5年連続で高松宮記念の③着以内馬を輩出中、今年は!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
今週の重賞は、なりより日曜の
弥生賞が好メンバー。そしてこの土曜も、
チューリップ賞には
阪神JFの②&③着と1番人気に、2戦2勝馬2頭、さらには
ブチコの参戦と、
話題満載である。そんな中、両レースと同様にG1のステップでありながら、こちらの
オーシャンSはどうにも地味な印象が否めない。
しかし、である。過去5年の
高松宮記念では
オーシャンS組が最多の3勝、5年連続で③着以内馬を輩出中だ。一方、
チューリップ賞は11年、
弥生賞は12年に本番の好走馬を出せない空白年が生じており、G1の前哨戦として注目するなら
オーシャンSが一番のはず……。とは言い過ぎだろうが、しっかり見ておきたいレースなのは確かである。
そんな今年の
オーシャンSに駒を進めてきたのは、一昨年の
スプリンターズS②着馬
ハクサンムーン(1番人気)や、ディフェンディング・チャンピオンの
スマートオリオン(3番人気)、そして一昨年の覇者
サクラゴスペル(7番人気)など16頭。その
サクラゴスペルが単勝13.3倍で、ここから8番人気の
バクシンテイオーは17.5倍と離れており、上位7頭まで混戦、といった印象だ。
先手を奪ったのは、快足
ハクサンムーン。過去2回
⑨⑬着と相性が悪いレースで結果を出すなら自分の形に持ち込むのみ、とばかりに押して押して3馬身ほどのリードを奪っていった。しかし、人気薄の
ラインスピリットが積極的に前を追い、その内には2番人気の
リトルゲルダ。
ハクサンムーン自身がペースを落としたわけでもないのだが、あっという間に3馬身差がなくなって、馬群はほぼ一団となった。
これは見覚えがあるぞ、とレース後に探ってみれば、ちょうど去年の
オーシャンSがこんな展開。スタート後に
ハクサンムーンがポンと抜け出し、これを追いかけたのは人気薄の
ツインクルスター、そして好位の内に人気どころの
スマートオリオン。前半3ハロンも去年が33秒9、今年は34秒0とほぼ同じ。最後方まであまり差がないのも同様だ。
その結果、昨年の
ハクサンムーンは⑬着に沈み、勝ったのは
スマートオリオン。今回の
スマートオリオンは枠(昨年は1枠1番、今年は7枠14番)の違いもあって去年よりやや後ろで、今年これに相当する位置にいたのは
リトルゲルダだった。
この通りにゴールまで運べば、今年は
リトルゲルダ、という展開。しかし、昨年は坂の手前で
スマートオリオンに内をすくわれた
ハクサンムーンが、今年は差が詰まりそうで詰まらないまま残り200mを通過。これは過去に何度も見ている
ハクサンムーンの
好走パターンだ。坂にかかると後続をむしろ突き放しにかかり、一昨年の
セントウルS以来1年半ぶりの勝利なるか、という態勢に持ち込んだ。
しかし、これを大外から捕らえにかかったのは
サクラゴスペル、そして
戸崎騎手だった。ここ3戦は
ハクサンムーンの手綱を取って
②⑬⑱着だった
戸崎騎手。ここで乗り替わって逃げ切りを許してしまっては……、という一戦である。そして、先行馬が残りそうなところを大外からの差し切り勝ち。これは1年も前を振り返るまでもなく、直前の
スピカS・
モーリスでその
戸崎騎手が勝った競馬の焼き直しだ。
ともあれ、1年半ぶりの勝利目前だった
ハクサンムーンを差し切った
サクラゴスペルは、これが一昨年のこのレース以来2年ぶりの勝利になる。当時3番手から
ダッシャーゴーゴーとの追い比べを制したのとは違い、今回は過去にあまり記憶のない中団からの差し切り勝ちとなった。
美浦坂路での追い切りが
ラスト1ハロン16秒5で人気を落とす形になったのかもしれないが、ここで脚を溜めたのが功を奏し(!?)、今回の上がりはメンバー中最速の34秒2。12年2月に上がり最速(①着)を記録して以降は4位以下が続いており、
これまでと違った姿を見せてくれたと言えるだろう。
これで中山芝1200mは
[3.1.0.1]という中山巧者の
サクラゴスペル。過去3回の
高松宮記念は
⑨④⑫着だが、一昨年は
ロードカナロアから0秒3差、②着とは0秒1差で、左回り全体も
[5.1.0.11]と苦にはしていない。新たな戦法で結果を出し、これまで以上の結果を出す可能性も十分だ。
その
サクラゴスペル④着時に、半馬身先着(③着)した
ハクサンムーンにも、もちろんチャンスは大いにある。ただ、
オーシャンS組は
高松宮記念で
5年連続好走中ながら、この間の成績は
[3.1.1.31]で、好走馬は1年につき1頭だけ。さて、本番でこのイスを奪うのはどちらだろうか。