圧勝態勢を築いたかと思われた。
ところが、坂で苦しくなったのか、それとも気性面の影響なのか、
ネオスターダムは残り100mで左ムチに反応して内ラチに接触。いや、これは後からわかったことで、リアルタイムでは
「これで止まっちゃうの?」という
急失速である。
この
ネオスターダムに驚かされた上、その隙を突いて殺到したのが、残り11頭中5頭の団体さん。その中に逃げた
マテンロウハピネスと、最後方から追い込んだ
アルマワイオリが含まれていたのだから、もうなにがなんだかわからないゴール前だ。
そんな①~④着同タイム、⑥着まで0秒2差の大混戦を制したのは、上位からは大きく離れた9番人気・単勝34.8倍の
ヤングマンパワーだった。道中5番手を追走から直線前半は伸びあぐねたようにも見えたが、外から
アルマワイオリが来ると、これに反応したかのようにひと伸びを見せて差し切った。
中山芝1600mの
新馬戦では、
ラスト1ハロン11秒2でゴール前は流す余裕まで見せていた
ヤングマンパワー。前走・
ジュニアCでは、やはり外から馬が来るとエンジンに火がついて③着。クビが高く、どうにも気弱な走りに見えてしまうが、どうやらそんな見た目とは裏腹に、ここぞの場面では
並々ならぬ闘争心を発揮するタイプのようだ。
これで
新馬戦から
①③①着で、③着も
距離ロスがあった中で勝ち馬と同タイム。レース前は
「この中にG1馬っているのかなあ」などと思っていたが、こうして結果が出てみると明るい展望も見えてくる。その
勝負根性は、G1の多頭数でこそ活きる可能性も大いにあるだろう。
スニッツェル産駒なら、おそらく適性はマイル以下か。この後はひと息入れて次走は未定とのことだが、中距離戦で一度負けてくれると
ウインクリューガーっぽくなるよな(
アーリントンCを勝った後、当時2000mの
毎日杯で⑧着)などと思いつつ、
NHKマイルCを楽しみに待ちたい。仮に直行でも、2ヵ月以上も開けばほどよく存在感が薄れ、買いやすい存在になりそうだ。