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昨年と同じく、馬番4番のハーツクライ産駒が最内を突いて優勝
文/編集部(M)、写真/川井博


「普段からこの子のことは女の子だと思っていませんから」とは管理する斎藤調教師の弁。皐月賞馬2頭をはじめ、男馬10頭を相手に狭い内をこじ開けて差し切るのだから、確かにヌーヴォレコルト“牝馬”の枠では測りきれない馬なのだろう。

G1馬3頭が激突した今回の中山記念は、戦前からその3頭に大きな注目が集まった。ただ、中山芝2000mの皐月賞を制した2頭(イスラボニータロゴタイプ)に比べてヌーヴォレコルト中山で走ったことがなく、OPで牡馬と対戦するのも今回が初めて。3強ではあるが、3番目の評価になることも容易に想像できた。

出走馬が11頭と少頭数になったが、注目は枠順だと感じていた。この2回中山開催はAコースで行われ、Cコースでの1回中山開催では使われなかった部分がグリーンベルトとなって出現する。

見た目にも内ラチ沿いはきれいな緑色で、馬場状態の良さが感じられた。ここを走るには、絶対に内目の枠が欲しい。G1馬3頭がどのような枠順になるか、それによって明暗が分かれるのではないかと思っていたのだ。

金曜日(2月27日)の午前に注目の枠順が発表された。G1馬3頭の中でいちばん内の枠(4枠4番)をゲットしたのはヌーヴォレコルトで、ロゴタイプ6枠7番イスラボニータはなんと8枠10番という外枠になった。

「メインレースの考え方」にも記したが、イスラボニータはOPでの5勝がすべて馬番7番以内で、9番より外枠では新馬戦での勝ち鞍があったもののOPでは勝てていなかった。

今回の3強の中でいちばん人気を集めるのはイスラボニータだろうと思っていたが、こんな枠順になるとは思っていなかった。8枠10番という枠順は「厳しい試練」に映った。

中山記念は過去10年中8年で馬番4番以内の馬が連対していたので、ヌーヴォレコルト4枠4番好枠と言えた。ただ、好枠を活かせるかどうかは、直線距離が310mという4大場の中でもっとも小回りな中山コースへの対応力がカギだった。小脚が使えず、窮屈な走りとなれば、内枠は好材料どころか逆にアダとなる可能性もあった。

その状況を跳ね返し、むしろ中山適性の高さを見せつけるようなレースぶりで優勝したのだから、ヌーヴォレコルトには脱帽するしかない。

思えば、馬番4番で最内をこじ開けての優勝というのは、昨年、同じハーツクライ産駒ジャスタウェイが見せたレースぶりと同じだ。ジャスタウェイ中山競馬場での出走歴があったものの勝ち鞍はなく、昨年のこのレースが中山での初勝利だった。ハーツクライ産駒は大箱(広いコース)が得意という印象があるが、一流馬はそんな範疇では測りきれないということだろうか。

ヌーヴォレコルトは、今春は、ヴィクトリアマイル宝塚記念というG1路線を歩むようだ。マイル戦は桜花賞以来となるが、東京芝1600mコースは今回の中山芝1800mコースより走りやすそうな印象を受ける。まして今度は牝馬同士のレースになるわけで、割り引く材料があるようには思えない。

ヴィクトリアマイルは2010年以降の勝ち馬5頭がすべてふた桁馬番だが、3番手以内に付けた馬が3連勝中であることを見ても分かる通り、外を回って差し切るのはなかなか難しいレースだ。ヌーヴォレコルトは自在性ある脚質だけに、ひどい外枠でもなければ優勝確率はかなり高まるのではないだろうか。

②着に敗れたロゴタイプは、敗れはしたものの強さを見せるレースぶりだった。レコード決着となった中山金杯で②着に走り、道悪馬場で決着タイムが1分50秒3というダート戦のような今回のレースでも連対圏を確保するのだから、その対応力は素晴らしい。中山での古馬G1が平地戦だと有馬記念しかないのは残念だが、今回のレースぶりなら有馬記念でも好勝負できるのではないだろうか?

3強の中では、皮肉にもいちばん人気を集めたイスラボニータが馬券圏外(⑤着)となってしまった。8枠10番という外枠でも降って馬場も悪くなり、すべての歯車が悪い方向に回転してしまった結果のように思われる。

決して悲観する内容ではないことはそのレースぶりを見れば明らかだが、昨年の天皇賞・秋以降、他世代との対戦では③着(天皇賞・秋)、⑨着(ジャパンC)、⑤着(中山記念)と連対圏を外しているのは気になるところだ。その3戦は馬番9~15番で、確かに枠順が良くないのだが、どこかで悪い流れを断ち切りたいところだろう。馬の気持ちが切れないようにケアも重要になってくるのかもしれない。